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第1章 高校編
クリスマスライブ2
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ブルーローズのメンバーはバンド練習をしながら、2回の定期試験以外に今回から大学模試も受けていた。現時点で希望大学にA判定やB判定を叩き出す事が出来た。浮かれ気分のメンバーに如月からは『手を抜かないように、高3になると浪人生もその枠に入ってくるので更に気を抜かずに勉強するように』と言う指令が来た。如月はやっぱり鬼だった。
如月は当初、バンドメンバー全員が音大に入らなくてもいいのではないかと思っていた。しかし彼らの演奏を聴いてその考えを改めることにした。
『これは本当にダイヤモンドの原石だったのかも』と思えるほどに3人の完成度は高かったのだ。一時期は失恋の痛手から心ここに在らず状態の烏星達也だったが、暫くすると何か吹っ切れたのか九条薫の作った新曲を必死に練習するようになった。
12月になって烏星と秋月の2人は無事バイトを卒業することができた。これからは勉強と楽器の練習だけに時間を当てられる、と2人は気合十分だ。一方遙加は九条のアシスタントのバイトは一旦保留になったが、九条の都合がつく時は勉強を教えてもらうことになった。烏星達也推しに見えた遙加の母も九条と一緒にいる時間が増えることには大賛成だった。それよりも母親からこんな言葉が出てくるとは流石の遙加も驚いたのだった。
「薫君が一緒にいてくれれば、そんなに安心なことはないわ」
母の言葉が素直に嬉しい反面、何か裏があるのではないかと勘繰りたくなった。しかし、せっかく安心だと言っている母を変に刺激しても何も良いことはないので遙加は母に『ありがとう』とだけ言って終わらせたのだった。
そして終業式も終わりブルーローズとして初めて出場するクリスマスライブ当日。今回の出場バンドは全部で5つ。ブルーローズは2番目に演奏する。今回のトリのバンドはインディーズで活躍しているラストデイズと言うバンドだ。楽器屋さん出身のバンドで今回は特別出場枠で参加している。まあ、お客さんをたくさん連れてきてくれるバンドなのだ。だから今回チケット販売のノルマが無かったのだ。ラストデイズは特徴的な男性ボーカルのいるバンドでそればかりが目立つのだがバックの演奏は安定感があることで有名だった。その場のノリでその都度音を変えることも時にはあるが、基本的に初めて演奏した時と全く同じように演奏できるバンドだった。成長し続けても初心を忘れないからファンも増えていくのだろう。
この日はどのバンドが演奏しても会場内は拍手の嵐だった。加えて演奏が終わる度にそこかしこで興奮気味な歓声も上がっていた。黄色い声だけでなく雄叫びも上がっていたようだ。そんな訳で観客にとってはチケット代以上のものが見られたので大当たりの日となり、主催者側としてもひとまず成功と呼べる日になった。
その中で高校生バンドのブルーローズ、ボーカルの遙加はラストデイズの多くのファンに認められた。新生ブルーローズはこの日多くのファンを獲得することになったのだ。そして遙加の心震わせる歌声と、華奢な身体に亜麻色の長い髪という姿は誰の目にも『彼女こそが歌姫だ』と納得させるものとなったのだった。
しかし、それに異を唱える存在がいた。
「何が歌姫よ。調子に乗ってるんじゃないわよ」
どこから目線なのかよく分からないその言葉は会場内の大歓声ですぐかき消えてしまった。それから言葉の発信源たる人物は歌姫をひと睨みしてまた何かを呟き、その日開場を後にしたのだった。
如月は当初、バンドメンバー全員が音大に入らなくてもいいのではないかと思っていた。しかし彼らの演奏を聴いてその考えを改めることにした。
『これは本当にダイヤモンドの原石だったのかも』と思えるほどに3人の完成度は高かったのだ。一時期は失恋の痛手から心ここに在らず状態の烏星達也だったが、暫くすると何か吹っ切れたのか九条薫の作った新曲を必死に練習するようになった。
12月になって烏星と秋月の2人は無事バイトを卒業することができた。これからは勉強と楽器の練習だけに時間を当てられる、と2人は気合十分だ。一方遙加は九条のアシスタントのバイトは一旦保留になったが、九条の都合がつく時は勉強を教えてもらうことになった。烏星達也推しに見えた遙加の母も九条と一緒にいる時間が増えることには大賛成だった。それよりも母親からこんな言葉が出てくるとは流石の遙加も驚いたのだった。
「薫君が一緒にいてくれれば、そんなに安心なことはないわ」
母の言葉が素直に嬉しい反面、何か裏があるのではないかと勘繰りたくなった。しかし、せっかく安心だと言っている母を変に刺激しても何も良いことはないので遙加は母に『ありがとう』とだけ言って終わらせたのだった。
そして終業式も終わりブルーローズとして初めて出場するクリスマスライブ当日。今回の出場バンドは全部で5つ。ブルーローズは2番目に演奏する。今回のトリのバンドはインディーズで活躍しているラストデイズと言うバンドだ。楽器屋さん出身のバンドで今回は特別出場枠で参加している。まあ、お客さんをたくさん連れてきてくれるバンドなのだ。だから今回チケット販売のノルマが無かったのだ。ラストデイズは特徴的な男性ボーカルのいるバンドでそればかりが目立つのだがバックの演奏は安定感があることで有名だった。その場のノリでその都度音を変えることも時にはあるが、基本的に初めて演奏した時と全く同じように演奏できるバンドだった。成長し続けても初心を忘れないからファンも増えていくのだろう。
この日はどのバンドが演奏しても会場内は拍手の嵐だった。加えて演奏が終わる度にそこかしこで興奮気味な歓声も上がっていた。黄色い声だけでなく雄叫びも上がっていたようだ。そんな訳で観客にとってはチケット代以上のものが見られたので大当たりの日となり、主催者側としてもひとまず成功と呼べる日になった。
その中で高校生バンドのブルーローズ、ボーカルの遙加はラストデイズの多くのファンに認められた。新生ブルーローズはこの日多くのファンを獲得することになったのだ。そして遙加の心震わせる歌声と、華奢な身体に亜麻色の長い髪という姿は誰の目にも『彼女こそが歌姫だ』と納得させるものとなったのだった。
しかし、それに異を唱える存在がいた。
「何が歌姫よ。調子に乗ってるんじゃないわよ」
どこから目線なのかよく分からないその言葉は会場内の大歓声ですぐかき消えてしまった。それから言葉の発信源たる人物は歌姫をひと睨みしてまた何かを呟き、その日開場を後にしたのだった。
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