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選べない未来
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「やあ、リーシュ。帰っていたんだ早かったね。ただいま」
屋敷に帰った時には全身ビショビショに濡れていた。
タオルは乾いたまま、なんとなくポケットの中に入ってる。
「何処にいたんです?びっしょりじゃないですか!?どれだけ外にいたんです!?」
「リーシュ・・・」
「ユージュアル?どうしたんですか?」
少し元気になっていてホッとした。やっぱり僕は・・・
「いや、キミを見てると落ち着いた。ちょっと反省してただけだよ。流石にやりすぎ
「風邪ひいちゃ大変です!ロジー!ロジー!!」
「まって、ちゃんと聞いて!君が本当に怒るとよそよそしくなるの知ってるから傷つく」
「・・・わかりました」
リーシュは大きなタオルだけを渡した。
ユージュアルはタオルを受け取ったままで言葉を紡ぐ。
「・・・ベッドも全て無事だよ。シーツは破れてしまったけど。本当に申し訳ない事をした。彼を試したつもりだったけど、まさか、ここまでするとは思わなくて、思わずやりすぎてしまった。すまない。彼にも謝るよ」
「じゃあ、シャズさんを認めてくれるんですね!?」
「あぁ。勿論だよ」
「ありがとうございます!シャズさんはとってもいい人ですよね!」
「・・・」
「でもどうしてそこまでしたんですか?」
「嫉妬したんだよ」
「嫉妬?」
「あぁ。シャズ君に嫉妬したんだ。僕が君を好きだから」
「ユージュアル?」
「でも、君が想う人は僕じゃない。彼だから」
「ち、違いますよ!」
「違わないよ?」
「どうしてそう思うんですか?」
「どうして?ずっと君を見ていたからだよ。婚約者だからじゃない。僕はずっと、はじめてあったあの時からキミが好きだよリーシュ!」
「ユージュアル、私は・・・!」
「悲しまなくていい。僕の幸せは君が笑顔でいる事だ」
「ユージュアル?」
「たしかに僕は彼を認めた。でも、それはこの屋敷に必要というだけだ」
「・・・?どういう事ですか?」
「彼を愛してはいけない。彼をパートナーに選ぶのはやめた方がいい」
「ち、違います!!」
「・・・自分の気持ちに気づいていないだけさ」
「私は、ただシャズさんに側にいてほしいだけです!」
リーシュは俯きながら顔を覆った。
「それだけだと誤魔化すのもいいかもしれないが、いつまでも続けられる訳じゃない。ずっと側にはいられない。無理な話だよ」
「誤魔化すなんて、ユージュアルまでそんな事を言うんですか!?」
リーシュは珍しく声を荒げてユージュアルを見上げる。怒りよりも絶望感の方が強い。
ユージュアルは視線を窓に移した。先ほどまで雨だったのに、雲の中で日が沈んだ事で気温が下がり、雪になってきている。この分だと積もる可能性もある。
「僕は心配だ。君が彼を選んだら、彼はどんなに苦労するか。その逆を君は選べないだろう?」
「選べ・・・ない?」
「あぁ、どちらにしても選ぶことを許されない未来だ」
「許されない・・・未来?」
「キミは一人娘なんだよ?マラクス様の後継ぎとして僕は小さい頃からそう育てられてきた。彼にマラクス様の後継ぎとなるのは到底無理だよ」
「そ、そんな未来望んでないです!」
「・・・否定しても無駄だよ。キミは案外嘘つきだね」
「嘘じゃないです・・・!」
「じゃあどうして泣いてるの?」
「え?」
ユージュアルはリーシュの涙を指先で優しく拭き取る。
床に敷いてある絨毯に溢れた雫を見てようやく理解した。最近こんな事ばかりだ。目が痛い。
「ち、違います。これは、混乱しているだけです!怒りと、嬉しさと、安心とがごちゃごちゃになって!」
「じゃあ、彼を愛したいのに僕に否定されて悲しいからじゃないんだね?」
「違います!!」
「本当かな?まだ信じられないから証明してほしいな」
「・・・わかりました。証明します。卒業式の前日は私の誕生日です。その日に・・・」
ユージュアルはじっとリーシュを見つめて待つ。
「ユージュアル、私と結婚してください」
屋敷に帰った時には全身ビショビショに濡れていた。
タオルは乾いたまま、なんとなくポケットの中に入ってる。
「何処にいたんです?びっしょりじゃないですか!?どれだけ外にいたんです!?」
「リーシュ・・・」
「ユージュアル?どうしたんですか?」
少し元気になっていてホッとした。やっぱり僕は・・・
「いや、キミを見てると落ち着いた。ちょっと反省してただけだよ。流石にやりすぎ
「風邪ひいちゃ大変です!ロジー!ロジー!!」
「まって、ちゃんと聞いて!君が本当に怒るとよそよそしくなるの知ってるから傷つく」
「・・・わかりました」
リーシュは大きなタオルだけを渡した。
ユージュアルはタオルを受け取ったままで言葉を紡ぐ。
「・・・ベッドも全て無事だよ。シーツは破れてしまったけど。本当に申し訳ない事をした。彼を試したつもりだったけど、まさか、ここまでするとは思わなくて、思わずやりすぎてしまった。すまない。彼にも謝るよ」
「じゃあ、シャズさんを認めてくれるんですね!?」
「あぁ。勿論だよ」
「ありがとうございます!シャズさんはとってもいい人ですよね!」
「・・・」
「でもどうしてそこまでしたんですか?」
「嫉妬したんだよ」
「嫉妬?」
「あぁ。シャズ君に嫉妬したんだ。僕が君を好きだから」
「ユージュアル?」
「でも、君が想う人は僕じゃない。彼だから」
「ち、違いますよ!」
「違わないよ?」
「どうしてそう思うんですか?」
「どうして?ずっと君を見ていたからだよ。婚約者だからじゃない。僕はずっと、はじめてあったあの時からキミが好きだよリーシュ!」
「ユージュアル、私は・・・!」
「悲しまなくていい。僕の幸せは君が笑顔でいる事だ」
「ユージュアル?」
「たしかに僕は彼を認めた。でも、それはこの屋敷に必要というだけだ」
「・・・?どういう事ですか?」
「彼を愛してはいけない。彼をパートナーに選ぶのはやめた方がいい」
「ち、違います!!」
「・・・自分の気持ちに気づいていないだけさ」
「私は、ただシャズさんに側にいてほしいだけです!」
リーシュは俯きながら顔を覆った。
「それだけだと誤魔化すのもいいかもしれないが、いつまでも続けられる訳じゃない。ずっと側にはいられない。無理な話だよ」
「誤魔化すなんて、ユージュアルまでそんな事を言うんですか!?」
リーシュは珍しく声を荒げてユージュアルを見上げる。怒りよりも絶望感の方が強い。
ユージュアルは視線を窓に移した。先ほどまで雨だったのに、雲の中で日が沈んだ事で気温が下がり、雪になってきている。この分だと積もる可能性もある。
「僕は心配だ。君が彼を選んだら、彼はどんなに苦労するか。その逆を君は選べないだろう?」
「選べ・・・ない?」
「あぁ、どちらにしても選ぶことを許されない未来だ」
「許されない・・・未来?」
「キミは一人娘なんだよ?マラクス様の後継ぎとして僕は小さい頃からそう育てられてきた。彼にマラクス様の後継ぎとなるのは到底無理だよ」
「そ、そんな未来望んでないです!」
「・・・否定しても無駄だよ。キミは案外嘘つきだね」
「嘘じゃないです・・・!」
「じゃあどうして泣いてるの?」
「え?」
ユージュアルはリーシュの涙を指先で優しく拭き取る。
床に敷いてある絨毯に溢れた雫を見てようやく理解した。最近こんな事ばかりだ。目が痛い。
「ち、違います。これは、混乱しているだけです!怒りと、嬉しさと、安心とがごちゃごちゃになって!」
「じゃあ、彼を愛したいのに僕に否定されて悲しいからじゃないんだね?」
「違います!!」
「本当かな?まだ信じられないから証明してほしいな」
「・・・わかりました。証明します。卒業式の前日は私の誕生日です。その日に・・・」
ユージュアルはじっとリーシュを見つめて待つ。
「ユージュアル、私と結婚してください」
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