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 あきくんに全部話したら、姫ちゃんにも話そうってことになって、姫ちゃんの家を一緒に訪ねた。赤ちゃんが本当に可愛くて、皆で可愛いねぇと見つめてから、姫ちゃんちのお部屋で、丸くなった。

 さっきあきくんに話したことをもう一度、姫ちゃんにも話す。
 あきくんもそうだったように、話してる途中から、とっても嬉しそうにニコニコしだして、話し終えたら、めちゃくちゃ笑顔になってくれた。

「すごい! 話せたの?」
「うん、そうなの」
「何で?? どうしてヒロくんは話せるの?」
「分かんないけど……退院してきた時から、僕のこと見えて」
「えー、良かったねー!!」
「うんうん!」

 きゃっきゃっと、二人で喜んでいたら、あきくんが笑いながら言った。

「さっき聞いてから考えてたんだけどさ」
「うん?」

「その子、頭打ったって言ってたよな?」
「うん、そう言ってたよ」

「たまに居るらしいよ、頭打ってから幽霊が見えるようになったりって。それと一緒かな? きいちゃんが見えるスイッチが、頭の中で入ったのかも」
「そうなんだ。え、それって、ずっとなのかなあ……?」
「もう見えるようになったならずっとかもしれないし、打ったことによって一時的なのかもしれないし、それは分かんないよな」
「そっか。……じゃあ、また見えなくなっちゃうかもしれないんだ。そっか。……じゃあ、なるべく早く、大事なことは伝えといた方がいいかな」

 いつ見えなくなっちゃうか分かんないもんね。
 大事なことは、早めに伝えておこう。

「ん、そうだな。いつ見えなくなっても、後悔しないように」
「うん」

 あきくんの言葉に、僕は頷いた。

「でもさ、それってさ」
 姫ちゃんがなんだかしみじみとつぶやいた。

「ん?」
 姫ちゃんの言葉を少し待っていると。

「今の話は、見えなくなるかどうかだけど……あたしたちには死がないから別だけどさ」
「うん?」

「人間には、あるでしょ」
「…………」

「誰にも必ず。しかも、すごく元気でも、数分後にとか。いつくるか分からない、お別れの時が」
「――――……」

「だから、ほんとに話せるなら、貴重な時間を大事にしないとだよね」
「……うん」

「でも、このままずっと、お話できたらいいね」

 笑顔で言う姫ちゃんに、うん!と頷きながら、しみじみ、ほんと、大事にしようと誓う。

 ……今まで数えきれない長い時間、一度もこんなこと無かったから。
 この先、もうずっと、無いかもしれないし。
 そう思うと、とてもとても、特別で大事な時間な気がしてくる。

「なあ、きいちゃんが見えるってことはさ?」
「うん?」
「オレ達のことも、見えるのかな??」
「え。……どうなんだろう???」

 そう言われてみると……でも考えても分からない。

「今日、会いに行ってみようか?」
「えー、賛成ー!!」

「十五時半くらいに帰ってくるよ、ヒロくん」

「じゃあ、会ってみよう、姫ちゃんも行くだろ?」
「行く行く、絶対行く!」

 二人が盛り上がってるのを見て、僕はふと、考えた。


「あ、あのね……言っとかないといけないことがあるんだけど……」

「うん?」
「なに?」

 あきくんと姫ちゃんが僕を見つめる。

「……あの……僕、神様とは言ってあるんだけど……貧乏神とは、言ってないんだ」


 そう言うと、二人は、しばらく、じっとオレを見つめた。


「あー……そっか」
「そうなんだね……」


 あきくんも姫ちゃんも、二人とも、僕の顔を見ながら、しばらく考えてた。





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