平原圭伝説(レジェンド)

小鳥頼人

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2巻

8_人望もカリスマも先天的な才能が全てかもしれない ②

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    ♪

「でさぁあそこの店が――」
「マジですか。田村さんもでしたか」
「チョウドヨカッタ! 二人揃ッテオル!」
 出会いの宝庫、それは校内の廊下。
 大して探さずとも永田大地と田村を見つけ出すことに成功。これも日頃の行いが素晴らしいからだな。
「俺たちにとっては全然ちょうどよくないんだが?」
 永田大地はげんなりした表情だ。ただでさえ不細工なのに余計に醜くなってるぞ。テロだからそのツラで外歩くなや。
「聞ケェイ! 我輩ハミスコンニ出場スル!!」
 大声で叫んで二人に指を差した。周囲の生徒が不快そうにこちらを見てきたけど、きっと永田大地に向けた視線だろうな。うんうん、気持ちは分かるぞ。俺も同じ感情だからな。
「…………え? お前マジ? 身の程を知れっての。てか聞き間違いだよな?」
 永田大地は耳に手を当てて聞き間違いをアピールしてきやがった。
「ダ・カ・ラ~、平原圭ガ今年ノミスコンデ優勝スルト言ッタンダヨ」
 俺は奴の耳元で再度宣言してやった。鼓膜を揺らしてしかと聞き取れるようにな。
「一回目よりも発言内容酷くなってね? あとお前口臭いぞ」
 一回目よりって、さっきのもバッチリ聞こえてたんじゃねーか。あと毎日朝晩歯磨きしてる俺の口が臭いはずがない!
「知ッテルンダゾ! ヲ前、俺ニ負ケルノガ怖インダロ?」
 そんな現実を突きつけられた日にゃ、お前はもう金輪際俺をバカにできなくなるからな。
「俺もイケメンではないけどさすがにお前には勝てる自信がある」
 なんとまぁ、たいそうな自信だよ。もはやナルシストの域だな。
「俺ニ勝テタラ超絶美少年ッテコトニナルゾ」
「んなわけないだろ。自分の顔を人生で一度も見たことないのか?」
「毎日見トルワ。レスル芸術作品ヨ」
 何時間でも、何日でも、なんなら永遠に眺めてられる美しさに仕上がってるんだわ。人類史上最高傑作なんだわ。
「お前の思考回路はある意味芸術だよな」
「ソウ素直ニ褒メルナヨ。照レルダロ」
 永田大地にしては珍しく俺を賞賛しょうさんしてきた。明日は大雪か? しかし俺はほだされないぞ。
「一切褒めてないんだけどそれすら分からないとは」
「トイウワケデ田村! 俺様ハヲ前ニ勝利予告ヲスル!」
「おおっと。ここで俺に来たかぁ」
 これまで俺と永田大地のやりとりを静観していた田村が口を開いた。
 永田大地なんぞ眼中にない。俺の真の目的はこのモテチャラ男たらし魔人田村にミスコンという女性からの支持を目に見える投票形式で競える争いで勝利することだ。
「不戦敗シタクナケレバヲ前モ参戦シロ!」
 俺は田村の顔に指を差して参戦を促した。
「言われなくとも既にエントリーしたよ」
 ほほう。ずいぶんと自惚うぬぼれてるじゃねーか。それでこそ倒し甲斐があるって話だぜ。
「話ガ早イナ。捗ルゼ」
「女子たちが出ろ出ろとはやし立ててね。渋々出るよ」
「アッフーン」
 なーに女子に推薦されたから仕方なしに、みたいな言い回ししてんだよ。「俺はがっついてないけど女子にモテすぎて~」とでも主張したいのか? 品なさすぎだろ。
「そう! 翔くんが出場すれば優勝間違いなし!」
「他の追随ついずいは許さない!」
「アンタなんかが翔君の相手になるわけないっしょ」
「出タナ!? 田村親衛隊!」
 どこにいたのか、唐突に田村親衛隊を名乗る里元、永野、小田が出てきた。三人は田村を隠す形で奴の前で仁王立ちしている。
「つまり、アンタは翔君の足下にも及ばない。優勝の芽はないのよ!」
 みさきは俺に指を差して断言してきた。人様に指を差すとか行儀悪いぞ。どういう育ち方してんだよまったくよぉ。
「ミサキィ。ソロソロ素直ニナロウゼィ。俺ニ惚レテルダロォ?」
 俺が本命で田村はキープって既に気づいてるんだぜ?
 本来ならみさきの肩を抱いて耳元でささやいてやりたいところだが、そんなことをしたらさすがのみさきも俺にメロメロになって失神してしまう。それは俺も困るのでささやきだけにとどめておいた。
「相変わらず頭おかしいわね。さっさとくたばってよ」
 ふぃー。未だ素直になれず、か。身近にいる大切な存在には早く気づかないといつの間にか失ってる事態にもなりかねんぞ。
「アヤカ、ユウコ。ツンデレノミサキニナントカ言ッテヤレヨ」
 今日日きょうびツンデレは流行ってないんだよ。
 俺は二人にみさきへのフォローを求めたものの、
「「………………」」
 はいフルシカト。揃いも揃って照れちゃって何も言葉にできずってか。まさに好き避け。あまりにも魅力がありすぎるとこんな弊害もあるんだよな。
 俺がやれやれと前髪を掻くと、

「おっタム、探したぞ」
「小和田、どうした?」

 何やらロン毛のチャラそうな男が田村に声をかけてきたぞ。今巻は新キャラが多いな。
「貴様ハ何者ダ!? 名ヲ名乗レ!」
「俺は三年の小和田こわださとし。バスケ部所属」
 俺が指を差して自己紹介を促すと、長髪男改め小和田が自らの髪を撫でながら素性を明かした。
「コレ以上無駄ニ新キャラヲ出スナヨ」
「んなこと俺に言われてもな」
 本巻でどんだけキャラ増やしてんの? 作者はマジで何考えてるんだ? 無意味に登場人物だけ増やすのは駄作の烙印らくいんが押されるんだぞ。分かってるのか? 分かってないだろうな。
「そんなお前は二年の問題児、平原圭だろ」
「イヤァ有名人ハ辛イゼ。ミンナガ俺ノ名ヲ知ッテルカラナ」
 著名人はどこにいてもオーラで目立つし迷惑パパラッチからストーカーされてうんざりするんだぜ。
 一方で俺はほとんどの有象無象うぞうむぞうの生徒どもの名前を覚えてなくてごめんな。
「そりゃあんだけ悪目立ちしてりゃな」
 わざわざ「悪」をつけるあたり、コイツも俺に嫉妬していると見た。やれやれ、どこまでも小物のやっかみほど汚く醜いものはないな。
「それよかタム、ミスコン出るんだってな! 頑張れよ! 俺もサポートするからさ」
 俺はどうでもいいかのように田村と会話をはじめる小和田。おい、主人公の俺を差し置いて勝手に雑談を進めるなよ。俺が空気化するじゃねーか。
「サンキュ。今日は部活休みだしファミレスでも行くか?」
「悪いな。今日はお母さんとスーパーに買い物行くんだわ」
「そっか。いつも仲がいいな」
「高校生ニモナッテママント買イ物ッテマザコンカヨ」
 まぁ男は基本マザコンって言うし、仕方ないことなのかもしれないな。
 と、ここで小和田が、
「母親を大事にして何が悪い? お前は母親と仲悪いのか?」
 なんか急に喧嘩腰になりやがった。なんだコイツ?
「良イニ決マッテンダロ! 俺様ダッテオ母サン大好キダワ!」
 母は偉大なり。もちろんお父さんとも良好だぞ。
「ならマザコンとか茶々入れてくるんじゃねーよ」
「フッ、先輩ノクセシテスグカッカスルノハ器ガ小サイ輩ナリ」
 こいつの主張は分かる。が、バスケ部所属の段階で相容あいいれないんだわ。
「なんだと!? お前は本当に年上への礼儀がなってないな!」
「プププノプッ。タマタマ一年早ク生マレタダケノ奴ニ礼儀ッテ」
 あまりにも滑稽こっけいすぎて思わず吹き出してしまった。ついでに屁も飛び出しちまった。
 ギャグとしか思えない発言を必死こいてするのはやめてくれよ。今時クサい上下関係なんてシラけるだけだっつーの。
「てんめえ――!」
「小和田、落ち着きな」
 頭に血が上った小和田を見た田村がすかさず制止した。
 小和田はキレやすい性格みたいだな。逆に好都合。何かあればコイツから冷静な判断力を奪い取って田村の足を引っ張ってもらおう。
「す、すまん。平原が生意気すぎてつい」
「小和田さんは相変わらず気が短いですね」
 永田大地が小和田の肩を揉みながらなだめている。フン、無能な先輩にゴマすって何になるってんだ。実に下らない。
「で、圭よ。俺も田村さんをサポートするから」
 当然ちゃ当然だが、永田大地も田村の味方につくと宣言した。
「ホホウ。チュマリ、田村ヲ倒セバヲ前ニモ勝ッタコトニナル、ト」
 それはおあつらえ向きだな。一回の勝負で二度美味しい。一石二鳥だ。
「私たちも翔クンを手伝うよー!」
 からのこの流れ。田村親衛隊の女三名も俺ではなく田村の味方という血迷った選択をしたのだった。
「俺ガ勝ッタラ三人マトメテ俺ト付キ合イタマヘ」
 お前らが崇拝すうはいしてる田村に勝つ、それ即ち俺は田村よりも更に魅力的なオスということになる。
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