50ページまで読みました、続きが気になりますね！SF好きではない人もついていけると思います。
異次元に移動という未来的な行動をするには、〇〇◯を経由する。その対比が逆説的ですが、絵画的でした。
「美しい」「現在進行形」「斜め上」が本作のキーワードのよう。映像の内容を文字に起こしているような、壮大なルポタージュにも見えます。

近未来の話でありながら内容は現実的で、時々平成のような昭和のような雰囲気も感じました、その時々のギャップが本作の魅力の一つかもしれません。
パラレルワールドは実存すると物理学者が証明しているそうですし、私は、この世はあの世の一部だと思っていますが、６次元世界の描写を読んで、なるほどなと腑に落ちた感がありました。
異次元というツールでこれぞ「地獄」も見せられ（著者は地獄という言葉は使っていませんが）、SFや空想もので括るには惜しいくらい、推理オカルト的楽しさで拝読しました。
しかしながら全体的な冗長感はじめ、日常的に使われている漢字にルビがあって難読漢字になかったり、第三者の語りで物語は進んでいくところ語りに感情が入り出し、淡々と説明していたかと思えば感想になったり予想になったりテレビのナレーションのようで、大きくも小さくも粗削り感は否めません。
場所や機能の説明など、ある部分は描写が執拗とも思えるほど具体的な反面、そこが知りたいのにと思った部分は熟語ひとつで済まされていたり、粘着的な説明と端折りの描写の交差に読み難くなり、私にはイメージが宙ぶらりんになって、なかなか物語に入れなかったのは事実です。外国ネタがたくさん出てきますが、長編小説のわりに、人物と外国の結びつきがやや消化不良で、もう一歩生命感が足りない印象もあります。

が、だんだんと「どうなるんだろう」「この描写はなんの伏線か」と確かめたくなり、読み進んで安堵したり感心したり、「どうなるか知りたい」一心で楽しんで読めました。
読みながら、沼正三氏の衝撃のあの一作を思い出しました。
SFや幻想小説にありがちな、描写が具体的なのにイメージが浮かびにくかった部分を、石ノ森章太郎が一発で説明してくれたように、本作もマンガ化、映像化などメディアミックスすると、文章だけのものとは別に面白い副産物ができるのでは。