12 / 35
第3章◇ふたりきり
「たまには」
しおりを挟む「――――……あのさ……」
「ん?」
「オレ、まだ何も答えとか……決まってないんだけど……」
「ん」
それを言っても、快斗の瞳は優しくて。
だから、突然。 ――――……覚悟を決められた。
「……聞きたい事あるんだけど、いい?」
「ん。 何でもいいよ。何?」
声も優しいし。 笑ってくれてる顔も優しい。
何だかすごくホッとして。オレは、口を開いた。
「前に言ってた事って……今もそう?」
何だか何もはっきりと伝えられていないような気もするけれど。
多分、これでも分かってくれた快斗は。 ふ、と笑った。
「今もそうだよ。そんなすぐ変わらない」
「――――……でも……」
「でも、じゃないよ。 何年でも待つって言ったろ?」
「――――……」
優しいけど、強い言葉に、言葉を奪われて。
オレは、 快斗をただまっすぐ、見つめた。
「オレを選んでくれるか、それとも他の奴を選ぶか。どっちかの答えが出るまで、待つよ」
「――――……」
だけど。でも。
そんな類の言葉しか思いつかなくて。
更に、それに続く言葉も思いつかなくて、何も言えない。
黙っていると快斗はまた苦笑い。
「あのさあ、愁。 よく聞いて」
「……?」
「オレ、お前の事大事だよ。どういう意味でも、大事。失うの、絶対嫌だ。
それは分かる?」
「……うん」
それがどんな意味でも良いのなら。
……それは、オレだって、同じだ。
「そのオレが、お前に好きって言った覚悟ってすごいと思わない? 嫌われる覚悟までしてやっと言ったのに、こんな少しの間に、変わる訳ないだろ」
「――――……」
……何だか激しく納得させられて。
特に何も、返す言葉が思い浮かばずに、黙っていると。
「あんまり言うと、プレッシャーかけるかと思って、あの後は何も言わないできたんだけど……」
困ったなあ、とでも言わんばかりの顔で苦笑して。
快斗は、少し首を傾げて、オレを見た。
「……オレの気持ち、疑われるんなら、毎日でも言おっか?」
「……?」
「何も言わないで居ると、愁が余計な事考え始めるんだったら、 毎日でも言うけど」
「……余計な事って、何だよ?」
聞くと、快斗はクスクス笑って。
――――……こう、言った。
「今もオレがお前の事好きなのかなー、とか、考えてたんだろ? そんな微妙な状態で、お前がオレを選んでくれるとは思えないからさ。言っても良いなら、毎日でも、好きだって言う」
何も言えないでいるオレに、快斗は更に続ける。
「……それともやっぱり言わない方がいい? それかオレが気持ち変わったら、即言う事にしよっか? もう答えは要らないって、オレがお前に言わない限り、気持ちは変わってないって事にするか。そっちの方がいい?」
唇を噛んで。
そのまま、快斗を見つめていると。
「愁はどれがいい?」
問われて、しばらく視線を彷徨わせてしまう。
「あのさ。毎日とかでなくていいからさ」
「うん?」
「たまに、言って、欲しいかも……」
そう言ったオレに、自分で聞いてたくせに、なぜかきょとんとする快斗。
「……何?」
「んー……」
快斗が言葉を選んでるのが分かるので、少し黙ってそれを待つ。
「――――……言っていいんだ?」
「え?」
「……好きだって、オレに何回も言われるの、嫌じゃないのか?」
「――――……」
別に。 嫌では、ない。
……なんで聞くんだろ??
「普通は男に好きなんて言い続けられたら嫌だろうなと思ったから、言ってなかったんだけど」
……まあ。そう言われてみたら……。
……確かに、他の男なら、嫌だけど。
0
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説
もう一度、貴方に出会えたなら。今度こそ、共に生きてもらえませんか。
天海みつき
BL
何気なく母が買ってきた、安物のペットボトルの紅茶。何故か湧き上がる嫌悪感に疑問を持ちつつもグラスに注がれる琥珀色の液体を眺め、安っぽい香りに違和感を覚えて、それでも抑えきれない好奇心に負けて口に含んで人工的な甘みを感じた瞬間。大量に流れ込んできた、人ひとり分の短くも壮絶な人生の記憶に押しつぶされて意識を失うなんて、思いもしなかった――。
自作「貴方の事を心から愛していました。ありがとう。」のIFストーリー、もしも二人が生まれ変わったらという設定。平和になった世界で、戸惑う僕と、それでも僕を求める彼の出会いから手を取り合うまでの穏やかなお話。
番、募集中。
Q.➽
BL
番、募集します。誠実な方希望。
以前、ある事件をきっかけに、番を前提として交際していた幼馴染みに去られた緋夜。
別れて1年、疎遠になっていたその幼馴染みが他の人間と番を結んだとSNSで知った。
緋夜はその夜からとある掲示板で度々募集をかけるようになった。
番のαを募集する、と。
しかし、その募集でも緋夜への反応は人それぞれ。
リアルでの出会いには期待できないけれど、SNSで遣り取りして人となりを知ってからなら、という微かな期待は裏切られ続ける。
何処かに、こんな俺(傷物)でも良いと言ってくれるαはいないだろうか。
選んでくれたなら、俺の全てを懸けて愛するのに。
愛に飢えたΩを救いあげるのは、誰か。
※ 確認不足でR15になってたのでそのままソフト表現で進めますが、R18癖が顔を出したら申し訳ございませんm(_ _)m
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ハッピーエンド
藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。
レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。
ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。
それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。
※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる