能力持ちの全寮学校に入学しましたが、私は普通の一般人。とりあえず平穏にすごしたいんですけど!?

近藤蜜柑

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6月体育祭3

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得点係の黒髪の女性が点数をボードに付けた。
1種目ごとに1位3点、2位2点、3位1点の合計で優勝者が決まる。
Zクラス3位1点
Sクラス2位 2点
Cクラス1位 3点


イベリスは得点を見上げてため息をついた。
「はぁ・・・2位スタートか。予想も最近よく外れるんだよな・・・」
「あ、あの!」
「え?」
さっきのZクラスの毒の能力の子が声をかけてきた。
おとなしい性格と見た目なのに、1人で来るなんて意外と度胸がある・・・
「さっき、乱闘騒ぎしていたのは貴方ですか?えと、イベリス・・・さん?」
「ん?そうだけど、そこまではしてないよ?ボタンちゃん」
「そこまではという事は、ある程度はしていたんですか!?」
「あ、いや。違・・・
ヤバい口が滑った。予知しろ!
「正々堂々と戦って下さい!」
「は、はい!」
予知・・・し
「ちゃんとごめんなさいしましたか?」
「はい、ごめんなさいしました・・・」
思わず口調が移った。
「なら、仲直り出来ていたんですね?良かった!」
「・・・ごめんなさい」
何だか、母親に叱り飛ばされた気分だ。
「さ、次の競技です!しっかり応援しましょう!」
「・・・・・・。いや、勝敗はもう決まってるよ」
「え?」
「ボクの能力は予知だよ?予知する。この勝負、ボクらSクラスが勝つよ?」
ボタンはニコリと笑った。
「なら、賭けますか?」
「へ?」
「わたくしたち、Zクラスが勝ったら、わたくしのお願いを聞いて下さいな」
「ふふっ。なら、ボクらSクラスが勝ったらボクのお願い聞いてくれるの?」
「はい!・・・あ、でもCクラスが勝ったらどうしましょう?」
「ふふっ。なら、引き分けだね」
「はい!」
変な子だ。ルピナスちゃんとも違う。でも、変な子は面白い。
さて、お願いか・・・。予知しようとしたら彼女との甘い未来が見えてボクは赤面しながら止めた。
「・・・?どうかしました?」
「いや、何でもないよ・・・」
別に、何とも思っていない子なのに、その辺にいる子なのに・・・野暮ったくてボクと釣り合わない・・・いや、待てよ?あの長い前髪の隙間からチラリと見えた瞳や口元はかなりの美少女・・・いやいやボクは何を考えている!?・・・もう止めよう。彼女を予知したくない


 
次の競技は棒倒しだ!
「次は俺様の出番か、行ってくる!」
気合い充分にポトスは天を迎いで歩を進めた。
中央に理事長が待ち、ポトスに矢を渡した。
「じゃ、投げて~」
「おぅっ!」
「何あれダーツ?」
ルピナスが尋ねたらアスターが教えてくれた。
「フルールの棒倒しはな、ダーツで棒が太い方か細い方かを決めるんだよ」
カエデとモミジも付け足す。
「ダーツは棒倒しのリーダーが投げるんだ」
「ダーツの的を四角に分けてて、捲ったら太い、細いが書いてあるのよ」
「へ~、棒倒しって初めて見るなぁ」
ルピナスは興味津々だ。
「ルピナスは中学の運動会とか何があったの?」
ヒイラギが尋ね、ルピナスは考えながら答える。
「ん~騎馬戦とかページェントだね」
「ページェント?」
カスミが繰り返す。
「そう。組体操とかしながら、みんなでお話を作るの。10人でピラミッドとかやったなぁ・・・」
「なるほど、対抗しないで力を合わせて作り上げる競技なんだね」
ヤマブキは理解が速い。
「そうそう、そんな感じ。上級生はレベル高いんだよ~」

そんな事を話しているとダーツは見事命中した。
「Zクラスは太い方だね、じゃ太い方どん!」
理事長が指を指すと、ポトスの陣営に太い大木のような丸太が現れた。
「えっ!?」
ルピナスは驚く。高さは2メートル近い。何の木だろうか?
「Cクラスの細い方もどん!」
理事長がまた指を指すと、敵の陣営に細い竿のような棒が現れた。どうやら竹のようで5メートルはありそうだ。
「長っ!」
ルピナスはまたしても反応してしまう。

まずは両チームとも位置につく。
ポトスは大木の防御に人員を増やし、上に大人数が座り、周りを囲むという二重の守りだ。
ポトスは開始の合図と同時に単騎で敵の陣営に突っ込んだ。
相手チームは糸を使って防御していたがポトスはその糸を掴み、マグロ漁のように一本釣りした。
「ぬぅおおりゃああああ~!!」
見事に竹はタケノコのように抜け、グラウンドに寝転がった。まるで巨大イカ、クラーケンのようだ。

「あの速さ、信長みたい・・・」
ヤマブキが呟き、フクジュ先生が目を光らせる。
「織田信長が今川義元を奇襲した戦いか!?」
「桶狭間の戦いですね!!」
眼鏡の優しそうな先生が何処から出てきたのか割り込む。
「でも、あの戦いには雨がないといけませんよ?」
「なら、あの大木の守りはさながら真田丸だな!」
「いえ、あれなら籠城の・・・」
フクジュ先生と優しい眼鏡の先生は日本史ネタで盛り上がりはじめた。
「あの人って先生?」
「はい、Cクラスの担任オリーブ先生ですわね」
尋ねたルピナスにボタンが答えた。
「へ~」
そういえば、Cクラスの応援席はZクラスのすぐとなりだ。
オリーブ先生は細い眼鏡をかけて髪は柔らかいグレーっぽい紺色で、瞳はカーキのようだ。
ヒョロリと背が高く、優しそうな爽やかな先生だ。
先生たち、日本史好きなのかな?


1回戦勝ったポトスにみんな声をかける。
「流石だな!」
「凄かった!」
「おぅ!勝ちたいからな!!俺様は努力して強くなっている!」
・・・元から強いわけじゃないのかな?
ルピナスはちょっと聴いてみたくなった・・・。

「次はZクラスとSクラスの決勝です!」
「ポトス行こうぜ!」
「おぉ!次も勝つぞ!!!」
チームメイトに囲まれたポトスはいつになく頼もしい。
「このまま能力を使わずに優勝する!」
「ポトスが燃えてる・・・!」
「いっけーポトス!!」
ヤマブキが驚き、アスターが応援した。
「おぅ!」
ポトスは拳を上げてニカッと笑った。

その頃決勝の相手、Sクラスの1人はイライラしていた。
能力を使わないまま優勝だと!?ハンデのつもりか?馬鹿にしやがって!
「行くぞコブシ!」
「おぅ!!元Sクラスの裏切り者を叩きのめす!」
Sクラスの対戦相手コブシは、元Sクラスのポトスを良く思っていなかった。
直情型なポトスをSクラスの面汚しだと思っており、ポトスのZクラス移動を喜んでいたりもした。
コブシは背が低く、えんじ色の暗い赤の髪に薄い灰色の瞳だ。

決勝もポトスは太い方の棒だった。
開始と同時にコブシは自分達の細い竹の棒に乗り、ジャンプしはじめた
「せいっ!・・・せいやっ!」
もはや曲芸だ。歓声が上がる。

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