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さよなら世界、こんにちは異世界
5.異世界でもご飯は美味しいです!
しおりを挟む「お父様、お母様、お話があります。少しお時間を頂戴してもよろしいでしょうか」
あれから、3時間後にようやく両親と話が出来るようになった。
ベッドのレースカーテンを開けて出た僕に待っていたのは、最初にばあやの説教だった。
いわく、人前で大きな声を出してはいけません。ベッドの上で騒いではいけません。親子といえども、貴族で住まいが本館と別館に分かれている場合は直ぐにお話しはできまん。それぞれにいる専属の執事にお伺いをするのが常識だそうです。
思わず、「はぁ」と返事をしたら、さらに叱られてしまった。久しぶりに、坊ちゃまと言われたな。エディが8歳になった時に、ばあやはエディン様と呼ぶようになった。貴族だからと言われても、それまでは坊ちゃまと呼ばれていたのだから戸惑うよね。
その後に、僕のお腹の音が鳴った。昨日から何も食べてないもん。すっかり、お腹はペコペコだよ。それから、ばあやが急いで用意してくれた食事は本当に美味しかった。温かいコーンスープに、目玉焼きとハムをローストしたものと、茹でた野菜と果物とコッペパン。思わず、やったーとバンザイしたら注意はされたけど、ばあやは笑ってくれた。
異世界に来て、心配していた食事も何とかなりそうだ。むしろ、すごく美味しかった。スープもおかわりしたら、満腹になって眠くなってしまった。目をお擦りながら本館に案内されて、やっと両親とご対面出来た。
エディの両親の挿絵は本には無かったから、顔は知らなかった。お父様は背も高く、体格が良いな。髪も瞳もブラウンカラーで、笑うと目じりが下がって優しい顔になる。けれど、王国騎士団総括倒幕団長をしているみたい。団長って、どれくらい偉いの?とばあやにコソコソ聞いたら、騎士団で一番偉い人と教えてくれた。なるほどー、ばあや、分かりやすい!
お母様はの外見は僕によく似ていた。金髪に金色の瞳。母様の瞳は蜂蜜を溶かしたようにとろりとした色合いだった。少し神経質そうだけど、それでも微笑むと慈愛があふれていた。何でも治癒の力をお持ちで毎日慈善事業に精を出しているそうです。精霊さまを信奉してて、各地方の精霊教会にも泊りで足繁く通っているようだ。
大体は良く分かった。例えるなら、現代の富裕層の夫婦で金に任せて育児はそっちのけで、自分たちがしたいようにしている家庭って事なんですね。そして、厄介なのはこの手の夫婦にありがちなのは世間体を気にするということだろう。
僕の親戚にもいてね。小さい頃から入退院を繰り返している僕が気に入らなくて、父さんと母さんに会えば嫌味を言っていた。健康じゃ無くても、何も迷惑をかけてないのにおかしい話しだよね。
最初は気にしていなかったけど、余りにもしつこく言ってくるから付き合いは止めたと聞いた。清々したとわらっていたな。確か、どこかの大学教授と弁護士の夫婦だった。
そんなことがあってから、母さんは先生と言われる職業の人には注意しなさいと言っていたっけ。主治医にも注意した方がいいの?と聞いたら、「少しはね」と笑顔で言ってたな。
ふふ、そうか。ばあやは母さんに似ているんだ。ばあやに、長とつくお仕事の人には注意した方がいい?と言ったら、「その通りです」と言うだろうな。加えて、お父様にも気を付けた方がいいのか聞いたら、「少しは」と言って笑んでいそうだ。
僕は、このまま公爵家の三男としているつもりは、さらさらないもん。出来れば、今すぐに平民になって牧場などで働きたい。昔から動物も好きだから、心臓が元気になったら動物園でも働いてみたかった。この世界は動物もいるけど魔獣もいる世界だから、動物園は無理そうだけど、さっきの食事に牛乳が使われていたから牧場だったら出来そうじゃないかな。
牧場だったら、広い場所で好きなだけ走り回れるぞ。顔は真顔で、心の中で小躍りするくらいに未来に夢を見ていた。ここで、間違えちゃいけない。頑張れ、僕!
「エディ、話があると言っていたがそろそろいいかね。先ほどのばあやの件は分かったよ。私たちも性急に進めようとしてしまった。けれど、エディも12歳になれば貴族院中等部に入学する。そうしたら、住まいも王都の本邸宅に住むことになるだろう。この領地から出て暮らすのだから、離れる前に本館で傍にいて欲しいと思ったんだよ」
お父様の言い分は至極まっとうだ。エディにとったら、その通りにしますとしか言えないだろう。でも、長い間、病室のベッドで読書三昧で過ごしてきた僕の知識と雑学を侮って貰ったら困りますな。
はっはっはっはっ!思わず高笑いを胸の内でしたよ。
「お父様、エディからのお願いがあります。僕を廃嫡して下さい!」
「なにぃぃーー!?」
あっ、間違えちゃった。結論から言ってしまった。本当は、今まで我儘ばかりで申し訳ありませんと言うはずだったのに。テンパってたかな?僕はこの後どうしようかなと考えつつ、冷汗をかきながら微笑みを浮かべるしかなかった。
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