能力持ちの全寮学校に入学しましたが、私は普通の一般人。とりあえず平穏にすごしたいんですけど!?

近藤蜜柑

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11月 2

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「だよね!だよね!合うよね!」
ヒイラギのオススメしている意味はわからないが、眠り姫は出演時間がとても少ない事でも有名だ。嬉しそうなルピナスをモミジが必死に止める。
「乗り気にならないでルピナス!!合いすぎてイヤ![逢ったでしょ?夢の中で]とかキモい事言われるのよ!?」
「え?えっとドキドキしちゃうね・・・」
赤くなりながら頬を隠すルピナスは何処か嬉しそうだ。
「こういう時に乙女にならないで!」
「モミジちゃんならあの魔女似合うよ?」
「ヒイラギ・・・アンタ、ケンカ売ってるの?」
ヒイラギに悪役を提案されたモミジはヒイラギの胸ぐらを掴む。
「イヤ、僕から見たら2人にぴった
「絶対にイヤ!!ルピナス!寝込みを襲われても良いの!?」
ヒイラギを放り出したモミジはルピナスに詰め寄る。
「ね、寝込み!?」
ルピナスが真っ赤になる。少し意味合いが違う気がするが・・・
しばらく考えていたアスターが探偵らしく答える。
「ドラゴンなら炎が使え・・・いや待て!永遠の少年なら空飛べる!飛ぼうぜモミジ!」
「絶対に嫌」
モミジはにっこり笑って拒否した。
「何でだよ~!」
口を尖らせるアスターにモミジの怒りは頂点に近い。
「アンタどんだけ空飛びたいの!?もし永遠の少年の話ならアンタは海賊の手下よ!」
「そう?大人になれない少年なんてアスターにピッタリじゃ
「ヒイラギは黙ってて!!!」
にこやかに提案するヒイラギにモミジは怒り狂っている。
「・・・なるほど。永遠の少年の話なら主役はウェンデイだと主張出来なくもないな!」
フクジュ先生は何処か乗り気だ。黒板に書こうとしたのをモミジは能力でチョークを取り上げて止める。
「先生?アタシはイ、ヤ!」
「わかったわかった。なら候補にしておく」
空を飛ぶ事がとても多いお話なのでモミジに光の粉を纏う妖精はぴったりだが、ここまで反対されては難しい。知らんぷりしているカエデに説得を頼むのも無理だ。


全員の希望を聞いたところで、しばらく考えてからフクジュは口を開く。
「・・・意見を聞いていてわかった。ロマンスの要素がなく、人数がそれなりに調整できる演目が良いな。そしてルピナスの性格上、巻き込まれていく主人公が良さそうだ」
「う・・・」
あまり乗り気じゃないのがバレている。
「・・・なら、アリスはどうだ?」
フクジュ先生は黒板にタイトルを書き、ルピナスは繰り返してお話を辿る。
「アリス・・・」
「ああ、アリスだ」
カエデやポトス、ヤマブキも反対しない。
「良いんじゃない」
「賛成だ!」
「ぼく、あの役ならいいよ~」
口々に賛成意見が出る。ルピナスはアリスの衣装を思い出す。水色のワンピースに白いエプロン。カチューシャなどで可愛らしい衣装だ。ルピナスは楽しそうに笑う。
「アリスの服、可愛いんだよね。・・・エヘヘ」
「ルピナスも乗り気みたいだな。なら、アリスで良いな?」
『はーい!』
「なら、配役を決めるか」
フクジュ先生は黒板に役を書き出していった。

「ねえ、カエデ」
モミジがカエデをつつく。
「何?」
「意見、違ったね」
「そうだね。・・・イヤ?」
笑みを浮かべ尋ねるカエデにモミジもニコニコ笑う。
「イヤじゃない。コレでいい!」
「モミジ静かにしてろ~」
「は~い!」
黒板に振り返ったフクジュの口元は双子と同じように緩んでいた。

配役は
ルピナス  アリス
アスター  うさぎ
ヒイラギ イモムシ
カエデ、モミジ  双子のきょうだい
ポトス イカレ帽子屋
カスミ 眠りネズミ
ヤマブキ  チャシャ猫
ボタン  ハートの女王
フクジュ ナレーション
となった。



配役決定後、ルピナスはアスターを睨む。
「アスター君は3月ウサギが良かったんじゃないの?」
「どう違うんだ?」
昨日のハロウィンの事件について何もない事に不満があり、ルピナスはつい嫌みを言ってしまったがスルーされてしまった。
「・・・・・・っ!3月のウサギは発情期なんだってさ!」
「誰が発情期だ!!」
「さあ?ダレだろうね~!」
ムキになるルピナスにアスターも怒る。
「ハイハイ、そこも喧嘩すんな~」
フクジュ先生に注意されてルピナスはぷいっとアスターから顔を反らした。



「では、俺は台本を用意する。衣装はベニバナさんにお願いするが・・・モミジ、みんなの為に暴走は止めてあげてくれ」
「はい!」
衣装担当のモミジがフクジュ先生に頼まれてしっかりと頷く。
「・・・ベニバナさんって食堂のおばちゃんだよね?」
ルピナスが疑問を口にする。
「そうそう!」
モミジが頷き、カエデやボタン、ヤマブキ、ヒイラギも話しながら説明する。
「掃除もやってるけど、ベニバナさんの本領発揮はこの文化祭なんだよ」
「ベニバナさんも能力持ちなんです」
「能力は裁縫なんだ」
「デザインを見ただけで服を作れるんだよ」
「へ~!!凄い人なんだ!」
感心したルピナスにみんな微妙な顔をし、フクジュ先生まで頭を抱える。
「ただ、本人のセンスは・・・」
モミジやポトス、カスミとカエデが説明する。
「ちょっと趣味に走りすぎるのよね・・・」
「昔は商品開発になくてはならない人だったらしいがな」
「あと、おりょうりとくいなの!」
「だから、学校の料理長としてまとめてるんだ。俺の先生でもある」
「体育祭のカツづくしはベニバナさんの提案したエールなんだぞ!」
「ふ~ん」
まだ人物像が見えてこない。アスターが加わり少し機嫌が悪くなったルピナスに気づいてフクジュ先生が間に入る。
「食べっぷりのいいポトスやアスターにコブシ、ヒイラギが大好きだな」
「趣味に走りすぎるってのは?」
ルピナスが気になっていた事を聞くと、ヒイラギが困ったように指先で頬をかく。
「あ~・・・昔なのかは知らないけどバンギャだったらしくてね」
「バンギャ?」
何処かで聞いたことくらいはある言葉だ。モミジが説明する。
「簡単に言えばバンドの追っかけとか。とにかく、パンクとかロリータとかのファッションが大好きなのよ」
「え!?普段はシンプルだよね!?」
ハロウィンの衣装もシンプルだった。理事長の座布団を持っていける程に呑み込まれず、あの理事長を怒れる存在なのだろう。
モミジとヤマブキが説明する。
「自分で着るよりも着せたい願望のが強いらしいわ」
「噂だけど、何処かのレコード会社のステージ衣装全部作ってたらしいよ」
「す、凄い人だね・・・」
モミジはルピナスの両手をとって決心しているように言い放った。
「大丈夫!!アタシがきちんとした衣装考えてあげるからね!ルピナスにパンクとかロリータの衣装着せるの阻止するから!!」
「あ、うん・・・」
ちょっと興味あったけど、黙っておこう・・・




一週間後、台本が出来たとフクジュ先生が教室で渡そうとしたその時、教室のドアが大きくガラッ!と開いた。
「モミジちゃん!アリスやるんだって!?衣装作って来たよ!」
「べ、ベニバナさん!?」
ベニバナさんがいきなり教室に入ってきてフクジュは仰天した。
確かに配役を先に伝えたが、クラス全員分を一週間で作ったというのか!?9人分だぞ!?
「は、早すぎないですか!?」
「デイジーのおかげさ」
「彼女をあまりこき使わないで下さいよ!彼女だって忙しいんですから」
「嬉しそうにしてたからあげたよ」
「あ、あげた?何を!!」
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