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さよなら世界、こんにちは異世界
11.異世界の冒険者
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ばあやに守られて、ガタガタと震えて
いて情けない僕。
助けを呼ぶことしか出来ない僕。
僕はもう変わりたい。
何も出来ない僕じゃなくて、
出来ないなら出来ないなりに、やりよ
うがあるはずだ。
窮鼠猫を噛むというでしょう。
僕はいつの間にか意識を失ってぐったりとしていた、ばあやの体をそっと横に寝かせた。マントを脱いで、ばあやに掛けると安心させるように背中を数回撫でる。
「大丈夫、僕が守ってあげる」
今度は連続して爆発音が上がった。前を見ると粉塵が上がり、アーケードの屋根も壊されていてズタズタになってる。僕らから前の商店街の店はほとんど崩れて被害は相当だろう。
眼を凝らすと、商店街の奥から黒い瘴気が流れていた。間違いない、魔獣だ。それも、あの大きさはトリプルA級!AAAグランドベヒモスだ。
武器は無し、使えるのは自分の身体だけか……。僕はためらいもせずに、自分の手首を噛み切ろうとすると!
その瞬間、大きな影が僕に覆いかぶさって手を取られた。
「こらこら、おいたはダメだぞ?もう、大丈夫だからな。ちょっとだけ、ここで待てるか?」
彼はすごく大きな人だった。声は低い声だけど優しくて。明るい茶色の瞳は、どこまでも穏やかで澄んでいた。笑うと目じりにうっすらシワが出来て、それが余計にこの人を優しく見せていた。体格が良く、鍛え上げた鋼のように雄々しく、岩のように巨大で。大きくて武骨な手はごつごつとしていたけれど、僕の頭を撫でてくれるその手に安心してしまう。見上げると50cm以上、僕より身長は高いかも。片腕の太さは僕の腕の4本分は優にありそうだった。
問われるままに頷くと、僕に防御の石を渡して、彼はグランドモスへと駆けて行った。彼に貸してもらった防御の石のおかげで、僕とばあやは防御壁に囲まれて安全でいられた。
彼はあんなに大きな身体をしているのに動きは敏捷で、無駄が何もなかった。飛んでくる石つぶては手甲ではねのけて、どんどん先へ進んで行く。
きっと、彼は冒険者だ。それも等級の高い飛び切りの冒険者。
グランドヘビモスが気付く前に、両手剣を抜き駆け寄った!魔法を唱えて、アイスクロウを放ちながら、高くジャンプして、グランドモスの脳天に数回、剣を叩きこんだ。
凄まじい閃光が幾重にも帯状に放たれて、グランドヘビモスはゆっくりとその巨体が崩れていった。
彼は、その剣を振ってヘビモスの血を吹き飛ばすと、くるくると手で振り回してから腰の鞘に納めた。
ふわぁーーー!!!かっこいい!!師匠と呼びたい。いや、呼ばせて下さい。すごい!すごい!あのグランドヘビモスを一撃だよ。いや、実際は何度も打ち込んでたけど早すぎて見えなかったの。見えなかったから、一撃としよう。
あっ!ばあや!ごめん、僕、浮かれちゃってた。
急いで、ばあやの元に駆け寄ると、胸に耳を付けて鼓動を聞いた。良かった、元気だ。もう、本当、僕のバカ。ばあやを置いて浮かれてごめんね。
頭の傷は出血の割には、傷口は小さかった。周りを窺うと、僕たちを気にしている人はいなかった。
僕は小指を噛み切って、ばあやの頭部の傷口に近づけた。小指から滴る血が、傷口に触れると金色に輝いて、見る見るうちにに傷は塞がっていった。……良かった、本と同じようにこの体は妖精の系譜だった。実際に試すまで、改変されていたらどうしようかと心配だったんだ。
もう、ばあやは安心だ。僕は気が抜けて、お行儀が悪いけど地面に座り込んでぼんやりとしてしまった。
だから、彼が一部始終を見ていたなんて知らなかったんだ。
いて情けない僕。
助けを呼ぶことしか出来ない僕。
僕はもう変わりたい。
何も出来ない僕じゃなくて、
出来ないなら出来ないなりに、やりよ
うがあるはずだ。
窮鼠猫を噛むというでしょう。
僕はいつの間にか意識を失ってぐったりとしていた、ばあやの体をそっと横に寝かせた。マントを脱いで、ばあやに掛けると安心させるように背中を数回撫でる。
「大丈夫、僕が守ってあげる」
今度は連続して爆発音が上がった。前を見ると粉塵が上がり、アーケードの屋根も壊されていてズタズタになってる。僕らから前の商店街の店はほとんど崩れて被害は相当だろう。
眼を凝らすと、商店街の奥から黒い瘴気が流れていた。間違いない、魔獣だ。それも、あの大きさはトリプルA級!AAAグランドベヒモスだ。
武器は無し、使えるのは自分の身体だけか……。僕はためらいもせずに、自分の手首を噛み切ろうとすると!
その瞬間、大きな影が僕に覆いかぶさって手を取られた。
「こらこら、おいたはダメだぞ?もう、大丈夫だからな。ちょっとだけ、ここで待てるか?」
彼はすごく大きな人だった。声は低い声だけど優しくて。明るい茶色の瞳は、どこまでも穏やかで澄んでいた。笑うと目じりにうっすらシワが出来て、それが余計にこの人を優しく見せていた。体格が良く、鍛え上げた鋼のように雄々しく、岩のように巨大で。大きくて武骨な手はごつごつとしていたけれど、僕の頭を撫でてくれるその手に安心してしまう。見上げると50cm以上、僕より身長は高いかも。片腕の太さは僕の腕の4本分は優にありそうだった。
問われるままに頷くと、僕に防御の石を渡して、彼はグランドモスへと駆けて行った。彼に貸してもらった防御の石のおかげで、僕とばあやは防御壁に囲まれて安全でいられた。
彼はあんなに大きな身体をしているのに動きは敏捷で、無駄が何もなかった。飛んでくる石つぶては手甲ではねのけて、どんどん先へ進んで行く。
きっと、彼は冒険者だ。それも等級の高い飛び切りの冒険者。
グランドヘビモスが気付く前に、両手剣を抜き駆け寄った!魔法を唱えて、アイスクロウを放ちながら、高くジャンプして、グランドモスの脳天に数回、剣を叩きこんだ。
凄まじい閃光が幾重にも帯状に放たれて、グランドヘビモスはゆっくりとその巨体が崩れていった。
彼は、その剣を振ってヘビモスの血を吹き飛ばすと、くるくると手で振り回してから腰の鞘に納めた。
ふわぁーーー!!!かっこいい!!師匠と呼びたい。いや、呼ばせて下さい。すごい!すごい!あのグランドヘビモスを一撃だよ。いや、実際は何度も打ち込んでたけど早すぎて見えなかったの。見えなかったから、一撃としよう。
あっ!ばあや!ごめん、僕、浮かれちゃってた。
急いで、ばあやの元に駆け寄ると、胸に耳を付けて鼓動を聞いた。良かった、元気だ。もう、本当、僕のバカ。ばあやを置いて浮かれてごめんね。
頭の傷は出血の割には、傷口は小さかった。周りを窺うと、僕たちを気にしている人はいなかった。
僕は小指を噛み切って、ばあやの頭部の傷口に近づけた。小指から滴る血が、傷口に触れると金色に輝いて、見る見るうちにに傷は塞がっていった。……良かった、本と同じようにこの体は妖精の系譜だった。実際に試すまで、改変されていたらどうしようかと心配だったんだ。
もう、ばあやは安心だ。僕は気が抜けて、お行儀が悪いけど地面に座り込んでぼんやりとしてしまった。
だから、彼が一部始終を見ていたなんて知らなかったんだ。
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