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6月体育祭1

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6月に入った。みんなの制服もブレザーを脱ぎ、シャツのみや、白いベストなど、かろやかだ。それもそのはず、気温も高くこの時期は特に湿度が高い。そんな体力が落ちやすい中教室では・・・
「体!育!祭!だ~~~~~!!やっほい!やっほい!いやっほ~~~い!!」
「・・・知ってるよ」
「暑苦しい・・・」
教室でアスターは朝から元気だ。彼は運動神経が良く体育祭では注目を浴びるタイプだ。ヤマブキやポトスが真っ先に口を出す。2人は不満をすぐ口にする。
「ええい!うるさい!!」
耐えかねてモミジが能力を使い、少し離れたところから丸めたノートで叩く。コチラは不満があるとすぐ手が出るタイプ。
パコォンッ!
「ぃでっ!!・・・・・・なら、オレ梅雨の時期はずっと屋内にいる!」
「あーもう!アスター拗ねないの!体育祭楽しみなんでしょ?モミジもほっときな」
カエデが注意しても2人とも知らん顔だ。
「ケッ!」
「ふんっ!」

ルピナスが首をかしげる。
「・・・えっと、何でアスター君が梅雨に屋内にいる事が拗ねる事になるの?」
「ほら、ルピナスさんが不思議がってますよ?説明してあげて下さい」
クラスの中でもカエデやボタンは良心的だ。
「・・・オレの能力は炎だ」
「うん、知ってる」
ルピナスは頷く。
「アスターは極度の晴れ男なんだよ」
「体温も高いせいか濡れたものは直ぐ乾くし、火起こしも数秒。湿気った花火も不思議と元通り」
カエデやヤマブキが付け足す。
「凄いね!」
「ま、まぁな!俺が外に出ると雨が降りにくいから、雨具とか買ったこと少ないな!」
「んー、それはそれで大変じゃない?」
雨不足とかになりそう・・・
「・・・別に気にしてない。みんなそれぞれに特徴があるからな。それぞれ便利な事も、苦労してる事も違うって事だ」
「なるほど・・・」
みんなうんうんと頷いている。
「ま、前にボタンちゃん、霊感あるって言ってたけど、それも能力なの?」
「能力の影響ですわ」
ボタンはにっこりと笑って答えた。
「ふ、ふ~ん」
ルピナスはお化けが大の苦手だ。
「要は上手く付き合って正しく使えって事だ」
「先生!」
いつの間に・・・
「・・・って事で今回のホームルームは体育祭でみんながどの種目に出場するかを決めるぞ~」
黒板に書かれていく種目は、
借り物競争
玉入れ
パン食い競争
二人三脚
棒倒し
クラス選抜リレー、か・・・
「そして、最後、全員参加の大縄とびだな」
「面倒・・・」
ヤマブキが真っ先にダレる。ヤマブキは頭脳労働タイプだ。

「はいはーいアタシ玉入れ!」
モミジが早速手を上げる。
「能力使っていいんでしょ?飛んで玉を運んであげるわ!1位間違い無しよ!」
「え?モミジ、一緒に二人三脚出ないの?」
カエデが驚いた顔をする。
「そ、そっちも出るわ!もちろんよ!」
「やる気があるのは良いが、1人1種目だぞ」
「え?」
「・・・どうする?」
先生に止められて、モミジは一瞬固まる。カエデは試すように詰める。
「に、二人三脚にカエデと出るわ!」
「・・・うん、なら楽勝だ」
「・・・うん!楽勝よ!」
モミジとカエデは二人三脚にした。先生が黒板に書く。

「流石双子だな!俺様は棒倒し希望だ!」
ポトスが腕組みしながら頷く。体格が良いので力勝負は得意だ。

次にアスターが手を上げる。
「オレ、クラス選抜リレー!あ、カエデ、パン食い競争のパンって今年は何か知ってるか?」
「俺が小さいホットドッグ作るよ」
「じゃあ、ぼくが出る!カエデのホットドッグ食べたい!」
ヤマブキが目を覚まして食い気味に手を上げる。彼の大好物だ。立ち上がった拍子にいつも被っているパーカーのフードが落ちた。
「ヤマブキもやる気になったな!」
「うん、とても楽しみ・・・」
ヤマブキは長い前髪から瞳を輝かせた。

大体決まってきたので残りを確認する。見事みんなの希望はバラバラだ。
「・・・後はルピナスとボタンだね」
「残った競技は、借り物競争と玉入れだな!」
カエデとポトスが黒板を見た後に2人を見る。
私はボタンちゃんと顔を見合わせる。どうしようかな?
「ルピナスは借り物競争が向いてるだろうな」
先生が提案してきた。
「そうですか?」
「あぁ、能力的にな。俺は騎馬戦があったらお前を大将にしてる」
「え?私、能力あるんですか!?」
「無意識に使ってる。もしお前が大将だったら誰にもやられずに勝てたぞ。残念だったよな」
先生はニッコリと笑う。出たドS
「そ、そこまで!?私の能力教えて下さい!」
「それは自分で気づけ。・・・あえて言うなら、1人では何も出来ないな」
フクジュ先生はニヤニヤしてる。
「・・・わかりました。私、借り物競争出ます!」
私の能力を知る良い機会だ!先生の笑いは怖いけど、大衆先導とかかな!?カッコいいかも!
先生は確認するようにボタンを見た。
「じゃあ、ボタンは玉入れで構わな
「あ、あの!わたくし、玉入れで籠を押さえている人やりたいです!」
「なるほど・・・。何か考えがあるんだな?」
「はい!」
フクジュ先生が確認すると、ボタンは力強く頷いた。





体育祭当日。空はカラッと晴れている。
雨の心配はまるで無い。
一昨日までどしゃ降り。昨日は曇り。今日は快晴だ。土が柔らかすぎるのも良くないらしい。
「調整も難しいんだぞ!」とアスターはドヤ顔だ。
「ま、アスターだもんね」くらいの褒め言葉だが、付き合いが長いからこその言いたい事が言い合える仲だ。信頼もされている。

選手宣誓はポトスが選ばれた。みんなの気合いが入る。

選手宣誓はポトスが選ばれた。みんなの気合いが入る。

「よっし!じゃ、フルール学園の大・体・育・祭。開幕~!!」
パァン!!
理事長が何処からか出したクラッカーを鳴らして楽しそうに開催を宣言する。
ルピナスは大体育祭ってなんだろうと思いながら、盛り上がるみんなの歓声を遠い目で感じてしまうので、大衆先導は自分の能力では無いと思った。


準備体操も終わり、最初の競技は玉入れだ。
ボタンが緊張した顔で向かっていく。
クラスのみんなで小さく激励すると、ボタンは嬉しそうに笑った。誰かさんが扱いの違いにブーたれてはいたが・・・。

体育祭はクラス対抗でSクラス、Cクラス、Zクラスの3チームで勝敗を競う。優勝チームには豪華な景品が贈られるという事でみんな気合いが入っている。
去年は屋形船の食事券をクラス全員分と、毎年大盤振る舞いだが、優勝クラスが決まるまで内容は秘密にされているから不思議だ。噂では理事長のコネらしいが?

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