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しおりを挟む「ただいまー」
「おかえり、ヒロくん」
「ねえ、きいちゃん、今日は先にゲームでもいい?」
元気に帰ってきたヒロくんに頷くと、ヒロくんは手を洗ってからゲームを充電から引き抜いた。
「説明書見た方がいいのかなあ?」
「うーん、一回ちょっと見たら?」
僕が言うと、ヒロくんは、箱から説明書を出して開きながら、テーブルの椅子に座った。
「ねえね、今日さ、ゲームが当たったんだーって、仲いい子たちに言っちゃったんだよ」
「うん」
「皆ゲーム持ってるし、だから今度、このゲームしようよって」
「うんうん」
「そしたら、皆良かったじゃんとか、すごいねーって言ってくれたんだけどさ。小次郎だけさ……あ、小次郎って、昨日話した奴の名前ね」
「うん」
「小次郎まで聞こえちゃってさ、そんで何て言われたと思う?」
もう、とヒロくんは膨らんでいる。
「なんて言われたの?」
「貧乏だから、ゲーム買えないもんなー、良かったなーだって!」
「……ああ……嫌だねぇ」
「やだよ、もう。……つか、しょうがなくない? 貧乏とかさ。お父さんが入院してるんだしさ。お母さんは、毎日働いてくれてるけど、病院代だってかかるしさ。もう、ほんと。……オレが何か嫌なことして嫌いだって言うならしょうがないけどさ。貧乏だって、別に小次郎に迷惑かけてないじゃん、て言っちゃった」
「あ、言ったの?」
「うん。そしたら、周りに居た皆が、そうだよ! ヒロくんが悪いんじゃないじゃん!って言いだして……」
「うん?」
「……なんか、ちょっと、嫌な雰囲気になっちゃってさ。……小次郎を皆で、責める、みたいな……」
勢いをなくして、ヒロくんが、んー、と考えてる。
「なんか、それもちょっと違うなと思ったんだけど、でも、皆が次々言うし、なんか大騒ぎになっちゃってさ。休み時間だったんだけど、結局先生に静かにしろって怒られて……昼の後、先生にオレがまず話を聞かれて……放課後、小次郎も呼ばれてたんだけど。とりあえず、先生がオレは先に帰っていいよって。……まあ、オレはいやなこと言われた方だからさ……帰してもらえたんだけど……」
「そっかぁ……大変だったね」
「……良くわかんないんだよね。何なんだろ。小次郎、前、あんな奴じゃなかったのに」
「うーん…… 仲良くなれたら、いいけどねぇ」
「無理かなあ。だってあいつがオレのこと、嫌だから、どうしようもないよね……」
言いながら、ヒロくんは、ぴ、とスイッチを入れた。
音が鳴って、起動すると、ヒロくんは、途端にわくわくした顔。
でも、ふ、と僕を見て。
ちょっとため息。
「きいちゃん、ありがと。ごめんね、愚痴って。小次郎を知ってる子には、あんまり言えなくてさー。言うとまた、小次郎を責める感じになるのも、なんか……違うし。もう、難しくて、よく分かんないんだよね、どうしたらいいか」
はー、とおっきなため息をついて、ヒロくんは、ゲームのボタンを押した。
「……明日先生にまた呼ばれると思うから……話してみるね」
「そっか。うん。頑張ってね?」
「うん」
そこから、ヒロくんは、お母さんとの約束。二時間ゲームをしてから、僕とまたお掃除を始めた。
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