上 下
18 / 42

君の変化

しおりを挟む
その日、夕食を終えたリーシュをロジーは呼び止めた。
「リーシュ様、お喜び下さい!ユージュアル様がコチラにお戻りになるそうです」
「ユージュアルがですか!?お仕事は大丈夫なんです!?」
「はい。お仕事の関係で、当分コチラで過ごす様です」
「そうですか」
リーシュは窓から景色を見た。
シャズが屋敷に来たのは春の終わりかけ、ニトアとビトリーが泊まったの真夏の休日
季節はいつの間にか太陽が落ち着きはじめている。今年は特に色んな事があった。
まだ胸が痛いけど、シャズはまだこの屋敷で働いている。いつか本当の意味で離れなくてはいけないのだろうが、今はまだこの先輩後輩であり、雇い主と従業員でもある不思議な関係を続けたいとリーシュは願った。

以前のようなじゃれ合いこそ無いものの、学校でシャズはリーシュをただの仲の良い後輩として扱っていた。お昼休みどうしようと考えていたリーシュはとても嬉しかったが、以前とは違う見えない壁を感じて切なさで泣きそうになったが、側にいる事を許されているだけマシだった。エンスも加わり仲良く一緒にお昼を過ごしている。
エンスはとてもしっかりしていて、リーシュが言葉に詰まるとフォローしてくれたり、からかわれていると、逆にからかい返したりして、リーシュは間違えてお姉さんと呼んでしまう程仲良く過ごせている。
リーシュはシャズと知り合う以前より、ずっと学校が楽しくなった。



街の木々が紅葉を始めようとしている頃、学校から帰り、家の中に入ったリーシュはいきなり抱きしめられた。一瞬シャズかと思ったが、優しい声と懐かしい匂いがして気づいた。
「リーシュ!久しぶりだね!元気だったかい!?」
「ユージュアル!お久しぶりです!」

そこにタイミングよくシャズが帰ってきた。どうやら知り合いらしい。それも、かなり親しく見えるが、庭のここからだと声は聞こえない。
「リーシュ様の婚約者で、幼馴染のユージュアル様です」
ロジーがいいタイミングで話しかけてきた。
リーシュに婚約者がいる事はもちろん、あんな風に気を許せる相手がいた事に少々驚いた。
「だからか、最近ポークスのおやっさんがスゲ~ソワソワして、張り切ってたのは」
「シャズさん?お顔が怖いです」
「俺は元々目つき悪りぃよ!」
「存じてます。しかし、
「うるさい」
「アイツ、一番嫌いなタイプだ」
「お話をされていないのに決めつけるのはいかがなものかと」
「第一印象だよ」
いやにも爽やかで、キラキラオーラ背負って好青年に見えるけど、全く隙が無い。常に仮面を被ってるような感じだ。
「アイツ、絶対腹黒だぜ。ついでに策士」
「確かに、策を張り巡らす方ですが、はらぐろ?とはどういう意味ですか?」
「ロジーは、本当に世間の言葉に弱いな」
「ち、知識なら負けませんよ!?」
「ハイハイ」
ロジーとのやりとりでイライラはおさまった。
リーシュとユージュアルは和かに話している。俺は純粋に思った。アイツは嫌いなタイプだけど、2人はお似合いだって

「元気そうで驚いたよ!僕のお姫様はもっと儚い雰囲気だったからね」
「ちゃんとご飯食べられるようになったんです!」
「手紙にも書いていたねシャズさんって何処にいるの?」
「まだ会えないと思います。ユージュアルがいけないんですよ!?予定より随分早いじゃないですか!」
リーシュは少し睨む。
「つれないね~、急いで仕事を切り上げて会いに来たのに、僕に早く会うより、シャズ君がバタバタするのが嫌なの?」
「もう!ユージュアルもヒドイです!」
「も、ね」
「?さ、早く中でお話しましょう!」
「・・・・・・」
リーシュは屋敷の中へと誘うが、ユージュアルは動かない。ポカンとしているようだ。
「ユージュアル?」
「嫌、明るくなったなぁ、と噛み締めていたんだよ。君が僕の手を引いて前に立つなんて考えられなかったから」
「そうですか?」
「うん。是非ともシャズさんに会いたくなったよ」
「ハイ!とっても美味しいんですよ!」
リーシュは手を引いて微笑む。
「まるでその言い方だと彼を食べるみたいだね」
「んもう!ユージュアル!」
ユージュアルは口元を隠して、身体を震わせて笑った。リーシュは少し赤くなりながらユージュアルを揺さぶっていた。


「さ、お急ぎください!ポークスがろくろ首になってしまいますよ!」
「はいはい」
珍しくリーシュより早く終わった俺は、真っ直ぐ帰ろうとしたが、ポークスの親父さんに買い出しを頼まれて、帰ってきたところだった。リーシュにあんなに仲が良い奴がいたなんて意外で足が止まってしまっていた。気が進まないけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

処理中です...