上 下
18 / 46

6月体育祭6 お昼

しおりを挟む
「さ、お昼休憩だよ~!!午後もガンバローね!!」
理事長の声と共にみんなは思い思いに散っていく。

「ルピナス!」
聞き慣れた声に振り返る。
「お父さんお母さん!」
「来ちゃったわ!」
「授業参観とか無いし、初めてのフルール見学だもんな」
ゴールデンウィークにも帰省したからそんなに経っていないのに、それでも懐かしいと感じてしまう。やっぱり寮生活してるせいなのかな?
「フクジュか?久しぶりだな!」
「はい、お元気そうで何よりです!」
フクジュ先生とお父さんがにこやかに話し始めた。
「え?お父さんと先生って知り合いなの?」
「入学前に言っただろ?父さんの知り合いがフルールに入学したって!」
「聞いたけど、先生やってるなんて聞いてないよ!」
「いやぁ、先生になったとは聞いてたけど、まさかフルールの先生だとは思わなかったな!」
「私も驚いています。ルピナスさんは、お母さん似ですね」
「ははっ、そうだな!」
先生とお父さんは仲良さそう。今度ちょっと聞いてみようかな?
「あ、私の母から聞いた噴水を見たいわ!何処にあるの?」
「噴水?そんなの知らな
「購買の2階ですよ」
わたしが驚くと先生はにこやかに遮った。
「購買の2階に噴水!?」
「そろそろ慣れろ。この学校は能力持ちだけの学校だぞ?」
「は、はぁ・・・」
本当にこの学校は・・・異質だ・・・


購買の商品を売っている窓口の裏に階段があった。何故か螺旋階段だ。これも学校を作った当時の名残らしい。
2階に上がると、4季とりどりの花が咲き誇り、驚くほどに美しかった。一際大きな杉の木がこの空間を守るように奥ある。中央に噴水もあった。
「綺麗ねぇ・・・」
「知らなかったなぁ。購買はよく行くけど」
奥から知っている声がした。
「それは意外だ。この学校で一番美しいのはこの空中庭園なのに」
「ナズナお兄ちゃん!」
「やぁルピナス」
「な、ナズナ君かい?久しぶりだな」
「ご無沙汰してます。おじさん、おばさん」
お兄ちゃんはお父さん達に向かって頭を下げた。
「元気そうで良かったよ・・・」
「ええ、本当に・・・」
「・・・・・・?」
なんだろう?この空気・・・。お父さんもお母さんも驚いているというか、心配してる?というか困ってる?うーん、何ていうか・・・そう、気まずいだ・・・

その時、大人しい女性の声で放送が流れた。
ピンポンパンポーン
「ボタンさん。Zクラスのボタンさん。至急職員室までお越しください」
ピンポンパンポーン

あれ?ボタンちゃんだ。
「仲良しのクラスメイトが呼ばれて気になるから行ってくる!」
「お父さんたち、別々にご飯食べるから、借り物競争は午後からだろ?頑張れよ!」
「うん!ありがとう!!」



ルピナスはそっと職員室を覗く。
ローズ先生が和服を着たおじさんと話している。どっしり構えて椅子に座るおじさんと対称にローズ先生は困っている。
「わたしはウチのボタンが最下位なんてどういう事かを聞いているんだ」
「いえ、あのですね?玉入れは玉を籠に入れて一番多く玉を入れたチームが勝ちます」
「たくさん入ったじゃないか。ウチのボタンのお陰で」
「ですが、ボタンさんは玉も腐敗させてしまったの
「でも残ったのは、ほんの僅かだったろ?」
「はい、能力を制御するのもこの学校で学んでほしいんですよ。あの場で籠から手を離しても良かったですし、能力を止めても良かったです。もしくは他のチームの玉を腐敗させてしまっていても
「籠を支えていたのは1人しかいなかったろ?」
「変わっちゃいけないなんてルールは無いですし、籠に手が届いた時点で下ろしてしまっても
「いやだいやだ!ウチのボタンが1位だ!・・・なら、今年の商品無くしちゃっても~?」
おじさんは喚き散らした後にイヒヒと笑う。
あ、この人理事長と同じタイプだ・・・
「あ、あの、それはちょっと・・・
「お父様!もうやめて下さい!」
「ボタンちゃん!久しぶり!また1段と綺麗になった
「いえ、ゴールデンウィークに帰省してま
「1ヶ月経ったよ!!ね、ショッピングモール買収するから近くに住まない?」
「もう!勝手な事しちゃダメです!」
「じゃあ近くにマンションを
「ダメです!寮のお友達との生活楽しいんです!」
「じゃあ寮のみんな全員マンションへ
「お父様・・・?」
ボタンの冷たい声をルピナスも初めて聞いた。普段穏やかで控えめなボタンが怒っている・・・。
「ヒッ!わ、わかりました。諦めます。ホント、ママに似てきたね~!」
「そのお母様は?」
「今日はお仕事。わたしは・・・こっそり抜けてきちゃった!テヘペロ」
ボタンは無言でケータイを取り出した。
「もしもしスミレ?」
「はい、お嬢様」
「お父様を連れて帰って下さいませんか?」
「やはりそちらにいましたか、10秒で到着しますので、それまで捕獲をお願いします」
「わかりましたわ。職員室に来てください」
ボタンはそう言ってケータイを切った。

「あ~そんな~!!ご飯一緒に食べようよ~!キノコ鍋美味しいとこあるの!」
「この時期に熱いものはイヤです。みんなと昼食に行ってきます」
「わかった!最後の大縄とびは絶対に見るからね!頑張ってね~!」
捕まったおじさんはメイドさんにずるずると引き摺られていった。

ボタンちゃんが職員室を出てきた。意外と早くてばっちり目が合ってしまった。
「・・・あ、ルピナスさん。見られてしまいましたか」
「あ、うん。気になったから・・・。お父さんと仲良しだね」
「困った父で恥ずかしいです」
気になったので聴いてみる。
「あのさ、ボタンちゃんって実は超お嬢様?」
お父さんが和服着てたし、威厳あったから気になる!!
「あ、えっと、母親が茶道家元の直系で・・・」
「和風のお嬢様!?琴とか三味線とか弾けたりするの!?」
「いえいえ」
「・・・だ、だよね~!」
やっぱりちょっと教育がしっかりしている両親なんだろうな~。そう、ガチのお嬢様なんていな
「弾けますけど、わたくしは日舞と茶道の方が得意ですから」
マジものだ!!


スミレ
ボタンの父の秘書。
ボタンがフルールに来るまでメイドとして働いていた事もあるやり手。
クールで仕事人間。機械的に見えるけど、とっても優しい。
ボタンの父親もスミレも能力持ちじゃない

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】何も知らなかった馬鹿な私でしたが、私を溺愛するお父様とお兄様が激怒し制裁してくれました!

山葵
恋愛
お茶会に出れば、噂の的になっていた。 居心地が悪い雰囲気の中、噂話が本当なのか聞いてきたコスナ伯爵夫人。 その噂話とは!?

【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る

恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。 父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。 5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。 基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。

破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました

平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。 王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。 ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。 しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。 ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?

お幸せに、婚約者様。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

【完結】私を虐げた継母と義妹のために、素敵なドレスにして差し上げました

紫崎 藍華
恋愛
キャロラインは継母のバーバラと義妹のドーラから虐げられ使用人のように働かされていた。 王宮で舞踏会が開催されることになってもキャロラインにはドレスもなく参加できるはずもない。 しかも人手不足から舞踏会ではメイドとして働くことになり、ドーラはそれを嘲笑った。 そして舞踏会は始まった。 キャロラインは仕返しのチャンスを逃さない。

処理中です...