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しおりを挟む誰も居ない公園のジャングルジムで、僕たちは遊んでいる。
空の真上にある月が、ものすごく綺麗な夜だ。
そんな夜中に何してるの? お母さんに怒られないのって?
そこはね、僕たちは大丈夫なんだよね。
前回遊んでから少し間が開いてたので、近況報告から始まった。
「あきくんのおうち、最近どう?」
「んー、そうだなあ……息子が、やな奴になってきたな。すっごい勘違いしだした」
「そうなんだ。まただねぇ」
「そ、また。……金持ちになっちゃうとね」
「うーん。しょうがないのかなあ? 何歳だっけ?」
「十歳。……まあ、ずっとそういう傾向だよな。子供が勘違いして偉そうになっちゃうってとこがさ。オレの仕事で複雑なとこ。まあ、大人もそうなんだけど……」
「そっか」
「たまには居るけどね。幸せになって恵まれると、人を助けたりする人もさ。でも、やっぱり難しいみたい」
なるほど。
……あきくんの言葉は、実体験に基づいてるものなので、特に否定する気も起きず、うんうん頷いて聞いてる、僕と姫ちゃん。
「姫ちゃんちは?」
「あたしんちは、今赤ちゃんが、めちゃくちゃ、かわゆくてね。大好きなの。皆幸せそうだよ」
「あ、産まれたんだね、いいなあ」
前に姫ちゃんに会った時は、まだお母さんが妊婦さんだっていう話だった。
「そう。今度遊びにおいでよ。まだ寝てばっかりだけど、寝てる姿も、すごく 可愛いから」
「行く行く!」
「オレも!」
僕とあきくんは、とっても乗り気で返事をした。
あきくんは、オシャレでカッコいい男の子。
姫ちゃんは、小柄でかわいらしい女の子。サラサラした髪の毛は肩くらい。
二人とも見た目は、人で言ったら、小学生の高学年位。あ、僕も同じくらいだけど。僕は……なんだろ、ごく普通の男の子の見た目かなあ? あきくんと姫ちゃんは僕を、目が大きくて可愛いとか言ってくれるけど。まあ……ごくごく普通な感じ。
「きいちゃんちは? どうなってる?」
きいちゃん、ていうのは僕の名前。
自分の住みついてる家のことを思い起こして、んー、と僕は少し俯いた。
「僕んちにも、九歳の男の子が居るんだけどね。こないだ、事故にあっちゃって入院してるんだ。お父さんは相変わらず入院中だしね」
「ああ、そっか……」
「大変だねえ……」
あきくんと姫ちゃんが少ししょんぼりした感じでそう言う。
「僕が居ると不運なことも続くから、可哀想なんだけど……」
僕が、んー、と唸りながらそう言うと。
すぐにあきくんが、僕の肩を掴んで、まっすぐ見つめてくる。
「でもそれは、きいちゃんのせいじゃないからな?」
「うん。分かってる」
「落ち込むなよ?」
「うん。大丈夫だよ。ちゃんと分かってるよ。……人が自ら作ってる運命だってこと」
「ん。ならいいけど。きいちゃんは優しいから、自分のせいとか思いそうだから」
本気で心配してくれてるあきくんに、ありがと、と笑うと。
姫ちゃんも、「そうだよ、きいちゃんのせいじゃないからね」と優しく言ってくれる。
「分かってるから、大丈夫だよ」
「ならいいけどさ」
「そういうのが嫌なら……家を整えて、気持ちを整えてってすればいいんだしさ。そしたら、あきくんや姫ちゃんや、他の皆がそっちに吸い寄せられるでしょ。僕はまた、違う家に行くことになるし」
そう言うと、あきくんと姫ちゃんが、うんうん、と頷いた。
「それでね、明日、その子、退院してくるみたいなの。お母さんが電話で誰かにそう言ってた。頭を打っちゃって、少しの間入院してたんだけど、帰ってもいいってなったみたいだよ」
「そっか。まあ、帰れて良かったな」
あきくんのセリフに、僕は、「そうだよね、帰って来れてほんとに良かった」とつぶやいた。
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