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第3章◇ふたりきり
「キス」
しおりを挟む「……考える事、あるよ、そりゃ……」
ドキドキしながら、答えると。
「……ふうん」
ますます、妙な雰囲気を醸し出しながら、快斗がふ、と笑う。
「なあ、愁? ――……今度、そういう事、考える時さ……」
「……っ」
大好きな顔が、ますます近づいて。その瞳がふ、と緩む。
「――――……オレにされる事、考えてみて?」
「――――……っ……!」
オレの頬に触れた快斗の指が、そのまま、するりと滑って、首筋を撫でた。
自分でも驚く位、体がびくん、と震えて。
顔に熱が一気に集まった。
でも。
驚いたオレよりも。
オレの、反応に、もっと驚いたのは、快斗で。
その瞬間。
「――――…っ」
目の前で、快斗が、一気に、赤くなった。
ば、と手を離して、その手で口元を覆う。
「――――……っなんっつー反応……すんだよ」
口元を隠していた手が、そのまま上がって、目元を塞いでしまった。
――――……快斗が、赤くなるとこなんて、初めて見た。
ここまですっごく照れてる快斗なんて、知り合って10年以上になるけど……。
……初めて――――……かも。
「……やば。オレのがびっくりし――――……」
目元を隠したままそんな風に言ってる快斗に、オレは、引き寄せられるように、近づいて――――……。
「――――…しゅう?…」
「――――……」
あれ……オレ。
――――……何、してんだろ……。
唇が触れあった感触に
頭の片隅で、そんな風に、思った。
不自然なほどにお互い動かずに。
何秒か、そのまま触れ合っていたら。
「――――……愁?」
唇の間で、快斗に、名を呼ばれた。
「あ……」
オレは、触れてた唇を、ぱっと、離した。
えっと……。
――――……オレ、いま。
…………快斗にキス、したよな……?
え。
……何、してんの、オレ。
咄嗟に、離れようとした腕を掴まれて。
快斗に、引き寄せられた。
「――――…バカ愁………」
少し、苦しそうに眉根が寄って。 吐き出すみたいに、囁かれて。
何も考えられなくて、ただ快斗を見つめる。
後頭部に、快斗の手が回って、力がこもって。
今した、オレのキスなんて、比べ物にならないような、
キスを、された。
「……っん……」
息が、出来ない。
キスって――――……こんなに、苦しいものなのかと思ってしまう。
混乱しすぎて、声が、漏れても、どうにもできない。
「……ン、ぅ」
快斗の舌が、絡んでくる。
熱すぎて。 つられて、かろうじて漏れる息が、どんどん熱くなってく。
「……っ……ん、ン……!」
舌を吸われて、ゾクゾクした感覚が背筋を走る。
いつの間にか、床に倒されていて――――……。
快斗が、上に居て。
逃げようもなくて。
――――……逃げたいとも思えなくて。
ただ深いキスに、辛うじて応えるだけ。
……口、熱くて。 快斗のと合わさって、溶けそう……。
そんな風に思っていた時。
ちゅ、と最後に唇を押し付けられて、それから、ゆっくり、キスが離れた。
「――――……」
上にいる、快斗の真剣な顔。
こんな角度から、見るの、初めて。
――――……カッコ、よすぎ……。
「……はー……」
快斗がため息をつきながら、額を、オレの胸に突っ伏してくる。
「何でお前――――……キスなんか、すんの」
突っ伏したままの、快斗に、聞かれて。
「……わかんない……」
「――――……待つって言ってんのに、オレ……」
「――――…」
「……ごめん、我慢できなくて」
「え……」
顔を起こした快斗は、きまり悪そうに、苦笑い。
起き上がると、オレの腕を掴んで、引き起こしてくれた。
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