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 牛乳を買ったヒロくん、福引会場に向かう。

 僕、やっぱり離れてた方がいいかも、と思った時だった。

「きいちゃん、見ててね」

 ヒロくんが、にっこり笑って僕を見て、他の人には聞こえないような声で、そう言った。

 その瞬間。あ、と思った。

 ……僕は、気付きの神様なんだから。
 気付いて頑張り始めたヒロくんにとって。
 僕がマイナスに、なる訳ない。
 ……少なくとも、そう、信じてみよう。

 ヒロくんにとって、僕の力は、これからきっと、プラスに働いてくれるはず。
 
 離れたり、姫ちゃんやあきくんに任せちゃダメなんだ。 
 ヒロくんの笑顔を見ていたら、そう思った。
 
「見てるね」
「うん」

 ふ、と笑って、一歩前へ進むヒロくん。

 ヒロくんには、普通の、見ててね、だったんだろうけど。
 僕的にはちょっとした決意の、見てるね、だった。

 福引に頑張れっていうのも、おかしいかもしれないけど。……頑張って。

 どうなったかというと。
 多分、あきくんと姫ちゃんの力もあったと思うんだけど。

 ヒロくんは、2位の、ゲーム機とカセットのセットが当たったのだった。
 ヒロくんは実はそれが欲しかったみたいで、当たったらすごく喜んでた。

 僕は、僕が居ても、それが当たったのが、なんだかとっても嬉しくて。
 すごくご機嫌になってたら、姫ちゃんが良かったね、と笑ってくれた。

 すごく嬉しそうなヒロくんは、あれ? でもこれ、貰っていいのかなあと帰り道で言い出した。大家のおばさんに返すのかなあ?とか。そんなこと無いと思うけど……と皆で話しながらの帰り道。

 ピンポンを鳴らして出てきたおばさん。

「あら、ヒロくん、お帰りー」

 そう言って、ふと、ヒロくんがさっき持ってなかった荷物に気づいた。

「あら、もしかして、なにか当たったの?」
「うん。ゲームが当たって」
「あら! 良かったね!」
「これ、貰っていいの?」
「え? 当たり前でしょ? おばさん貰っても困るし」

 あはは、と笑うおばさん。

「あてたのはヒロくんなんだから、お母さんにもそう言ってね? 何か言われたら、おばさんに話しにきてもらっていいから」

 ……いい人だなぁ。僕らがヒロくんの後ろでニコニコ笑い合っていると。
 やっとホッとしたみたいなヒロくんが、嬉しそうに笑う。

「あ、ヒロくん、このゼリーも持っていって」
「うん。ありがとう!」
「いいのよう~」

 ……おばさんはとってもヒロくんが好きみたい。
 ふふ、と僕まで嬉しくなってしまう。

 家に入って、ヒロくんはゲーム機が入った袋から箱を取り出して、テーブルの上に置いた。

「とりあえず……きいちゃん、今日はどこ、掃除するか決まった?」
「開けないの?」
「うん。お母さんに聞いてからにする」
「そっか」

 ヒロくんちには、おもちゃはほとんどない。
 ヒロくん位の年の子が家で遊ぶって言ったら、ゲームとかスマホなんだろうけど。くまのぬいぐるみはあるんだけど。触りたいだろうに。お母さんの知らないところで急に手に入っても、使う気になれないのかな。

 そんな様子を見ていたあきくんと姫ちゃんが、にっこり笑って、元気に言った。

「オレも掃除手伝うー」
「あたしも」
「ありがと~」

 皆で楽しくお掃除開始。
 今日は水回りを綺麗にしようってことで、お風呂場とトイレを掃除することになった。

「トイレは、健康運があがるところだから、綺麗にしとくといいよ」
「そうなんだ。……分かった」

 掃除の仕方を教えながら、皆で、頑張って綺麗にできたら、なんだか、すごくすっきりした。


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