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第1章 高校編
クリスマスライブ3
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蓋を開ければ大盛況だった今回のクリスマスライブ。あれだけ騒がしかった観客達も皆足速に家路へと急いでいたようでライブ会場はすでに静まり返っていた。簡単な打ち上げの後、大人達は場所を変える為とかなんとか理由をつけて夜の街へと繰り出していった。残ったスタッフによる後片付けも終わり会場を出ようとした時、遙加が妙なことを言い出した。
「今日すごく盛り上がったでしょ。でも途中で冷たい風が吹いてきた訳でもないのに急に寒気がしたんだけど、みんなはどうだった。あ、風邪ひいてるわけじゃないからね」
「いや、そんなことはなかったけど」
「スポットライトは眩しかったけど、寒くはなかったな」
「僕は緊張して演奏する前はちょっと震えてたけど、始まったら会場の熱気にやられた感じかな」
「私も寒気なんか感じなかったわよ。会場内は熱気でムンムンしていたくらいだし」
遙加以外は誰も寒気など感じなかったようだ。
「遙加が寒気を感じたのっていつだか覚えているかしら」
「それが……、演奏始まった時はいつも通りだったんだけど途中何度か気持ち悪い感じがあって、最後に新曲の演奏が終わった後が一番酷かったかな…………」
大平修平が確認するように尋ねた。
「如月は何も見えなかったのか」
「あれだけの数の人間がいると余程異常がない限り私には分からないわ」
実際今日のライブハウス会場は200人程集客していた。出演者などの関係者を入れると250人ほどの人間が集まっていたことになる。
「そうか……。達也は何も感じないんだったよな……」
「俺も相当強いものなら、もしかしたら分かるかもしれないけど今までそんなことなかったし……。その前に如月みたいに見えるわけじゃないし、かと言って気配を感じたこともないし。悪いな、役に立てなくて……」
「いや、そんなことは無い。俺こそ悪い、あまり気にするな」
流石の大平も達也に対してこの話は無神経だったと気が付いたようだ。
「それより九条、今は大丈夫なのか?」
「今は取り敢えず大丈夫、だと思う」
メンバーは心配することしかできない自分たちを不甲斐なく思った。かといって原因も分からない。
すると、如月が何か思い出したようだ。
「夏に別荘に行った時、管理人の高杉が言っていたじゃない『貴方を守ってくれる人に相談してください』って。遙加、あなた九条さんに相談したの?」
「あはは……、お守りあるから大丈夫だと思って………………」
「相談していないのね」
「…………すみません」
「明日にでも相談しに行かないと。遙加1人で行かせるとまた有耶無耶にしそうだから私も行くわ」
「如月、それなんだけど俺も行って良いかな」
突然、大平がそんなことを言い出した。
「どうしたの、珍しいわね。良いけど理由を聞いても良いかしら」
「何となくだけど、原因が分かるかもしれないから一緒に行くよ。それについては行った時に話をする」
「烏星君と秋月君はどうする? 一緒に行く?」
烏星は条件反射のように答えた。
「いや、俺はやめておく」
「そうね、その方が良いかもね」
「秋月君は?」
「僕は原因として思い当たるような事もないし、今回はやめておくよ。でもこれだけは伝えてくれないかな『作ってもらった曲、難しかったけど最高でした』って。」
「分かったわ。でもそれは大平君から伝えてもらうわね。一応リーダーなんだから」
「言われなくてもそれは俺からも言うつもりだったさ。如月は一言多いんだよ。航平、心配するな、また曲お願いしてくるから」
「さすが僕たちのリーダー、メンバーの気持ち分かってるじゃないか。よろしくね、リーダー」
「おう、まかせろ」
「えーとですね、何のために行くのか趣旨が変わりそうですが、今回は遙加のことで相談に行くのが本題ですからね。そこのところ間違えないように」
「ああ、そうだった。もちろんその話が済んでから曲の話をするよ。でも作ってくれた礼は先に言うからな」
「はいはい、よろしくお願いししますよ、リーダー」
すると如月は怖いほどの笑顔を遙加に向けてこう言ったのだ。
「じゃあ、遙加は今すぐ九条さんに連絡して。早く!」
「……はーい。信用ないなぁ」
「「「それはそうだろう」」」
「それはそうでしょう」
こんなところからも息のあったバンド+1名であることがよく分かるのであった。
「今日すごく盛り上がったでしょ。でも途中で冷たい風が吹いてきた訳でもないのに急に寒気がしたんだけど、みんなはどうだった。あ、風邪ひいてるわけじゃないからね」
「いや、そんなことはなかったけど」
「スポットライトは眩しかったけど、寒くはなかったな」
「僕は緊張して演奏する前はちょっと震えてたけど、始まったら会場の熱気にやられた感じかな」
「私も寒気なんか感じなかったわよ。会場内は熱気でムンムンしていたくらいだし」
遙加以外は誰も寒気など感じなかったようだ。
「遙加が寒気を感じたのっていつだか覚えているかしら」
「それが……、演奏始まった時はいつも通りだったんだけど途中何度か気持ち悪い感じがあって、最後に新曲の演奏が終わった後が一番酷かったかな…………」
大平修平が確認するように尋ねた。
「如月は何も見えなかったのか」
「あれだけの数の人間がいると余程異常がない限り私には分からないわ」
実際今日のライブハウス会場は200人程集客していた。出演者などの関係者を入れると250人ほどの人間が集まっていたことになる。
「そうか……。達也は何も感じないんだったよな……」
「俺も相当強いものなら、もしかしたら分かるかもしれないけど今までそんなことなかったし……。その前に如月みたいに見えるわけじゃないし、かと言って気配を感じたこともないし。悪いな、役に立てなくて……」
「いや、そんなことは無い。俺こそ悪い、あまり気にするな」
流石の大平も達也に対してこの話は無神経だったと気が付いたようだ。
「それより九条、今は大丈夫なのか?」
「今は取り敢えず大丈夫、だと思う」
メンバーは心配することしかできない自分たちを不甲斐なく思った。かといって原因も分からない。
すると、如月が何か思い出したようだ。
「夏に別荘に行った時、管理人の高杉が言っていたじゃない『貴方を守ってくれる人に相談してください』って。遙加、あなた九条さんに相談したの?」
「あはは……、お守りあるから大丈夫だと思って………………」
「相談していないのね」
「…………すみません」
「明日にでも相談しに行かないと。遙加1人で行かせるとまた有耶無耶にしそうだから私も行くわ」
「如月、それなんだけど俺も行って良いかな」
突然、大平がそんなことを言い出した。
「どうしたの、珍しいわね。良いけど理由を聞いても良いかしら」
「何となくだけど、原因が分かるかもしれないから一緒に行くよ。それについては行った時に話をする」
「烏星君と秋月君はどうする? 一緒に行く?」
烏星は条件反射のように答えた。
「いや、俺はやめておく」
「そうね、その方が良いかもね」
「秋月君は?」
「僕は原因として思い当たるような事もないし、今回はやめておくよ。でもこれだけは伝えてくれないかな『作ってもらった曲、難しかったけど最高でした』って。」
「分かったわ。でもそれは大平君から伝えてもらうわね。一応リーダーなんだから」
「言われなくてもそれは俺からも言うつもりだったさ。如月は一言多いんだよ。航平、心配するな、また曲お願いしてくるから」
「さすが僕たちのリーダー、メンバーの気持ち分かってるじゃないか。よろしくね、リーダー」
「おう、まかせろ」
「えーとですね、何のために行くのか趣旨が変わりそうですが、今回は遙加のことで相談に行くのが本題ですからね。そこのところ間違えないように」
「ああ、そうだった。もちろんその話が済んでから曲の話をするよ。でも作ってくれた礼は先に言うからな」
「はいはい、よろしくお願いししますよ、リーダー」
すると如月は怖いほどの笑顔を遙加に向けてこう言ったのだ。
「じゃあ、遙加は今すぐ九条さんに連絡して。早く!」
「……はーい。信用ないなぁ」
「「「それはそうだろう」」」
「それはそうでしょう」
こんなところからも息のあったバンド+1名であることがよく分かるのであった。
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