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本編・入学前
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僕は少し混乱していた。弟ができることは知っていたのでそれではなく、“マーティを迎え入れる時期”が原作より早まっていたからだ。
「マーティ」は「ニコラ」が10歳になり、学園に通うと決まった直後にやってくるはず。一つ年下の「マーティ」はその翌年に同じ学園に入学してきて、そこから2人の関係が一層ひどくなる、というエピソードがある。
それはまあさておき、何故2年も早くマーティがお迎えされたのか…。恐らく、
(僕がこの身体を満喫しすぎたせいか…)
僕はこの物語を一通り巡ったことがあるが故に分かる。お父様は良かれと思った末、「ニコラ」に「マーティ」を当てがった。1人で頑張りすぎる「ニコラ」の良き話し相手になればいいと、親心で家族を迎え入れた。
しかし「ニコラ」はそれを汲み取れるほど大人ではなかったし、お父様も言葉が足りていなかった。
あの時の「ニコラ」に「マーティ」という弟を与えるということは、「いくらでも代わりはいる」と言っているようなものだったからだ。
「…僕はニコラ・モーガス。これから大変だろうけど、よろしくね」
「!!」
「ああ…ニコラ…。こんな話を、今廊下でするべきではなかったのだが伝えておきたかったのだ。分かってくれるかい」
「はい、お父様。家族が増えることは喜ばしい事です。また明日、ゆっくりお話しましょう」
「分かった。夜はパーティーを開こうか」
「そんな急に決めたら、リシテアが怒りますよ」
お父様は心底安心したような顔をしていた。胸をなでおろしたのはマーティも同じだった様子。それもそのはず。数日前に連れてこられて、最低限のマナー・知識・言葉遣いなどを叩きこまれてここにきたのだろうから…。本当にかわいそうだ。
「じゃあお父様、マーティ。おやすみなさい」
「おやすみ、ニコラ」
「お、おやすみなさい、ニコラ様…」
「…お兄様だよ、マーティ」
「!!ぉ、お、おにいさま……!」
二人が立ち去ったのを見送った後、オリヴィアが複雑そうな顔をして僕の寝支度を手伝っていた。
「よろしいのですか?坊ちゃん」
「何が?」
「マーティ様のことでございます。あんな急に…何の相談もなしにつれてくるなんて、犬猫と同じではありませんか」
確かに急すぎる。執事長のマルクにも話が通っていたのかも分からない。
「まあ、そんなことよりリシテアが怒って離職しないかが心配かな」
「そんなこととは何ですか!モーガス家の次期当主はもちろん坊ちゃんですが、今後何が起こるか…ニコラ様の評判次第では家の存続にも関わるのに…!」
「でも僕は明日、大激怒のリシテアを見る方が辛い」
「…オリヴィアもそう思います。今夜はここでお暇させていただきますので、ついでにリシテアにも伝えますわ」
「そうして。じゃないとこの家が飢饉に見舞われるよ」
僕はもう、原作の「ニコラ」ではないから世間とか、お金とか気にすることはない。マーティが当主になりたいと言えば、喜んで受け渡そう。そんなことより、料理長のリシテアがお父様の無茶ぶりに家を出て行ってしまうかもしれないほうが恐ろしい。
眠りにつく際、使用人が住んでいる屋敷から悲鳴が聞こえたような、そんなことなかったような…。
明日、無事に朝ごはんが出ますように…。
「マーティ」は「ニコラ」が10歳になり、学園に通うと決まった直後にやってくるはず。一つ年下の「マーティ」はその翌年に同じ学園に入学してきて、そこから2人の関係が一層ひどくなる、というエピソードがある。
それはまあさておき、何故2年も早くマーティがお迎えされたのか…。恐らく、
(僕がこの身体を満喫しすぎたせいか…)
僕はこの物語を一通り巡ったことがあるが故に分かる。お父様は良かれと思った末、「ニコラ」に「マーティ」を当てがった。1人で頑張りすぎる「ニコラ」の良き話し相手になればいいと、親心で家族を迎え入れた。
しかし「ニコラ」はそれを汲み取れるほど大人ではなかったし、お父様も言葉が足りていなかった。
あの時の「ニコラ」に「マーティ」という弟を与えるということは、「いくらでも代わりはいる」と言っているようなものだったからだ。
「…僕はニコラ・モーガス。これから大変だろうけど、よろしくね」
「!!」
「ああ…ニコラ…。こんな話を、今廊下でするべきではなかったのだが伝えておきたかったのだ。分かってくれるかい」
「はい、お父様。家族が増えることは喜ばしい事です。また明日、ゆっくりお話しましょう」
「分かった。夜はパーティーを開こうか」
「そんな急に決めたら、リシテアが怒りますよ」
お父様は心底安心したような顔をしていた。胸をなでおろしたのはマーティも同じだった様子。それもそのはず。数日前に連れてこられて、最低限のマナー・知識・言葉遣いなどを叩きこまれてここにきたのだろうから…。本当にかわいそうだ。
「じゃあお父様、マーティ。おやすみなさい」
「おやすみ、ニコラ」
「お、おやすみなさい、ニコラ様…」
「…お兄様だよ、マーティ」
「!!ぉ、お、おにいさま……!」
二人が立ち去ったのを見送った後、オリヴィアが複雑そうな顔をして僕の寝支度を手伝っていた。
「よろしいのですか?坊ちゃん」
「何が?」
「マーティ様のことでございます。あんな急に…何の相談もなしにつれてくるなんて、犬猫と同じではありませんか」
確かに急すぎる。執事長のマルクにも話が通っていたのかも分からない。
「まあ、そんなことよりリシテアが怒って離職しないかが心配かな」
「そんなこととは何ですか!モーガス家の次期当主はもちろん坊ちゃんですが、今後何が起こるか…ニコラ様の評判次第では家の存続にも関わるのに…!」
「でも僕は明日、大激怒のリシテアを見る方が辛い」
「…オリヴィアもそう思います。今夜はここでお暇させていただきますので、ついでにリシテアにも伝えますわ」
「そうして。じゃないとこの家が飢饉に見舞われるよ」
僕はもう、原作の「ニコラ」ではないから世間とか、お金とか気にすることはない。マーティが当主になりたいと言えば、喜んで受け渡そう。そんなことより、料理長のリシテアがお父様の無茶ぶりに家を出て行ってしまうかもしれないほうが恐ろしい。
眠りにつく際、使用人が住んでいる屋敷から悲鳴が聞こえたような、そんなことなかったような…。
明日、無事に朝ごはんが出ますように…。
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