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7月海 4

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海に行く当日
ボタンに誘導され、バスはワゴン車でも充分乗れるのに、小さいサイズが無いからと市営バスの中でも小さいタイプに近いオリジナルバスに乗り込んだ。
ボタンの家の大きさを改めて知る・・・。
ボタンはメイドのスミレと一緒に助手席に座り、何か話している。ボタンは珍しく張りきっている様子だ。
今日のスミレさんは執事服を着ている。仕事によって制服が変わり、ジャージのように動きやすいらしい

前の方でポトスとアスターとヤマブキ、ヒイラギはトランプをしている。
先に早く上がったヤマブキは眠そうにしており、同じく早く上がったヒイラギもニコニコと勝負の行く末を見守っている。
ポトスが2枚のトランプを広げており、アスターは神妙な顔で素早く1枚引き取る。
「よっしゃアガリ!!」
アスターは揃った2枚のカードを場に出す
「クソッ!!また負けた!もう一回だ!!」
ポトスはまたしても再戦を促す。
「またか?何回目だよ!」
「五月蝿い・・・!」
アスターも流石に飽きたのか、ポトスは歯ぎしりをしている。
「それはそうと、ヤマブキ~オマエは能力使うな!」
アスターはヤマブキを怒るが、ヤマブキはヒイラギを見る。
「・・・ヒイラギだって使ってるじゃん・・・」
「・・・え?」
アスターが驚いてヒイラギを見ると
「僕だって勝ちたいからね」
ヒイラギはニッコリと笑う。普段は目立たないヒイラギだが、防御専門な能力なので、ヒイラギはババが来ないように守っていたんだろう。負けない勝ち方だ。
「の、能力禁止だ!!オレら不利だろ?」
アスターは炎、ポトスは暗器、攻撃型だ。
「ま、そうだね。燃やされても切られても困るし」
「確かに、先生のトランプだしね」
ヤマブキもヒイラギも頷いた。
「じゃあ、次はポーカーならいい?ほぼ運ゲーだし」
「うん、配るね」
同じく飽きていたヤマブキの提案にヒイラギがババを追加してカードを切る。
「おぅ!」
「次こそは勝つ!!」


ルピナスはバスの中でうとうとしていた。目をこする。
「ルピナス、ねむいの?」
隣の席に座るカスミに話しかけられる。カスミは心配そうだ。
「あ、うん。不思議な夢を見ちゃって・・・」
「なんの夢?カスミ、夢うらないもできるよ!」
「うん。入試の日に見た夢によく似てたの・・・。立てない私を支えてくれたあの人の夢・・・」
カスミはこてんと首を傾げる。
「・・・ルピナス、その人に恋してるの?」
「へあっ!恋!?」
つい大きな声を出してしまった。

「・・・・・・!」
「オイ!カードが散らばったぞ!!」
「もう!何やってんのさ・・・」
「大丈夫?アスター」
ポトスやヤマブキ、ヒイラギの声が響く。
「わ、悪ぃ悪ぃ手元狂った。・・・どうしたんだろうな」
アスターはカードを拾った。

「何、どうかしたの?」
「びっくりしたわよ!」
カエデとモミジがカーテンのように振り返る。
「な、何でもないよ!ちょっと驚いただけ!」
眠気がどっか行っちゃったよ!
「ルピナス、それ何?」
「あ、うん。緑茶だよ」
「ボタンお姉ちゃんの好きなのだけど、お歌無いね」
「お歌?あ~俳句の事だね。これは違う緑茶だから。カスミちゃんこそ、雪のコーヒー牛乳は?」
カスミちゃんとは牛乳好きが同じなんだよね
「夏は麦だってパパがうるさいの」
「あはは、そっか」



バスで向かうサービスエリアで山に行くSクラスと逢った。ナズナお兄ちゃんは不安そうだ。
「海に行くんだってね」
「うん!友達と水着買いに行ったのも楽しかった!」
「僕は見せたくない・・・」
「もう!ナズナお兄ちゃんは過保護なんだから!」
「・・・ルピナスは日焼けとかしないタイプだけど、ちゃんと日焼け止めは塗りなよ?」
「わかってるよ!水ぶくれになるのはイヤだもん」
「背中とか女の子に塗ってもらいなよ?」
「はいはい」
「ラッシュガードとかパーカーずっと着てなよ?」
「もう!過保護だよ!」
ルピナスはちょっと怒った。

一方ボタンはイベリスと話していた。
「時間あるならアイス食べる?」
「抹茶味があるのですか!?」
「うん。好きなの?」
「はい!大好きです!茶道で頂くものとはまた違った美味しさがありますね」
「じゃ、どうぞ?」
イベリスは抹茶味のソフトクリームを渡した。
「え、あの・・・」
「ほら食べてとけちゃうよ?」
「いただきます」
ぱく
「どう?」
「とっても美味しいです!凄いですイベリスさん!」
「いや、作ったのボクじゃないし」
「でしたら、是非とも料理長にお礼が言いたいです!行きましょう!」
「え?料理長?あ、ちょっと!!ボタンちゃんそっちじゃない!!」
ボタンは建物の中に入るが、さっき買ったアイスはすぐ近くのカートワゴンだ。イベリスも中々ボタンに振り回されている。


サービスエリアで休憩した後、またバスに乗り込み向かう。

「ルピナスお姉ちゃん、ねむくないの?」
「え?あ・・・うん。もう大丈夫だよ」
「・・・ねむったほうがいいよ?たおれちゃう」
「・・・うん、そうだね。ありがとうカスミちゃん」
「カスミのおひざにどうぞ」
カスミちゃんは小さい手で小さい膝をポンポンと叩いた。
「え?いや、それはちょっと・・・」
「ダメ?カスミおやくにたてない?」
「いやいや、そんな事ないよ!!!」
ウルウルの瞳で見ないで!断るのも甘えるのも罪悪感半端ない!!!
「何?どうしたのよ?」
「バス酔いでもした?」
「あ、モミジちゃん、カエデ!ルピナスがねむいから、おひざまくらしてあげて!」
「え?いや、だから必要な
「わかったわ!ならそっち行
「ちょっとモミジ!走行中だよ!俺がする!」
「同じ事でしょ!?なら2人でやればいいわよ!」
ルピナスが断ろうとするのもモミジは聞いてない。カエデまで同調しては意味が無い。
「何だ?後ろが騒々しいぞ!」
フクジュ先生は寝言!?騒がしい生徒でごめんなさい!
「先生、モミジを止めて!」
「なら、バスの中で飛ぶわよ!」
「だからスカートで飛ぼうとするな!!」
「下に水着着てるわ!」
「そういう問題じゃない!!」
双子はまだ騒いでいる。こんな中でもトランプは続いてるし!
「よっしゃ!ロイヤルストレートフラッシュ!!」
「アスター、強いね・・・」
「流れが読めないや・・・」
ヒイラギはいつも通り微笑む。ヤマブキは能力がうまく行かないみたいだ。アスターが怒る。
「ヤマブキ!オマエは能力使うな!!」
「・・・ん、ずっと使ってるのが普通だったから。使わないの難しい・・・。ヒイラギは手堅いね」
「コツコツ継続するのが得意なんだ。日記とかさ」
「へー、性格出るなぁ~!」
アスターとは真逆だ。ポトスはまたしてもガクリと肩を落とす。
「ま、また負けた!!」
「ブタか・・・」
「ポトスは能力要らずだけどね」
ヤマブキは頬杖をつく。ここまで負け続けていると同情してしまう。
「すぐに顔に出るからわかりやすいんだよ」
ヒイラギが分かりにくいフォローをする。
「クソ!!もう一回だ!!!!」
ポトスはもうヤケクソだ。

あ~これじゃ騒がしくて眠れるわけないよ・・・。何で先生は寝ていられるの!?
「すやすや」


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