38 / 42
第3章 ウィルトシャー
かわいい訪問者1
しおりを挟む
鳥居は明日九条のところに可愛いお客さんが来ることをロバートに話してから、明日のレストランのデザートに木苺のムースとザッハトルテを作りそれを九条のお客さんにも出していいか聞いてみた。すると木苺のムースはいつものサイズで、ザッハトルテは少し小さめにして両方メニューに取り入れてもらうことになった。
「ロバートさんありがとうございます」
「明日が楽しみだね。あっ、でも九条さんのお客様には少し大きめに作って出してあげてね」
「分かりましたー」
「料理だけじゃなくて、スィーツのファンも増やさなくちゃね」
どうやらロバートまでもが九条に似てきてしまったようである。
翌日、いつもより少し早めに厨房に入った鳥居は午後2時には既にその日の分のデザートを作り終えていた。紅茶はダージリンが良いかななどと考えていると誰かが厨房に入ってきた。
顔を上げるとそこにいたのは何故か九条だった。
「鳥居君、もうデザートはできたのかい」
「はい、出来上がりましたよー」
「来客は3時だからその前にディメンションの控室にそれを運んでくれないかな。20分前になったら持ってきてくれると助かるんだけど」
「お客様が来てからじゃなくていいんですかー」
「うん、その前に丸テーブルに準備しておこうと思ってね。お願いできるかい」
「分かりましたー」
「あと、できれば4人分お願いしたいんだけど数は大丈夫かな」
「それは問題ありません。大丈夫でーす」
「流石だね、ありがとう。じゃあよろしくね」
それだけ話して九条は厨房を出て行ってしまった。
『確か蒼井君は、九条さんの弱みを握りたいんじゃなかったかな?』昨日の蒼井の言葉を思い出してみたが、九条さんの方が先に動いてしまったようだ。蒼井とは違い九条に対して感謝の気持ちしかない鳥居は九条の言うことを聞くことにした。無惨にもあっさりと蒼井は寝返られてしまった。
午後2時35分。
そろそろスィーツと茶葉を用意してディメンションに行こうとしていた時に蒼井が厨房にやって来た。
「あれ? どうして鳥居君もう運ぼうとしてるの? まだ早いんだけど」
「さっき九条さんが来て20分前には持って来て欲しいって言われたよー」
「えー、何でバレてるんだろう」
「せっかく来てくれたんだから蒼井君はこのポットを持ってくれると助かるな。向こうでお湯沸かさなくて済むから」
「うーん、何か釈然としないけど……」
「俺、もう行くから蒼井君も一緒にきてねー」
「まったく、どっちがお願いしたのかわからなくなってるじゃないか……」
ぶつぶつ言いながらも蒼井は鳥居の後をついて厨房を出た。
ディメンションとは隣り合わせているためすぐに控室の前に到着した。すると待っていたかのように九条が控室の扉を開いてくれた。
「鳥居君ありがとう、取り敢えず中に入って。あれっ、蒼井君も手伝ってくれたんだありがとう助かるよ」
「助かるよ、じゃないですよ九条さん」
「まあ、話は後にして準備をしてしまおう」
「そうですね。俺、テーブルを整えてきますねー」
鳥居はスィーツを一旦控室に置いて店の中へと入っていった。その姿を見た蒼井は何やら様子がおかしいことに気がついた。
「蒼井君、スィーツセットは来客前に準備してもらうことにしたから、わざわざ客人に顔を見せなくて大丈夫だからね」
「……そうですか、残念です」
「何が残念なのか分からないが、そんなに気になるならいつものように控え室で話を聞いていても構わないよ」
「本当ですか。ではそうさせて頂きます。やっぱりダメとかは無しですよ」
「大丈夫だよ。その代わり面倒臭いことになるから絶対に店には入ってこないように、いいね。もし入ってきたら当分ピアノ弾かせてあげないからね」
「分かりました。必ず守ります」
『ピアノ弾かせてくれないなんてずるいよな、まったく九条さんは』
そして準備も整った頃、店の入り口が開いた。
「ロバートさんありがとうございます」
「明日が楽しみだね。あっ、でも九条さんのお客様には少し大きめに作って出してあげてね」
「分かりましたー」
「料理だけじゃなくて、スィーツのファンも増やさなくちゃね」
どうやらロバートまでもが九条に似てきてしまったようである。
翌日、いつもより少し早めに厨房に入った鳥居は午後2時には既にその日の分のデザートを作り終えていた。紅茶はダージリンが良いかななどと考えていると誰かが厨房に入ってきた。
顔を上げるとそこにいたのは何故か九条だった。
「鳥居君、もうデザートはできたのかい」
「はい、出来上がりましたよー」
「来客は3時だからその前にディメンションの控室にそれを運んでくれないかな。20分前になったら持ってきてくれると助かるんだけど」
「お客様が来てからじゃなくていいんですかー」
「うん、その前に丸テーブルに準備しておこうと思ってね。お願いできるかい」
「分かりましたー」
「あと、できれば4人分お願いしたいんだけど数は大丈夫かな」
「それは問題ありません。大丈夫でーす」
「流石だね、ありがとう。じゃあよろしくね」
それだけ話して九条は厨房を出て行ってしまった。
『確か蒼井君は、九条さんの弱みを握りたいんじゃなかったかな?』昨日の蒼井の言葉を思い出してみたが、九条さんの方が先に動いてしまったようだ。蒼井とは違い九条に対して感謝の気持ちしかない鳥居は九条の言うことを聞くことにした。無惨にもあっさりと蒼井は寝返られてしまった。
午後2時35分。
そろそろスィーツと茶葉を用意してディメンションに行こうとしていた時に蒼井が厨房にやって来た。
「あれ? どうして鳥居君もう運ぼうとしてるの? まだ早いんだけど」
「さっき九条さんが来て20分前には持って来て欲しいって言われたよー」
「えー、何でバレてるんだろう」
「せっかく来てくれたんだから蒼井君はこのポットを持ってくれると助かるな。向こうでお湯沸かさなくて済むから」
「うーん、何か釈然としないけど……」
「俺、もう行くから蒼井君も一緒にきてねー」
「まったく、どっちがお願いしたのかわからなくなってるじゃないか……」
ぶつぶつ言いながらも蒼井は鳥居の後をついて厨房を出た。
ディメンションとは隣り合わせているためすぐに控室の前に到着した。すると待っていたかのように九条が控室の扉を開いてくれた。
「鳥居君ありがとう、取り敢えず中に入って。あれっ、蒼井君も手伝ってくれたんだありがとう助かるよ」
「助かるよ、じゃないですよ九条さん」
「まあ、話は後にして準備をしてしまおう」
「そうですね。俺、テーブルを整えてきますねー」
鳥居はスィーツを一旦控室に置いて店の中へと入っていった。その姿を見た蒼井は何やら様子がおかしいことに気がついた。
「蒼井君、スィーツセットは来客前に準備してもらうことにしたから、わざわざ客人に顔を見せなくて大丈夫だからね」
「……そうですか、残念です」
「何が残念なのか分からないが、そんなに気になるならいつものように控え室で話を聞いていても構わないよ」
「本当ですか。ではそうさせて頂きます。やっぱりダメとかは無しですよ」
「大丈夫だよ。その代わり面倒臭いことになるから絶対に店には入ってこないように、いいね。もし入ってきたら当分ピアノ弾かせてあげないからね」
「分かりました。必ず守ります」
『ピアノ弾かせてくれないなんてずるいよな、まったく九条さんは』
そして準備も整った頃、店の入り口が開いた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる