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6月体育祭2

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去年は屋形船の食事券をクラス全員分と、毎年大盤振る舞いだが、優勝クラスが決まるまで内容は秘密にされているから不思議だ。噂では理事長のコネらしいが?
「いや~みんなやる気いっぱいだね~!」
「賞品が豪華だもの!」
「みんな理事長のコネだと思ってますよ?」
「本当はOBや両親の好意や寄付だっての・・・」
理事長やローズ先生、Cクラスのオリーブ先生、そしてフクジュ先生。教員たちは内情を知っている。
「そうだね。みんな能力と上手く付き合って、家族の関係も修復してほしいね」
理事長が柔らかく笑った。
能力持ちの家庭は環境が上手くいっていない家が多く、希望すれば簡単に日々手紙や写真を送る学校にPTAは感謝してるので、こういった事が出来る。人数も学校全体で50人に満たないので、調整しやすい。
そして、OBは事業者として成功する人が多いのがフルールの特徴だ。
能力持ちは所謂ギフトだからだ。



「さぁ!最初の競技は玉入れだよ!みんな、能力を使いまくって豪華賞品を手に入れてね!じゃ、スタート!」
ブァー!!
理事長はノリノリで司会をしている。中立の立場だが、目立つ事が大好きな人だ。
そして何故かスタートの合図はホイッスルではなくブブゼラだ。チアホーンとも呼ばれており、普通はサッカー等の応援で使う笛だ。小さなラッパが幾つも付いているような形状をしている。


ボタンは手袋をそっと外し、籠を支えた。
全クラス一斉に籠めがけてどんどん玉を入れていく。
Sクラスはカーキ、Cクラスは青緑、Zクラスは黄緑の玉だ。

ボタンは懸命に籠を支える。その手がどんどん紫に光る。
「あれ?ウチのクラスの籠、低くなってない?」
モミジが真っ先に気づく。
「本当だ!他のクラスに比べて明らかに低くなってるぞ!」
カエデもみんなも気づいた。
ボタンは毒の能力で少しずつ腐らせて低くしていた。ただ籠が傾き、重さがボタンの全身に来ている。
「お、重い!」
傾く事で支えているだけで良かったのが、重さをボタンが抱えてしまっている。
「なるほど、考えたな!!」
「フクジュ先生関心してないで止めて下さいよ!ボタンちゃん辛そうです」
ルピナスが心配して声を上げたが、
「何故だ?辛い現状の中、明るい未来を夢見て人は足掻くんだぞ。その先どうなるかわからないのにな。ふふふっ」
「鬼畜・・・!」
「ボタン、能力を止めろ!!!!」
アスターが持ち前の大きな声を出すが、ボタンは耐えている。
「お、重い・・・!でも、まだ頑張れます!」
「ダメだ、聞こえてない!」
「おい、籠まで腐敗してきたぞ!」
カエデとポトスも心配そうだ。
「でも、もうほとんど入れちゃったよ」
ヤマブキは冷静だ。


腐敗はSクラスやCクラスにも進んでいた。
「くそっ!妨害工作か!?こっちの玉まで腐敗してきたぞ!」
「そうだな、やめさせよう!」
Cクラスの出場者がぼやくが、Sクラスの男の子が止めた。
「ほっときなよ。あれ、自滅する」
「イベリス・・・!」
「でも、どうしたら・・・!」
「かんたんじゃないかしら?」
「え?」
Sクラスの女の子が玉を拾う。
イベリスは急いで能力を使い予知する。指先が銅色に光り、見えた。女の子はわざとボタンに玉を当て、ボタンは怪我をしている。
「こうすればいいの
イベリスは咄嗟に投げようとした女の子の手首を掴む。
「そんな事しちゃダメだよ?」
「きゃっ!痛・・・!」
「おおっとこちらでは乱闘騒ぎか!?ケンカはダメだよ!」
実況中継している理事長にバレた。
投げたって途中で腐敗するの、わかってたのに!ボクはなんて予知を・・・!!
「・・・い、イベリス?」
「コレ、投げても腐敗されちゃうよ。キミは、玉を守ってくれる?」
「う・・・うん!」
イベリスは何時ものように笑顔で誤魔化した。
ファンの女の子で助かった・・・


その頃Zクラスでは、
「みんな、終了の合図がなる直前に、籠に一斉に入れよう!玉を集めて!僕の能力で盾を作るから!」
「わかった!!」
「頼むヒイラギ!」
年長者のヒイラギにみんなが従う。
ヒイラギはZクラスの大学2年生で年長者なせいか、クラス委員のような立ち位置だ。面倒見もよく仲裁も得意な平和主義者。
ヒイラギの指先が眼鏡の中の瞳と同じチョコレートのような柔らかい茶色に光り、醤油のような暗い茶色の髪がふわりと風を受けた後、ピタリとやみ、何も通さない盾が出来た。


「もう時間が無いよ!」
「後10秒だ!」
「今だ!一斉に入れるよ!!」

ブァー!!
「はい!時間です!数えますよ~」

籠には大量に入るか腐敗が進み、後には数個しか残らず最下位となりボタンは落ち込んでしまった。
「み、みなさんごめんなさい!わ、わたくしのせいで負けてしまって・・・!」
ボタンはショックで顔が上げられない。涙が零れてきたその時・・・
「ごめんね、フォロー出来なくて」
「重かったでしょ?大変だったね」
「他のクラスの玉も腐敗してたよ?凄い!」
「惜しかったな!」
「僕も、もっと早く能力使えば良かったよ」
ヒイラギもポリポリと頬をかく。
「皆さん、ありがとうございます!!」
チームメイトの励ましにボタンの申し訳ない涙は感謝と頑張った自分を誇らしく思える嬉し涙に変わってまた瞳が潤んだ。
「ふむ、アイディアは良かったのにまだまだ制御が足らないな」
「フクジュ先生台無しです!黙って!」
ルピナスは怒りながら小声で止めた。

得点係の黒髪の女性が点数をボードに付けた。
1種目ごとに1位3点、2位2点、3位1点の合計で優勝者が決まる。
Zクラス3位1点
Sクラス2位2点
Cクラス1位3点


ヒイラギ
バリア 盾の能力持ち  地属性
Zクラス大学2年生の男の子。年長者でクラス委員のような立ち位置。面倒見もよく仲裁も得意な平和主義者。
いつもニコニコしていて狐目で眼鏡かけてる。
醤油のような暗い茶色の髪に
チョコレートのような柔らかい茶色の瞳。
細身でいつもニコニコしている。
普段は温厚で縁の下の力持ち。いざとなるとリーダーシップを発揮する。



イベリスは得点を見上げてため息をついた。
「はぁ・・・2位スタートか。予想も最近よく外れるんだよな・・・」
「あ、あの!」
「え?」
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