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本編・入学前
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ロイドは殿下が現れても驚くこともなく接している感じを見るに、ここへ通っていると思われた。合間に休んでいたマーティもこちらを見てぎょっとし、見たことのない不機嫌な顔をしてにらんでいる。
「今日はどういった経緯でここへ?」
「一昨日ロイドが我が家に遊びにきた際に…」
「俺がニコラ様を見学に誘ったんですよ!そしたらあいつ、はしゃいじゃって!」
「なるほど。見栄を張っているのか」
「そーです!」
「そうなの?」
「いつもはあんな風に剣を吹き飛ばしたりしていない。お前がいるから恰好つけているんだろう」
「はぇー…」
弟の知らない顔が徐々に明らかになる。僕の中のマーティは、可愛くて頑張り屋さんで、甘えん坊なのに対し、こっちでは負けず嫌いで多くは馴れ合わず、生意気で口も良くない。でも女の子にはモテる。といったところだろうか。
「恥ずかしい限りだが、俺はあいつに勝てたことがない」
「俺もありません!」
「ええ?!」
…原作ファンの皆、ごめん。自分可愛さでマーティをいじめず、仲良く暮らすというルートを取り、想像の上をいく親密度を上げてしまったけど…。ここまで逞しい主人公にするつもりはなかったよ…。
「なんで殿下までいるんですかっ!!」
「マーティ、また不敬なことを…!」
「いいんだ、いつものことだしな」
「ひえ…申し訳ありません殿下…!」
「敬ってほしいなら僕に剣術で勝つことですね!ま、一生訪れませんが!」
「いつかその鼻っ柱をへし折ってやらないとな」
「やれるものなら!」
いつぞやの氷点下の戦い…喧嘩するほど仲が良い…なのかな?
そうこうしているとギャラリーができてくる。周りはマーティと殿下のやりとりを面白がっているようで、思わず寄ってきた人に知っているキャラクターはいないかと見渡した。
「もう行きましょうお兄様」
「え…いいの?」
「だって僕の試合は終わりましたし」
「そうだけど…」
チラリと攻略対象の2人を見た。僕はつい、作品としての目線でこの状況が美味しいと思ってしまった。別に自分が攻略するわけではないけど、物語が始まる前のストーリーの貴重さに浮かれてしまったのだ。
「そんなに…他の人がいいですか」
「…マーティ?」
「僕は帰りますから」
「あ…待って…」
「やめてください!!」
僕の静止を振り切って、マーティは走り出してしまった。初めて手を振り払われたことにショックを受けるような立場ではないことはわかっているけど、胸がひりついた。
同時に雨が降り出す。吹き上げた風に煽られた水滴が、マーティの行先を眩ませてしまった。
「ニコラ様!雨の中は危険ですよ!」
「あいつならちゃんと家に帰れる。お前は雨が止んでから行くべきだ。しばらくうちにでも…」
そんなことない。どれだけ腕っぷしが強くても、まだまだ子どもだ。寒ければ風邪は引くし、道にだって迷う。もし、攫われでもしたら…!
「あっ…ニコラ様!くそ、兄弟揃って思考より身体が先に動くんだもんなあ」
「…少し警備を出そう」
「今日はどういった経緯でここへ?」
「一昨日ロイドが我が家に遊びにきた際に…」
「俺がニコラ様を見学に誘ったんですよ!そしたらあいつ、はしゃいじゃって!」
「なるほど。見栄を張っているのか」
「そーです!」
「そうなの?」
「いつもはあんな風に剣を吹き飛ばしたりしていない。お前がいるから恰好つけているんだろう」
「はぇー…」
弟の知らない顔が徐々に明らかになる。僕の中のマーティは、可愛くて頑張り屋さんで、甘えん坊なのに対し、こっちでは負けず嫌いで多くは馴れ合わず、生意気で口も良くない。でも女の子にはモテる。といったところだろうか。
「恥ずかしい限りだが、俺はあいつに勝てたことがない」
「俺もありません!」
「ええ?!」
…原作ファンの皆、ごめん。自分可愛さでマーティをいじめず、仲良く暮らすというルートを取り、想像の上をいく親密度を上げてしまったけど…。ここまで逞しい主人公にするつもりはなかったよ…。
「なんで殿下までいるんですかっ!!」
「マーティ、また不敬なことを…!」
「いいんだ、いつものことだしな」
「ひえ…申し訳ありません殿下…!」
「敬ってほしいなら僕に剣術で勝つことですね!ま、一生訪れませんが!」
「いつかその鼻っ柱をへし折ってやらないとな」
「やれるものなら!」
いつぞやの氷点下の戦い…喧嘩するほど仲が良い…なのかな?
そうこうしているとギャラリーができてくる。周りはマーティと殿下のやりとりを面白がっているようで、思わず寄ってきた人に知っているキャラクターはいないかと見渡した。
「もう行きましょうお兄様」
「え…いいの?」
「だって僕の試合は終わりましたし」
「そうだけど…」
チラリと攻略対象の2人を見た。僕はつい、作品としての目線でこの状況が美味しいと思ってしまった。別に自分が攻略するわけではないけど、物語が始まる前のストーリーの貴重さに浮かれてしまったのだ。
「そんなに…他の人がいいですか」
「…マーティ?」
「僕は帰りますから」
「あ…待って…」
「やめてください!!」
僕の静止を振り切って、マーティは走り出してしまった。初めて手を振り払われたことにショックを受けるような立場ではないことはわかっているけど、胸がひりついた。
同時に雨が降り出す。吹き上げた風に煽られた水滴が、マーティの行先を眩ませてしまった。
「ニコラ様!雨の中は危険ですよ!」
「あいつならちゃんと家に帰れる。お前は雨が止んでから行くべきだ。しばらくうちにでも…」
そんなことない。どれだけ腕っぷしが強くても、まだまだ子どもだ。寒ければ風邪は引くし、道にだって迷う。もし、攫われでもしたら…!
「あっ…ニコラ様!くそ、兄弟揃って思考より身体が先に動くんだもんなあ」
「…少し警備を出そう」
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