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第3章
マッテオさんのお願い
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しばらくして。そろそろ食堂に行ってよい時間だろうか?
「そうねぇ、そろそろ行ってみましょうかぁ?」
シロガネを抱っこして、ダフネと一緒に食堂へ向かう。
廊下には生徒が歩いていたり、立ち話している生徒もいた。
シロガネを抱いている私を見て、驚いている。
「あれはなに?」
「小さいけど、シルバーウルフに見えるな」
「いや、似てるけど、違うんじゃないか?」
ざわざわ。
ダフネに小さな声で聞いてみる。
「やっぱり、召喚獣を連れてるって、珍しいんだよね?」
「そうねぇ。普通は連れて歩かないしねぇ。ウフフ、でもなんだか楽しいわぁ」
ダフネ、面白がってるね?
食堂につくと、生徒たちの替わりに料理長のマッテオさんと何人も大人がいた。
なんなんだろう?き、緊張するよぉー。
「ほぉー、これがあなたの召喚獣ですか?」
マッテオさんが、私の腕の中にいるシロガネを覗きこむ。
「そうです。シロガネって言います」
「シロガネさん、こんにちは。料理がお口に合うといいのですが。こちらに食事を用意してあります」
そう言って、案内してくれた先のテーブルに、2人前の食事が用意されていた。なんだか、特別扱いだ。ここまでしてくれなくても、よかったのに。
「ありがとうございます。あのシロガネをここにおろしてもいいんでしょうか?」
「どうぞ」
マッテオさんが了承してくれたので、テーブルの上にシロガネをおろす。
「お行儀良く食べてよ」
一応シロガネに念を押す。
『なにを言ってる!オレは行儀いいぞ!』
そう言って、ガツガツと食べ始める。もう少しゆっくり食べてよ。私がなにも食べさせていなかったみたいじゃない!
少し焦りつつ、周りを見ると、皆はシロガネを見ていた。
「本当に召喚獣が食事をしてるよ!」
いや、驚いているのはそっち?
「いや、その前に、あれ、シルバーウルフじゃないか?」
「いや、まさか、そんな強いのがここにいる訳ないでしょう」
ヒソヒソと、皆は言っているつもりだろう。よーく、聞こえてるんですけど…。
「あの、その、召喚獣はシルバーウルフに見えるんですが…?」
皆を代表して、マッテオさんが聞いてくる。
「そうです。シルバーウルフです」
「お嬢さんは、シルバーウルフと召喚契約したんですか?!」
「えぇ、まぁ、成り行きで…」
やっぱり驚くところはそこか…。シロガネって、凄いんだね。ふだんはそう見えないけど…。
「シルバーウルフが食事をしてるって…」
マッテオさんが再度呟く。
『味はイマイチだな。アリサの方がウマイぞ』
あっという間に食事を平らげたシロガネが言った。
マッテオさんたちが、シロガネの言葉がわからなくてよかった。わかったら、怒られちゃうよ。
「あの、お話ってなんですか?」
マッテオさんにおそるおそる聞いてみる。
「え?ああ、あなたにお願いがあるんです」
「お願いですか?」
「そうです。我々はまだ誰一人として、”ハンバーガー”というものを食べたことがないんです」
「はい?」
「ですから、ぜひあなたに作ってもらって、食べてみたいのです」
「……」
「だめでしょうか?」
「お話って、それですか?」
「?。そうですよ」
よかった。怒られることじゃなかった。チラリとダフネを見ると、彼女もホッとしたように、私を見ていた。
「貴族の方々も食べたことがあるそうではありませんか!ですから、私たちごときが恐れ多いことではありますが、ぜひとも一度食べてみたいのです!」
「えっ?お貴族様たちも食べた?」
なんですと?いつお貴族様たちは来たの?いや、来たことはないはず。来ていたら、大騒ぎになっていたはずだもん。お付きの人が買いに来て、食べたのかなあ?
「アリサァ、私も食べてみたいのぉ!」
ダフネが身を乗り出すように言った。周りを見ると、他の人たちも「お願いします」と、口々に言い出した。
「わかりました。では厨房を使っていいですか?」
「ありがとう、アリサァ!」
「ありがとうございます、お嬢さん」
「「「ありがとうございます」」」
「何人分作ればいいですか?」
「作るのは大変でしょうから、少しでいいです。皆で分けて食べますから」
マッテオさんはそう言ってくれた。でもたぶん大丈夫。作れそうだよ。
~~~~~~~~~~~~~~
お読みいただき、ありがとうございます。
まだまだ暑い日が続きます。熱中症には、充分お気をつけください。
「そうねぇ、そろそろ行ってみましょうかぁ?」
シロガネを抱っこして、ダフネと一緒に食堂へ向かう。
廊下には生徒が歩いていたり、立ち話している生徒もいた。
シロガネを抱いている私を見て、驚いている。
「あれはなに?」
「小さいけど、シルバーウルフに見えるな」
「いや、似てるけど、違うんじゃないか?」
ざわざわ。
ダフネに小さな声で聞いてみる。
「やっぱり、召喚獣を連れてるって、珍しいんだよね?」
「そうねぇ。普通は連れて歩かないしねぇ。ウフフ、でもなんだか楽しいわぁ」
ダフネ、面白がってるね?
食堂につくと、生徒たちの替わりに料理長のマッテオさんと何人も大人がいた。
なんなんだろう?き、緊張するよぉー。
「ほぉー、これがあなたの召喚獣ですか?」
マッテオさんが、私の腕の中にいるシロガネを覗きこむ。
「そうです。シロガネって言います」
「シロガネさん、こんにちは。料理がお口に合うといいのですが。こちらに食事を用意してあります」
そう言って、案内してくれた先のテーブルに、2人前の食事が用意されていた。なんだか、特別扱いだ。ここまでしてくれなくても、よかったのに。
「ありがとうございます。あのシロガネをここにおろしてもいいんでしょうか?」
「どうぞ」
マッテオさんが了承してくれたので、テーブルの上にシロガネをおろす。
「お行儀良く食べてよ」
一応シロガネに念を押す。
『なにを言ってる!オレは行儀いいぞ!』
そう言って、ガツガツと食べ始める。もう少しゆっくり食べてよ。私がなにも食べさせていなかったみたいじゃない!
少し焦りつつ、周りを見ると、皆はシロガネを見ていた。
「本当に召喚獣が食事をしてるよ!」
いや、驚いているのはそっち?
「いや、その前に、あれ、シルバーウルフじゃないか?」
「いや、まさか、そんな強いのがここにいる訳ないでしょう」
ヒソヒソと、皆は言っているつもりだろう。よーく、聞こえてるんですけど…。
「あの、その、召喚獣はシルバーウルフに見えるんですが…?」
皆を代表して、マッテオさんが聞いてくる。
「そうです。シルバーウルフです」
「お嬢さんは、シルバーウルフと召喚契約したんですか?!」
「えぇ、まぁ、成り行きで…」
やっぱり驚くところはそこか…。シロガネって、凄いんだね。ふだんはそう見えないけど…。
「シルバーウルフが食事をしてるって…」
マッテオさんが再度呟く。
『味はイマイチだな。アリサの方がウマイぞ』
あっという間に食事を平らげたシロガネが言った。
マッテオさんたちが、シロガネの言葉がわからなくてよかった。わかったら、怒られちゃうよ。
「あの、お話ってなんですか?」
マッテオさんにおそるおそる聞いてみる。
「え?ああ、あなたにお願いがあるんです」
「お願いですか?」
「そうです。我々はまだ誰一人として、”ハンバーガー”というものを食べたことがないんです」
「はい?」
「ですから、ぜひあなたに作ってもらって、食べてみたいのです」
「……」
「だめでしょうか?」
「お話って、それですか?」
「?。そうですよ」
よかった。怒られることじゃなかった。チラリとダフネを見ると、彼女もホッとしたように、私を見ていた。
「貴族の方々も食べたことがあるそうではありませんか!ですから、私たちごときが恐れ多いことではありますが、ぜひとも一度食べてみたいのです!」
「えっ?お貴族様たちも食べた?」
なんですと?いつお貴族様たちは来たの?いや、来たことはないはず。来ていたら、大騒ぎになっていたはずだもん。お付きの人が買いに来て、食べたのかなあ?
「アリサァ、私も食べてみたいのぉ!」
ダフネが身を乗り出すように言った。周りを見ると、他の人たちも「お願いします」と、口々に言い出した。
「わかりました。では厨房を使っていいですか?」
「ありがとう、アリサァ!」
「ありがとうございます、お嬢さん」
「「「ありがとうございます」」」
「何人分作ればいいですか?」
「作るのは大変でしょうから、少しでいいです。皆で分けて食べますから」
マッテオさんはそう言ってくれた。でもたぶん大丈夫。作れそうだよ。
~~~~~~~~~~~~~~
お読みいただき、ありがとうございます。
まだまだ暑い日が続きます。熱中症には、充分お気をつけください。
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