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第三章

9.

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【side*心春】


 何だか本当に、変な縁がある。

 翌日の学校。くじ引きで席替えがあったのだけれど。
 上宮くんと、隣の席になってしまった。

 何だか、昨日の今日で、変な感じ。

 よろしく、と言ったきり、話せない。
 ……ていうか。学校に居る時の上宮くん、本当に、何でこんなに不愛想なんだろう。

「心春、大丈夫? 何かされたら言うんだよ?」

 新しく仲良くなった子達が、休み時間に、上宮くんと離れた所でそう言った。

「……されないと思うよ?」

 そう返すんだけど、怖いよねーと、皆が言う。
 ……うん、まあ。怖いと思うし。
 ……上宮くんは、中学の時の喧嘩とかの噂が広まっちゃってるから、余計皆がそう言う目で見るのも分かる気はする。

 でも。……こないだの絡んできた人達と、上宮くんの反応見ても。
 なんか目立つから絡まれちゃうだけなんじゃないかなあとか……思うんだけど……。


「心春は、大丈夫そうかなあ?」

 彩が私の反応を見ていて、ふ、と笑いながらそう言った。


「なんか、夏美とかは、超カッコいいー、彼女になりたいって盛り上がってたけどね」
「夏美って……どの子だっけ?」

「私の席の後ろの子」

 ああ。ちょっとおしゃれな子だ。
 うん、上宮くんとお似合いな感じ……。

 ……最初会った時は、ほんと怖い、ていうのと。
 変な人。っていう感じだったから。

 公園や、ショッピングモール、昨日のお昼、巫女さん達とのやりとりを見ていても。
 会えば会うほど怖かったイメージはなくなっていって、ぶっきらぼうだけど優しいんだろうなと思う。

 チャイムとともに、上宮くんの隣に座る。

 ……怖い人じゃないって皆が知ればいいのにな。
 そんな風に思っていたら。


「なあ」
 小さく呼ばれた。

「え?」

 上宮くんを見ると。また小さな声で。

「お前さ、今日も行くの、探しに」
「あ、うん」
「今日どこの棟?」
「……南から」
「……オレも手伝う」
「え?」
「広くて大変だろ? 公園に十三時。良い?」
「え。……あ、うん……」

「じゃあそれで」


 それから、先生が入ってきて、授業が始まった。


◇ ◇ ◇ ◇


 意味がよく分からなかったけど。
 公園に行ったら、ほんとに待ってて。上宮くんと一緒に探す事になった。

 ――――……上宮くんはすごく要領がいいというのか、きびきびしてて。
 すごく捗って、十五時過ぎには、もう大部分、聞き終わっていた。

 すこし休憩、と言って、ベンチで一緒にお茶を飲んだ。

「……あの、上宮くん」
「ん?」

「……何で、一緒に探してくれるの?」
「何で?」

「……言わないの? 悲しんでると良くないって。 縛り付けるって」

 気になってた事を聞いてみた。
 そしたら。

「……これは悲しんでる訳じゃねえだろ」

 と、言う。

「知りたいんだろ? もしそれが見つかったら、それを大事に生きていけるんだろ?」
「…………うん」

 何だか。涙が、潤んでしまう。

「お前、泣きすぎだから……」

 はー、とため息を付かれる。


「でも……もしかしたら私のものとかじゃないかもしれないんだけど……」
「――――……まあそれは、見つけりゃ分かるだろ」

「……うん。ありがと……」


 その後。少し残っていた所も、聞き終えてしまった。


「ここからどうすんの?」

 上宮くんに聞かれる。


「んー……聞いてないとこ、行ってみようかな」

 私が地図を見ながら、そう呟いていると。


「……外の店、回ってみねえか?」
「――――……」

「駅の入り口の方には、小さい店、色々あるだろ?」
「……うん。そしたら、そっち回ってみようかな」

 ショッピングモールの外に出て、見てみると。
 小さい店がたくさん立ってて。――――……地図もないし、こっちの方が探すの大変だなと思いながら、ふと足を止めて見回す。

 あ、と、不意に思い出した。


「どうした?」
「――――……あの、ね……一回だけ、悠斗と歩いた事があって……」
「……ああ」

「……悠斗が、少し店員さんと話してたことがあって」

 あれは、どこだっけ。
 ……ここらへんだったような気がするんだけど。


「――――……」


 あ。あった。
 ……スマホのアクセサリーショップ。


「ここ、行っていい?」
「――――……」

「上宮くん?」
「――――……」


 上宮くんを見上げたら。
 なんだか、不思議な顔をしてて。

 不意に、上宮くんが、ふ、と笑んだ。


「……上宮くん……?」

「いいよ。入ろうぜ、聞いてみろよ」
「あ、うん」

 店の中に入って、空いていた店員さんに、すみません、と声をかけた。

「三月の中旬位の受け取り予定で、相沢悠斗の名前で、何か注文、されてないですか?」

 そう聞くと、店員さんは、ちょっと待っててくださいと言って、それから、ノートを持って、戻って来た。

「ありますね」
「えっ」

「え?」

 私があんまり驚いたから、逆に店員さんが驚いている。

「あるんですか?相沢悠斗の名前、で?」
「はい、ただ、これは加藤が受けてまして――――……お渡しも加藤がすると書いてあるのですけど、加藤が今休憩で……って、あ、戻ってきました。待ってくださいね」

 頷いて。今外から戻ってきた男の店員さんが、こっちを見て、頷いてる。

「いらっしゃいませ。相沢悠斗さんの注文、私が受けたんですけど……」
「……あ、はい。悠斗は、何を……」

「スマホカバーなんですけど……ご本人は?」

 その人は、私と上宮くんを見て、不思議そうにしてる。


「……本人がちょっと、来れなくなってしまって――――……」
「え、そうなんですか? だからなんですね、あんなに絶対欲しいって言ってたのに、取りに来ないなんておかしいなと思ってたんですよ。こないだ、いくら何でも遅いなと思って、電話したんですけど、電話もつながらないし」

 そうですか、と、店員さんは笑う。

「お金は払うので、受け取っていって良いですか?」
「良いですよ。持ってきますね」

 店員さんが、奥に消えていく。
 すぐに戻ってきて、箱を代の上に乗せると、私の目の前でそっと開けた。


「こちらですね」


 柴犬と桜のイラストの、スマホカバー。
 コロのイラストだ。それから桜。

 すごく、可愛くて。

 見せてくれた瞬間。


 涙が、溢れた。





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