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1巻
3_愛情とは常に上書きされるもので不変性はなし ①
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さてと、本日の授業も終わりだ。今日は部活もない。
あれ? 説明してなかったか? 俺は陸上部所属のエースだ。
まぁ部活についての話はまたいずれってことで。
ちなみに葵は吹奏楽部所属で今日も今日とて練習に励んでいる。
吹奏楽部は日曜以外は毎日稼働してるからご苦労なこった。そのせいで職員会議とかで吹奏楽部が休みの時くらいしか葵と下校できない。 あぁ、なんという運命のイタズラ! 神様なんざ死んじまえ!
ってなわけでとっとと帰るか――
ん? あれは……。
「でさぁ、あいつがまたあそこでやらかしちゃったんだよ」
「はっ、バッカだねーあいつも」
楽しそうに会話しながら帰る二人組。
って、永田大地じゃねえの。もう一人は――誰だ?
永田大地の相方は身長が低く小太りで、ダルマという表現が似合う男子生徒だ。
ニキビ顔で目も細く鼻は潰れており、厚い唇でまさにキモオタそのもの。
「プッ、ナンツールックスヨ。俺ガアイツダッタラトックニ自殺シテ人生リセットシタルワ」
拝啓、お父様、お母様。俺をイケメンにしてくれてありがとう。
うし、ちょっくら挨拶参りかましてやっか!
二人組の元へと駆け出し、背後から声をかける。
「ヘイヘイ! 永田大地! オメートボトボ歩イテンジャネーヨノロマチビスケェ! アトヲ前! ヲ前ダヨクソデブ! ソンナ外見デヨク表出歩ケルナァ! オトナシク自宅ニ引キコモッテゲームデモシタラドーダ? オォ?」
「こんな外見で悪かったな……で、何か用かよ」
デブダルマは不快そうな面で俺に反応してきた。うはは、効果抜群、気持ちいい。
「ブハハ、サッサトダイエットシロヨクソデブダルマァ! デュフデュフデュフデュフ」
「この野郎――殴らせろっ」
「チョ、チョット待ッタァ! 暴力反対ー!」
デブダルマはプルプルと拳を震わせている。相当気にしてるところを突かれたようだ。俺に向かって拳を振り上げてくる。
「ストップ、ストーップ」
永田大地がデブダルマを制した。
お? おお? こりは一体全体どういった風の吹き回しですかね?
「大原、圭を殺したいほどにウザったいと感じただろう。けど、ここで殴ったらお前の手が汚れてしまうぞ」
「でもよ、言われっぱなしは――」
「いいから落ち着け――おい圭!」
永田大地は大原って名字らしいデブダルマを落ち着かせてこちらに近づいてくる。
「いくらなんでも言いすぎだ。他人の外見をむやみに貶すんじゃねえ」
「イヤーイヤイヤーイ、俺ハ本当ノコトヲ言ッタダケダペロリンチョメリンパ? 言ワレタクナイナラ、ソノデブダルマガダイエットナリ整形ナリスリャアイイダケノ話ジャネーノ?」
「クッ……」
「大原」
「……分かってる」
「なら俺からも一つ。圭、お前の顔はゴリラっぽいぞ」
「ハァアアアァァ!? 永田大地、貴ッ様ァァ!? 言ッテ良イコトト悪イコトガアルンダヨ!」
「いやいやいや、言ってることが全然違うじゃんか!?」
永田大地の横でデブダルマが吠えてるけど、そんな小物はどうだっていい。
問題はコイツよ。相も変わらずこの俺をおちょくりやがってからにして、タダで済むと思うなよ!
「事実を言ったまでだ。その程度でキレるとか、小さい器だな」
「オーー! ハァハァ! オーー! ハァハァ! 永田大地! 許サン! 許サン許サン許サーーーーーーン!!」
「うお? ついに頭のてっぺんまで血が回りました? これは大変なことで。茹でダコですね」
「テンメエェェ! 大地ニ地割レヲ入レテシンゼヨーーーーーーーーッ!!」
俺は永田大地の腹部めがけて頭突きを開始させる。
コイツの臓器、全て破裂させてやるよ!
「クッハハハ、今更泣イテ謝ッタッテ遅イゼ? クタバレカス野郎ーーーーッ!」
これで目障りなハエがこの世から一匹いなくなる!
俺の頭が永田大地の腹部に直撃する――直前に奴はかわして俺の背後につく。
「手を出したな? これで俺も心おきなくお前をぶっ飛ばせるな」
永田大地は不敵な笑みを浮かべる。
え? どういうこと?
奴の台詞を理解できずにいると、突如背中に強い衝撃が走った。
それは痛みという名の衝撃で。
「アガーーーーーーーーーーーーーーッ!?」
「これは暴力じゃないぞ。正当防衛な。先に手を出してきたのはそっちなんだから」
「ヲ前ガ挑発シタカラダロウガ!」
なんという無茶苦茶な言い分だ! 異議を申し立てる! こんな言い訳がまかり通っていい世の中であってはいけないんだ!
「元々はお前が大原を悪く言ったからだろ。大原に土下座で謝罪。ほら早く」
永田大地はうつ伏せになって倒れている俺の背中に足を乗っけてくる。おいおい、土足で踏むなよ! 制服が汚れるだろうが!
「どうした? 早くしてくれよ。貴重な放課後ライフをこれ以上お前なんかのために潰したくないんだけど?」
「グッ……コンナコトガ許サレテイイハズガナギャアアア!!」
か、かかとをグリグリ回してきやがった! 背中を抉るんじゃねえ!
「いいから早くしろ」
「元ハト言エバ大原ガデブダカラ悪インダロ! コレヲ機ニ痩セロブタ野郎ガガガガガガ!!」
「いつまで待たせるんだ、あぁ?」
「ス、ススススゥームィムァスゥエェーンデュエーシータォー」
俺は渾身の土下座と謝罪を繰り出した。
このドブネズミめ、後で見てやがれ!
「……こう言ってるけど、どうする?」
「もういいよ。これ以上関わりたくないからとっとと帰ろうぜ」
「そっか。おい、許してもらえてよかったな。優しい大原に感謝しろよ」
永田大地は俺の背中から足を離し、デブダルマとともに歩き始めた。
「ありがとう、大地」
「ん、バカキングの圭にはあれくらいやらないと足りないからな」
ヘッ、くっだらねー友情ごっこしてんじゃねえぞウジムシチビブラザーズが。今すぐマンホールの穴に落ちろ! そのまま海まで流れて波にさらわれて海の藻屑となれ! ケッ!
虚しくなってきたので俺も下校を再開することにした。
駅までの道程を歩いていると、ふと百円ショップに目がいった。
通学中はいつもここを通ってるけど、この百円ショップに入ったことがなかったんだよな。
そう考えたら急に興味がわいてきた。好奇心が強いのはよきかなだぜ。
なら行こう、うん。
軽く自答した末、店内に入ることにした。
「ウォーウォー、ナカナカ品揃エガ豊富ジャネーノ」
店内の規模は通常のコンビニの三倍程度。決して大きいとは言えないけれど、それなりの数の商品が並べられていた。
お菓子や飲料、文具から衣類まで、幅広い種類の品物を取り揃えている。
特にこれといって買いたい物もなかったけど、単にウィンドウショッピングを楽しむのも悪くない、そう思えた。
おっ、350ミリリットル缶ジュース二本で百円ちょいとはお買い得だな。節約するにはうってつけだ。
生憎、裕福な家庭に生まれた俺に節約なんて縁がないんだけどな!
飲料コーナーを堪能したので、次なる舞台である衣料品コーナーへと移動する。
Tシャツやネクタイ、靴下などが並んでいる。百円ちょいで売ってる衣類って質感どうなんだろうっていつも思うけど、実際に使ってみたことはないんだよな。
まぁ俺は金持ちなので? こんなみすぼらしい代物を身に着ける機会などないんだけれどな!
と。
「――ン? ンン!?」
ざっと衣料品を見終わったので文具コーナーに向かおうとしたが、思わず足を止めた。
当然だ。俺の視界に映ったものは、これまでに見たことがないくらいに美しかったのだから。
その正体は美女、絶世の美女だった。あんなお宝を見つけておきながら、そのまま移動などもってのほか。
抜き足差し足忍び足で美女の元まで近づいてみた。
推定二十代前半、身長は俺より5センチ前後低い程度。茶髪。顔もすごく綺麗でスタイルも抜群だ。まぁ絶世の美女だしな。
「ゴ……ゴボ……ゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボ」
興奮のあまり、俺は口から泡を吹いていた。
「ヌオオオオオオオオオッ!! 世界ハナンテ美シインダーーーーーーーー!!」
「な、なに!?」
いけね! つい勢いで叫んじまった。
美女が不快そうな表情で振り向いてきたけど、電光石火の早業で商品棚の横に隠れたので見つからずに済んだぜ。
と、ここでよからぬ展開になった。
「今の叫び声は何?」
なんと謎の男が美女の元までやってきて、あろうことか美女に話しかけたのだ。
「分からない。ビックリしたぁ」
あああ!! き、ききき貴様はデブダルマの大原! どうして美女の隣で美女に話しかけている!?
ま、ままままさかその、つ、つつ付き合ってるんじゃねーだろうな!?
ひとまずアイツらに見つからないようにひっそりと店内から出た。
「シッカシスッゲーツーショットダッタナ」
オレンジ色に染まる空に手をかざしながら呟いた。
まさかデブダルマがあんな美女とお近づきになってるとは、世の中謎が多すぎるぜ。
ま、美女も俺の存在を知れば、超高速でデブダルマから乗り換えてくるに違いない。
それにしても本当に綺麗な女だった。興奮が醒め止まなくて困るぜ。
あんな美女と付き合うことができたら――
と、ここで葵の顔が脳裏に浮かぶ。
何を考えているんだ。俺には既に葵という最高の彼女がいるじゃないか。それ以上一体何を望む?
でも、あんな美女二度とお目にかかれないかもしれないんだぞ。
「コノチャンス、コノママ逃シテイイモノカ」
あれ? 説明してなかったか? 俺は陸上部所属のエースだ。
まぁ部活についての話はまたいずれってことで。
ちなみに葵は吹奏楽部所属で今日も今日とて練習に励んでいる。
吹奏楽部は日曜以外は毎日稼働してるからご苦労なこった。そのせいで職員会議とかで吹奏楽部が休みの時くらいしか葵と下校できない。 あぁ、なんという運命のイタズラ! 神様なんざ死んじまえ!
ってなわけでとっとと帰るか――
ん? あれは……。
「でさぁ、あいつがまたあそこでやらかしちゃったんだよ」
「はっ、バッカだねーあいつも」
楽しそうに会話しながら帰る二人組。
って、永田大地じゃねえの。もう一人は――誰だ?
永田大地の相方は身長が低く小太りで、ダルマという表現が似合う男子生徒だ。
ニキビ顔で目も細く鼻は潰れており、厚い唇でまさにキモオタそのもの。
「プッ、ナンツールックスヨ。俺ガアイツダッタラトックニ自殺シテ人生リセットシタルワ」
拝啓、お父様、お母様。俺をイケメンにしてくれてありがとう。
うし、ちょっくら挨拶参りかましてやっか!
二人組の元へと駆け出し、背後から声をかける。
「ヘイヘイ! 永田大地! オメートボトボ歩イテンジャネーヨノロマチビスケェ! アトヲ前! ヲ前ダヨクソデブ! ソンナ外見デヨク表出歩ケルナァ! オトナシク自宅ニ引キコモッテゲームデモシタラドーダ? オォ?」
「こんな外見で悪かったな……で、何か用かよ」
デブダルマは不快そうな面で俺に反応してきた。うはは、効果抜群、気持ちいい。
「ブハハ、サッサトダイエットシロヨクソデブダルマァ! デュフデュフデュフデュフ」
「この野郎――殴らせろっ」
「チョ、チョット待ッタァ! 暴力反対ー!」
デブダルマはプルプルと拳を震わせている。相当気にしてるところを突かれたようだ。俺に向かって拳を振り上げてくる。
「ストップ、ストーップ」
永田大地がデブダルマを制した。
お? おお? こりは一体全体どういった風の吹き回しですかね?
「大原、圭を殺したいほどにウザったいと感じただろう。けど、ここで殴ったらお前の手が汚れてしまうぞ」
「でもよ、言われっぱなしは――」
「いいから落ち着け――おい圭!」
永田大地は大原って名字らしいデブダルマを落ち着かせてこちらに近づいてくる。
「いくらなんでも言いすぎだ。他人の外見をむやみに貶すんじゃねえ」
「イヤーイヤイヤーイ、俺ハ本当ノコトヲ言ッタダケダペロリンチョメリンパ? 言ワレタクナイナラ、ソノデブダルマガダイエットナリ整形ナリスリャアイイダケノ話ジャネーノ?」
「クッ……」
「大原」
「……分かってる」
「なら俺からも一つ。圭、お前の顔はゴリラっぽいぞ」
「ハァアアアァァ!? 永田大地、貴ッ様ァァ!? 言ッテ良イコトト悪イコトガアルンダヨ!」
「いやいやいや、言ってることが全然違うじゃんか!?」
永田大地の横でデブダルマが吠えてるけど、そんな小物はどうだっていい。
問題はコイツよ。相も変わらずこの俺をおちょくりやがってからにして、タダで済むと思うなよ!
「事実を言ったまでだ。その程度でキレるとか、小さい器だな」
「オーー! ハァハァ! オーー! ハァハァ! 永田大地! 許サン! 許サン許サン許サーーーーーーン!!」
「うお? ついに頭のてっぺんまで血が回りました? これは大変なことで。茹でダコですね」
「テンメエェェ! 大地ニ地割レヲ入レテシンゼヨーーーーーーーーッ!!」
俺は永田大地の腹部めがけて頭突きを開始させる。
コイツの臓器、全て破裂させてやるよ!
「クッハハハ、今更泣イテ謝ッタッテ遅イゼ? クタバレカス野郎ーーーーッ!」
これで目障りなハエがこの世から一匹いなくなる!
俺の頭が永田大地の腹部に直撃する――直前に奴はかわして俺の背後につく。
「手を出したな? これで俺も心おきなくお前をぶっ飛ばせるな」
永田大地は不敵な笑みを浮かべる。
え? どういうこと?
奴の台詞を理解できずにいると、突如背中に強い衝撃が走った。
それは痛みという名の衝撃で。
「アガーーーーーーーーーーーーーーッ!?」
「これは暴力じゃないぞ。正当防衛な。先に手を出してきたのはそっちなんだから」
「ヲ前ガ挑発シタカラダロウガ!」
なんという無茶苦茶な言い分だ! 異議を申し立てる! こんな言い訳がまかり通っていい世の中であってはいけないんだ!
「元々はお前が大原を悪く言ったからだろ。大原に土下座で謝罪。ほら早く」
永田大地はうつ伏せになって倒れている俺の背中に足を乗っけてくる。おいおい、土足で踏むなよ! 制服が汚れるだろうが!
「どうした? 早くしてくれよ。貴重な放課後ライフをこれ以上お前なんかのために潰したくないんだけど?」
「グッ……コンナコトガ許サレテイイハズガナギャアアア!!」
か、かかとをグリグリ回してきやがった! 背中を抉るんじゃねえ!
「いいから早くしろ」
「元ハト言エバ大原ガデブダカラ悪インダロ! コレヲ機ニ痩セロブタ野郎ガガガガガガ!!」
「いつまで待たせるんだ、あぁ?」
「ス、ススススゥームィムァスゥエェーンデュエーシータォー」
俺は渾身の土下座と謝罪を繰り出した。
このドブネズミめ、後で見てやがれ!
「……こう言ってるけど、どうする?」
「もういいよ。これ以上関わりたくないからとっとと帰ろうぜ」
「そっか。おい、許してもらえてよかったな。優しい大原に感謝しろよ」
永田大地は俺の背中から足を離し、デブダルマとともに歩き始めた。
「ありがとう、大地」
「ん、バカキングの圭にはあれくらいやらないと足りないからな」
ヘッ、くっだらねー友情ごっこしてんじゃねえぞウジムシチビブラザーズが。今すぐマンホールの穴に落ちろ! そのまま海まで流れて波にさらわれて海の藻屑となれ! ケッ!
虚しくなってきたので俺も下校を再開することにした。
駅までの道程を歩いていると、ふと百円ショップに目がいった。
通学中はいつもここを通ってるけど、この百円ショップに入ったことがなかったんだよな。
そう考えたら急に興味がわいてきた。好奇心が強いのはよきかなだぜ。
なら行こう、うん。
軽く自答した末、店内に入ることにした。
「ウォーウォー、ナカナカ品揃エガ豊富ジャネーノ」
店内の規模は通常のコンビニの三倍程度。決して大きいとは言えないけれど、それなりの数の商品が並べられていた。
お菓子や飲料、文具から衣類まで、幅広い種類の品物を取り揃えている。
特にこれといって買いたい物もなかったけど、単にウィンドウショッピングを楽しむのも悪くない、そう思えた。
おっ、350ミリリットル缶ジュース二本で百円ちょいとはお買い得だな。節約するにはうってつけだ。
生憎、裕福な家庭に生まれた俺に節約なんて縁がないんだけどな!
飲料コーナーを堪能したので、次なる舞台である衣料品コーナーへと移動する。
Tシャツやネクタイ、靴下などが並んでいる。百円ちょいで売ってる衣類って質感どうなんだろうっていつも思うけど、実際に使ってみたことはないんだよな。
まぁ俺は金持ちなので? こんなみすぼらしい代物を身に着ける機会などないんだけれどな!
と。
「――ン? ンン!?」
ざっと衣料品を見終わったので文具コーナーに向かおうとしたが、思わず足を止めた。
当然だ。俺の視界に映ったものは、これまでに見たことがないくらいに美しかったのだから。
その正体は美女、絶世の美女だった。あんなお宝を見つけておきながら、そのまま移動などもってのほか。
抜き足差し足忍び足で美女の元まで近づいてみた。
推定二十代前半、身長は俺より5センチ前後低い程度。茶髪。顔もすごく綺麗でスタイルも抜群だ。まぁ絶世の美女だしな。
「ゴ……ゴボ……ゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボ」
興奮のあまり、俺は口から泡を吹いていた。
「ヌオオオオオオオオオッ!! 世界ハナンテ美シインダーーーーーーーー!!」
「な、なに!?」
いけね! つい勢いで叫んじまった。
美女が不快そうな表情で振り向いてきたけど、電光石火の早業で商品棚の横に隠れたので見つからずに済んだぜ。
と、ここでよからぬ展開になった。
「今の叫び声は何?」
なんと謎の男が美女の元までやってきて、あろうことか美女に話しかけたのだ。
「分からない。ビックリしたぁ」
あああ!! き、ききき貴様はデブダルマの大原! どうして美女の隣で美女に話しかけている!?
ま、ままままさかその、つ、つつ付き合ってるんじゃねーだろうな!?
ひとまずアイツらに見つからないようにひっそりと店内から出た。
「シッカシスッゲーツーショットダッタナ」
オレンジ色に染まる空に手をかざしながら呟いた。
まさかデブダルマがあんな美女とお近づきになってるとは、世の中謎が多すぎるぜ。
ま、美女も俺の存在を知れば、超高速でデブダルマから乗り換えてくるに違いない。
それにしても本当に綺麗な女だった。興奮が醒め止まなくて困るぜ。
あんな美女と付き合うことができたら――
と、ここで葵の顔が脳裏に浮かぶ。
何を考えているんだ。俺には既に葵という最高の彼女がいるじゃないか。それ以上一体何を望む?
でも、あんな美女二度とお目にかかれないかもしれないんだぞ。
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