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第1章 高校編
夕暮れのグラウンド1
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午後の授業も終わったので、まだ少し体調不良というか肩に重さを感じる遙加は大人しく家に帰ることにした。
革のローファーに履き替え玄関を出ると後ろから誰かの呼ぶ声がした。
「おーい遙加、一緒に帰ろうぜ」
声をかけてきたのはバンドのギターリストでもある烏星達也だった。いつものように背中にギターケースを背負っているのになぜか全速力で遙加を追いかけてきた。
「部長に聞いたけど、お前具合悪いんだって? 一人じゃ危ないから一緒に帰ってやるよ」
「具合が悪いんじゃなくて、ちょっと肩が凝ってるだけだから。達也今日バイトは?」
「遙加と同じでバイトはないよ。だから家まで送ってくよ」
「じゃあ、特別に送らせてあげよう」
「はいはい、姫様の仰せの通りに」
「うそうそ、気にしてくれてありがとう。さあ帰ろう」
「おう」
背の高い達也と小柄な遙加が並ぶと一瞬単なる凸凹コンビのように見えるが、実際は姫を守る騎士の如く彼女を守っている。守っている側も守られている側も本当の意味で何から守っているのかはこの時はまだ全く気づいていなかったが。
事実彼女はその溢れる才能から巷のバンド仲間の間では歌姫と呼ばれている。
所謂マイクを持つと別人になるというやつである。
なので姫を守る騎士というのはあながち間違いではないのだ。
電車を降りた二人はいつものように最寄りの駅から家まで歩いていた。
たあいもない話をしながら二人で歩けば遙加の家まではあっという間だった。
「ありがとうたっちゃん。なんだか気分も良くなったみたい」
家に帰ると安心するのか遥加は達也のことを子供の頃からのたっちゃん呼びになる。
普段はバンドのメンバーも達也と呼ぶので遥加が達也と呼んだところで別に特別感はない。たっちゃん呼びを密かに達也が喜んでいることに鈍感な遥加が気付くことはないのだった。
「そうか、今日は早く寝るんだぞ」
「そうだね、また明日」
「遙加、これまで通り朝は一緒に登校しよう。迎えに来るからさ」
「えー、でも悪いよ。周りの人に変に誤解されたら困るでしょ」
「俺は別に困らないよ。ってわけで明日迎えに来るから。遙加は早く家の中に入れよ、ほら」
背中を押された遙加は仕方なく玄関を開けて家の中に入った。
「じゃあな、また明日」
有無を言わさず帰ってしまった達也の申出を、遙加は結局断ることができなかった。
「たっちゃん、誰かに勘違いされたらどうするんだろう。好きな子とかいないのかな」
遙加は全くお門違いなことを考えているのだが知らぬは本人ばかりなり、なのである。
『そういえば肩凝りいつの間にか治ってる、よかった』
遙加は偶然治ったと思っているのだが実はそうではない。それは後にある出来事によって明かされるのであった。
革のローファーに履き替え玄関を出ると後ろから誰かの呼ぶ声がした。
「おーい遙加、一緒に帰ろうぜ」
声をかけてきたのはバンドのギターリストでもある烏星達也だった。いつものように背中にギターケースを背負っているのになぜか全速力で遙加を追いかけてきた。
「部長に聞いたけど、お前具合悪いんだって? 一人じゃ危ないから一緒に帰ってやるよ」
「具合が悪いんじゃなくて、ちょっと肩が凝ってるだけだから。達也今日バイトは?」
「遙加と同じでバイトはないよ。だから家まで送ってくよ」
「じゃあ、特別に送らせてあげよう」
「はいはい、姫様の仰せの通りに」
「うそうそ、気にしてくれてありがとう。さあ帰ろう」
「おう」
背の高い達也と小柄な遙加が並ぶと一瞬単なる凸凹コンビのように見えるが、実際は姫を守る騎士の如く彼女を守っている。守っている側も守られている側も本当の意味で何から守っているのかはこの時はまだ全く気づいていなかったが。
事実彼女はその溢れる才能から巷のバンド仲間の間では歌姫と呼ばれている。
所謂マイクを持つと別人になるというやつである。
なので姫を守る騎士というのはあながち間違いではないのだ。
電車を降りた二人はいつものように最寄りの駅から家まで歩いていた。
たあいもない話をしながら二人で歩けば遙加の家まではあっという間だった。
「ありがとうたっちゃん。なんだか気分も良くなったみたい」
家に帰ると安心するのか遥加は達也のことを子供の頃からのたっちゃん呼びになる。
普段はバンドのメンバーも達也と呼ぶので遥加が達也と呼んだところで別に特別感はない。たっちゃん呼びを密かに達也が喜んでいることに鈍感な遥加が気付くことはないのだった。
「そうか、今日は早く寝るんだぞ」
「そうだね、また明日」
「遙加、これまで通り朝は一緒に登校しよう。迎えに来るからさ」
「えー、でも悪いよ。周りの人に変に誤解されたら困るでしょ」
「俺は別に困らないよ。ってわけで明日迎えに来るから。遙加は早く家の中に入れよ、ほら」
背中を押された遙加は仕方なく玄関を開けて家の中に入った。
「じゃあな、また明日」
有無を言わさず帰ってしまった達也の申出を、遙加は結局断ることができなかった。
「たっちゃん、誰かに勘違いされたらどうするんだろう。好きな子とかいないのかな」
遙加は全くお門違いなことを考えているのだが知らぬは本人ばかりなり、なのである。
『そういえば肩凝りいつの間にか治ってる、よかった』
遙加は偶然治ったと思っているのだが実はそうではない。それは後にある出来事によって明かされるのであった。
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