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さよなら世界、こんにちは異世界
22.異世界の兄弟は
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フン、フン、フ――ン……、おいしいおいしいブルーベリー……フンフン、フ――ン。
「エディン様、ご機嫌ですね」
「うん!僕、こうやって作るのがすごくたのしいの!サウにいちゃんと一緒のランチがもうれしいし。ばあやと一緒に作るの好きなんだ」
「ばあやも、エディン様が喜んでくれて嬉しいですよ」
「あとねー、知らない誰かとパイを作ったらあげる約束をしたような気がするけど、どうしたらいいか分からなくてー」
「そうですねえ。これはどうでしょう。寝る前に、お皿に小さなパイを入れて窓辺に置いておくのはどでしょう?誰か分からない約束は、だいたい小人か精霊との約束と言われてますよ」
「へぇ~、ばあやは何でも知ってるね。わかったぁ、寝る前に置いてみるね」
ばあやが、サッと鼻の頭についたお粉を取ってくれた。粉をこねこねしている、僕の袖も折り返してくれた。ばあやといると、かゆいところに手が届くと言うか、すごい気が付いていろいろやってくれるから助かるけど……どんどん甘えて幼くなっているのは気のせいかなぁ?
「エディン様、手が止まってますよ。パイ生地は手早くバターが溶けないうちにまとめないと。まとめた後は冷氷庫で冷やしましょう。その間に、カスタードクリームやブルーベリーを少し砂糖で煮詰めましょうか」
「はい、ばあや先生!」
「なんですか、先生って?エディン様は面白いですねえ」
「だって物を教えてくれる人はみんな先生って、ばあやが教えてくれたんだよ。だから、ばあやも料理の先生なの」
「……ありがとうございます。ばあやは、エディン様がお優しくなられて嬉しいです……」
ばあやにそっと、ハンカチを渡した。もうっ、エディってば、ばあやを泣かしちゃだめだぞー。前はどんな感じだったんだろう?本には詳しく書いてなかったから分からないし、エディの記憶もところどころしか僕の中には入ってこないし~。僕の知らないエディは何をおもって生きてきたんだろう。この世界の事でまだまだ分からないことが多くて不安になってしまう。
そんな、気持ちを振り切るようにカスタードクリームを焦がさないようにひたすら混ぜた。
パイを焼いているオーブンから、甘ーい匂いがしてきた。なんで、パンが焼ける、クッキーが焼ける匂い、パイが焼ける匂いがしてくるとワクワクしちゃうんだろう。あまいあまい匂いがしてくると、うわぁ~おいしそう~食べたーいと思っちゃう。そういえば、ばあやもいつもいい匂いがする。あまくて優しい匂いで、なんだか落ち着く匂い。お母さんに似た匂い……。お母さん、元気かな。
「エディン様、そろそろ焼けましたよ。開けてみますね」
オーブンを開けると、長方形のパイで上にかぶせた網み目もきれいに焼けてこんがりした焼き色が付いてた。網み目からブルーベリーのむらさき色が見えておいしそう。焼きたてのパイって、ピカピカツヤツヤして宝石みたいだ。食べるのもったいない、食べたい、もったいない、やっぱり食べたーい!う~ん、いい匂い。
「ばあや、準備して中庭に行こう。早く行こう!今すぐ行こう!僕、楽しみ!」
「じゃあ、カゴにパイを入れて、この温冷瓶にスープを入れて。さあ、行きましょう」
2人で、中庭に向かうと、いつものように敷布を敷いて準備をして待っていた。
なんかがやがや話し声が聞こえてきたぞ。サウにいちゃんだけじゃないのかな?サウにいちゃん以外の声がして、思わず身構えてしまう。
「サウズロード、ここは末の弟の館じゃないか。エディンに、まさか用事でもあるのか?」
「だから、さっきから何度もエディンと昼食を食べると言ってるでしょう?」
「本当に?物好きなんだな。いつから、エディンと仲良くなったんだ?」
「…昨日からですよ。もういいでしょう。ガングリオン兄さんはもう帰って下さい。招待もされてないですし」
「今まで嫌っていたおまえが、いきなりエディンと昼食?ちょっと気になるな。俺も混ぜてくれ、黙ってれば護衛に見るだろう?」
「見えるわけないでしょう。どっからどう見ても、アンディスール公爵家の嫡男にしか見えませんよ。ガングリオン兄さん」
「そうかあ?おまえの護衛と体格は同じぐらいだろう?」
「体格は同じくらいでも、ガングリオン兄さんは圧と押し出しが凄いんですよ。もういいから帰って下さい」
「サウズロードがこんなに頑固に断るのは初めてじゃないか。余計に気になるなあ~」
サウにいちゃん、聞こえてるから…。僕のこと、嫌ってたんだね。ちょっとショック。でも今は違うってことかな。そしてガンにいちゃん。こんなキャラだったっけ?もっと落ち着いてて、頼りがいがある人だと思ってたけど。ガンにいちゃんのランチは作ってこなかったけど、パイは多めに作ったから食べる分はあるよね。
中庭に通じる扉が勢いよく開かれた。
「よお、エディン、遅くなったな。俺は護衛のガッチーだよろしく頼むぜ」
「はい、ガンにいちゃん。よろしくお願いします」
「なんで、バレてるんだ?」
僕はぺこりと頭を下げて、にっこり笑んだ。胸の内で、ガンにいちゃんって面白いってつぶやきながら。
さあ、楽しいランチのはじまりだ
「エディン様、ご機嫌ですね」
「うん!僕、こうやって作るのがすごくたのしいの!サウにいちゃんと一緒のランチがもうれしいし。ばあやと一緒に作るの好きなんだ」
「ばあやも、エディン様が喜んでくれて嬉しいですよ」
「あとねー、知らない誰かとパイを作ったらあげる約束をしたような気がするけど、どうしたらいいか分からなくてー」
「そうですねえ。これはどうでしょう。寝る前に、お皿に小さなパイを入れて窓辺に置いておくのはどでしょう?誰か分からない約束は、だいたい小人か精霊との約束と言われてますよ」
「へぇ~、ばあやは何でも知ってるね。わかったぁ、寝る前に置いてみるね」
ばあやが、サッと鼻の頭についたお粉を取ってくれた。粉をこねこねしている、僕の袖も折り返してくれた。ばあやといると、かゆいところに手が届くと言うか、すごい気が付いていろいろやってくれるから助かるけど……どんどん甘えて幼くなっているのは気のせいかなぁ?
「エディン様、手が止まってますよ。パイ生地は手早くバターが溶けないうちにまとめないと。まとめた後は冷氷庫で冷やしましょう。その間に、カスタードクリームやブルーベリーを少し砂糖で煮詰めましょうか」
「はい、ばあや先生!」
「なんですか、先生って?エディン様は面白いですねえ」
「だって物を教えてくれる人はみんな先生って、ばあやが教えてくれたんだよ。だから、ばあやも料理の先生なの」
「……ありがとうございます。ばあやは、エディン様がお優しくなられて嬉しいです……」
ばあやにそっと、ハンカチを渡した。もうっ、エディってば、ばあやを泣かしちゃだめだぞー。前はどんな感じだったんだろう?本には詳しく書いてなかったから分からないし、エディの記憶もところどころしか僕の中には入ってこないし~。僕の知らないエディは何をおもって生きてきたんだろう。この世界の事でまだまだ分からないことが多くて不安になってしまう。
そんな、気持ちを振り切るようにカスタードクリームを焦がさないようにひたすら混ぜた。
パイを焼いているオーブンから、甘ーい匂いがしてきた。なんで、パンが焼ける、クッキーが焼ける匂い、パイが焼ける匂いがしてくるとワクワクしちゃうんだろう。あまいあまい匂いがしてくると、うわぁ~おいしそう~食べたーいと思っちゃう。そういえば、ばあやもいつもいい匂いがする。あまくて優しい匂いで、なんだか落ち着く匂い。お母さんに似た匂い……。お母さん、元気かな。
「エディン様、そろそろ焼けましたよ。開けてみますね」
オーブンを開けると、長方形のパイで上にかぶせた網み目もきれいに焼けてこんがりした焼き色が付いてた。網み目からブルーベリーのむらさき色が見えておいしそう。焼きたてのパイって、ピカピカツヤツヤして宝石みたいだ。食べるのもったいない、食べたい、もったいない、やっぱり食べたーい!う~ん、いい匂い。
「ばあや、準備して中庭に行こう。早く行こう!今すぐ行こう!僕、楽しみ!」
「じゃあ、カゴにパイを入れて、この温冷瓶にスープを入れて。さあ、行きましょう」
2人で、中庭に向かうと、いつものように敷布を敷いて準備をして待っていた。
なんかがやがや話し声が聞こえてきたぞ。サウにいちゃんだけじゃないのかな?サウにいちゃん以外の声がして、思わず身構えてしまう。
「サウズロード、ここは末の弟の館じゃないか。エディンに、まさか用事でもあるのか?」
「だから、さっきから何度もエディンと昼食を食べると言ってるでしょう?」
「本当に?物好きなんだな。いつから、エディンと仲良くなったんだ?」
「…昨日からですよ。もういいでしょう。ガングリオン兄さんはもう帰って下さい。招待もされてないですし」
「今まで嫌っていたおまえが、いきなりエディンと昼食?ちょっと気になるな。俺も混ぜてくれ、黙ってれば護衛に見るだろう?」
「見えるわけないでしょう。どっからどう見ても、アンディスール公爵家の嫡男にしか見えませんよ。ガングリオン兄さん」
「そうかあ?おまえの護衛と体格は同じぐらいだろう?」
「体格は同じくらいでも、ガングリオン兄さんは圧と押し出しが凄いんですよ。もういいから帰って下さい」
「サウズロードがこんなに頑固に断るのは初めてじゃないか。余計に気になるなあ~」
サウにいちゃん、聞こえてるから…。僕のこと、嫌ってたんだね。ちょっとショック。でも今は違うってことかな。そしてガンにいちゃん。こんなキャラだったっけ?もっと落ち着いてて、頼りがいがある人だと思ってたけど。ガンにいちゃんのランチは作ってこなかったけど、パイは多めに作ったから食べる分はあるよね。
中庭に通じる扉が勢いよく開かれた。
「よお、エディン、遅くなったな。俺は護衛のガッチーだよろしく頼むぜ」
「はい、ガンにいちゃん。よろしくお願いします」
「なんで、バレてるんだ?」
僕はぺこりと頭を下げて、にっこり笑んだ。胸の内で、ガンにいちゃんって面白いってつぶやきながら。
さあ、楽しいランチのはじまりだ
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