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第4章◇なんで?

「触る癖」

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「よし。じゃ散歩いこっか」

 ぽんぽん、と頭に手を置かれて。快斗の後に続く。

 ――――……そうだ。
 これ、いつもだったなあ。ぽん、て、オレの頭に触るの。

 思わず、触られた自分の頭に手を置いていると、快斗が、ん?とオレを振り返った。

「……快斗、ぽんぽん触るの癖だよね」
「ぽんぽん? ――――……あ、これ?」

 言いながら、ぽん、と頭に手をのせて、「ぽんぽんて可愛いな」とクスクス笑われる。


「なんか――――…前からよくしてたなーて今、思い出した」
「ああ…うん、してたな」

 ……他の人にもするのかな。今も、向こうで、誰かにしてるのかな。

 なんて、考えがふっと浮かんで。
 いやいや、何考えてんだと、焦っていると。


「つーか、ちょっと間違ってるな」
「……え?」

「ぽんぽんするのは、癖じゃないよ」
「……?」

 あ、そう? よくされてたような気がしてたけど……。


「じゃなくて、――――……愁に触るのが、癖なんだよね」
「――――……」

 頭に置いた手に力が入って、くいと引かれて、間近でのぞき込まれて。
 かあっと赤くなった瞬間。

「別にオレ、頭にぽんぽんだけしてた訳じゃないよな? 手ひいたり、肩組んだり、頭も触ったけど――――…… 愁が好きだから、愁に触ってただけ。……っとか、あんまり言うと、気持ち悪いか?」

 はは、と笑って、快斗は手を離した。


「……っ」

 ぽんぽん、他の誰かにしてるのかなとか想像して、嫌な気持ちになったり。
 ――――……触りたいからとか言われても、全然嫌じゃなかったり。

 そんな、気持ち悪いなんて、全然思ってないのに。

 快斗が離した手を、オレは咄嗟に、ぱ、と掴んだ。

「……愁?」
「……気持ち悪くなんか、ないから」
「――――……」
「……そんな風に、言わないでよ」
「――――……」

 掴んでた手を外されたと思ったら逆に掴まれて、引かれて、抱き締められてしまった。
 
「……あーもう……愁……」
「――――……っ」

「……可愛いけど…… 襲われたくなかったら、ちょっと加減して」
「――――………」


 ぎゅー、と抱き締められて。
 笑う快斗が、そんな風に囁く。

 みるみる顔に熱が集まっていく。
 心臓が、ドキドキして、快斗にも聞こえそうなくらい。

「――――………外行こっか、これ以上暑くなる前に散歩したいし」
「う、ん。行く」


 ばくばくの心臓に、ぎゅ、と目をつむりながら、答えると。

 快斗は、ふ、と笑ってオレを離した。



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