上 下
38 / 76

8月 5

しおりを挟む
「当たらないよ~!」
ポトスは姿勢を低くし、優しく子供に教える。
「・・・もっとよく狙え。1点のみに集中しろ。当たれと念じてそれ以外考えるな!」
「1点に集中・・・当たれ・・・当たれ・・・当たれ・・・っ!」
パンッ!
「あ、当たった!!ありがとうお兄ちゃん!」
「良かったな」
ポトスは子供の頭を撫でた。
「ポトス君、良いお父さんになりそう。先生とか向いてるかも・・・」
「・・・・・・るさい!!早く向こうに行け!!」
「あ、うん!!ありがとうね!」



甘い香りがする・・・わたあめの屋台だ。
あれは、ボタンちゃん
とイベリスさん?最近仲良しだよね・・・
お揃いの総絞りが似合ってるなぁ
ふふっ!いい雰囲気だし、そっとしとこうか・・・


ここは熱くて香ばしいな・・・あ、あのチェック柄のちょっと大きめな着られてる感の強い浴衣は!
「ヤマブキ君!」
「・・・ルピナス?・・・2本買ったから食べる?フランクフルト。モグモグ」
「ありがとう!・・・ヤマブキ君ってジャンキーな物が好きなの?」
ヤマブキはホットドッグやコーラ、ハンバーガーなど、ジャンクフードが好みのようだ。
「・・・確かに。だけど、ステーキとかも好きだよ?」
「そうなの?」
「パスタならミートボール乗ったやつ」
「あ、見たことある!」
「甘いモノも好き。パンケーキとかドーナツとかチョコチップクッキーが好き」
「へ~美味しいよね!」
「ピザも好きだけど、僕が好きなのはあまり見かけないんだ」
「え、そうなの?」
ピザにもいろんな種類があるけど、どんなのかな?
「はい、ポテトも買ったから分けたげる」
「あ、ありがとう!」
何か、規則性有りそうだけどわからないや
「・・・馴染みがないのって買いにくいんだよね」
「ふ~ん、あんまりお祭り行かないの?」
「・・・祭りなんて陽キャの行く場所でしょ?ゲームのイベントなら行くけどさ」
「それは行くじゃなくてログインでしょ?」
「ふふっ、旨いこと言うね」
「ひょっとしたら、お祭りはじめて?」
「いや、さすがにそれはないよ?まぁ、浴衣は初めて着たけど、日本のお祭りは騒がしい。シャイな人が多いから、発散すると凄いパワーになるんだろうね」
「・・・うん?」
何だか日本以外に比べられる経験をしているみたいだ。・・・そう、海外の
「僕はもう少しここにいたいから、早く行きなよ」
「え?・・・あ、うん!」
追い払われちゃった・・・





座る場所を探してうろうろするルピナスは、端にある焼きそばの屋台の付近でぐったりしているカエデを見かけた。
「あれ?カエデ君?どうしたの?こんな隅っこで」
「・・・俺は人混み苦手なの」
「モミジちゃんは?一緒だと思ってた」
「モミジは人を酔わせやすくするんだよ」
「え?」
「2人とも能力の影響なの。だから、こういう人混みは一緒にいないし、そもそも俺は嫌い」
「あ、水着買いに行ったとき来なかったのもそのせい?」
「まあね。人混み少ないと一緒に行くけどさ」
「なるほどね」
「ま、あの女の子だらけの中には入りたくなかったし・・・」
「そう?カエデ君なら中性的だし、女の子に混ざって
「止めろ!」
「あははっ!冗談だよ」
「で、匂いが強い場所だとある程度落ち着く」
「そっか。ありがとね着いてきてくれて」
カエデ君は浴衣もきっちり着ていて、でも、どこか涼しげで凛として、落ち着いた雰囲気がする。
「別に。アンタの笑い声聞いたら落ち着いてきた」
「あ、同じソースだけど、たこ焼き食べる?好きだよね?タコ」
ルピナスは先ほど買ったたこ焼きを差し出した。
「屋台のたこ焼き・・・くれ!食べてみたかった!!モミジはイカ焼きしか買ってきてくれなかったからな・・・!」
「モミジちゃんなりに、連れ出そうとしてたのかもね」
ルピナスの鶴の一声にカエデはつまんだたこ焼きをお皿に落とした。
「・・・・・・。君、本当に凄い人だね」
「え?そう?」
「・・・うん。自覚ないのが最強。・・・君のためにも俺のためにも、たこ焼きだけ置いて早くアッチ行って」
カエデはルピナスを見ずに、優しい声をしながらも手をシッシと振った。
「・・・うん?わかった。じゃあね」
「うん、ありがとうね」
「・・・どうしたのかな?」
追い払われちゃった・・・




カスミちゃんとフクジュ先生が盆踊りしてる。
カスミちゃん、こんぺいとう買って貰ったのかな?
手にぶら下げてる。・・・楽しそうだな。ここは親子水入らずがいいよね。
ルピナスは、そっとその場を後にした。



後、逢っていない人は誰になるかな・・・?
そう考えていたらまだ逢っていない人を見つけた。
「モミジちゃん!」
「うふふっ!大量よ!」
モミジは水色と青と茶色とピンクのヨーヨーを4つも掲げて得意気だ。
「凄いね!」
「重力の使い方で能力の練習にもなったわ!」
「なるほど!ふふっ!」
「・・・ルピナスにピンクをあげるわね」
「え、くれるの?とっても可愛い!ありがとう!」
「良かったわ!」
ルピナスは困ったように、何時も以上に華やかにモミジの浴衣の袖を引く。
「・・・あ、あのさ、これ、モミジちゃんだから言うけど・・・」
「な、何よ!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

メイドの方が可愛くて婚約破棄?

岡暁舟
恋愛
メイドの方が好きなんて、許さない!令嬢は怒った。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

勇者の凱旋

豆狸
恋愛
好みの問題。 なろう様でも公開中です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...