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【+月ノ夜+】本編
+月ノ夜本編+【恋愛?】
しおりを挟むでも、大学選ぶ時は――――……。
あれはもしかしたら、離れようとしたのかな、と、思うような事があった。
高校3年の終わりの時期。
受験する大学は相談して決めた訳じゃなくて、成績で、それぞれ受験した。オレも涼介も、数校ずつ受かって、結局それぞれ受かった学校の中から、同じ大学を選ぶ事には決まったんだけど。
その時、会話が微妙だった事、ずっと忘れられずに覚えてる。
「なあ、瑞希、受かった中で、どこ行くん?」
「んー…… お前はどーすんの?」
「受けたとこは、別にどこ行ってもええと思って受けたから、正直、どこでもええねんけど」
「じゃあ、ここ、は?」
2人が唯一、一緒に受かった大学を、聞いてみた。
「……そこは、お前も受かってるんやろ?」
「うん。 受かってるよ」
「――――……」
少し、沈黙。
――――……一緒に行こうって、言わねーのかな。
微妙な雰囲気。
こんな時、今までのオレ達の関係性だったら、
一緒のとこ受かってんじゃん! じゃあ、ここ一緒に行こうぜ!
……って、お互い、思い切り言ってもよさそうなのに、
なぜか、オレも、はっきり言えない。
それは、涼介の雰囲気というか。そのせい、なんだけど。
なんだろう。
よくわかんない。
何だか、すごく妙で。
初めて、間に、溝を感じた気がしたっけ。
あれ。
こいつって、もしかして、オレとは、高校までとか思ってるのかな。
そう、思ったっけ。
――――……なんか、やだな……。
すごく、そう思ったから、覚えてる。
だから。
オレが、言う事にしたんだった。
「……どうしても他に行きたいとかねえなら、 一緒の大学行こうぜ?」
「――――……」
「オレ、お前とまた4年間過ごしたいって思うし。 嫌じゃなければ、一緒に行こ?」
「……ええの?」
「ええのって。 何その質問。 ……他に行きたいとこあるなら、無理にとは言えないけどさ」
「――――……」
「大学で勉強したり、遊んだり……いろんなこと経験したり、そーいうの、お前としたいんだけど。 お前は違うの?」
オレは、滑り止めの2つ以外は、正直どこでもいいなーと思ってて。
あとは通いやすさとか、学風とかで選ぶべきなんだろうけど。
でもそんな些細な事より、 こいつと、一緒に大学生活も送れるって。
それがすごくワクワクした。
「お前がええなら――――……一緒に行く」
そう言うので、 いいに決まってんじゃん、と、返したっけ。
あ、良かった。 オレと、高校でお別れだって思ってた訳じゃ、無いんだな。 ああ、よかった。
そんな事を考えていたのも、思い出した。
あの時、オレから離れようとしてたのかな。
一緒に行こうとは、あいつからは言ってくれなかった。
……オレが、押し切った感じ。
結局、お互い家から遠いから、一人暮らしをしようとなった時も。
どうせだから一緒に住む? 家賃も家事も半分こにできるじゃん、といったオレに。
一人暮らしをしてみたいから、やめとく。近くには住もう、と言われたっけ。
あの時も、そういえば、少なからず、
すごく一緒に居たいと思ってるのは、オレだけなんだなあ……とも、感じたっけ。
……まあさ。
「彼女が出来ても連れ込めない」とか、「一人暮らしの快適さ」を体感したいと言われたら、それは納得できて。
だから結局、徒歩5分のとこに、住む事になったんだけど。
思い出せば出すほど、 一緒に居たかったのは、オレで。
……あいつは、違ったような気がするんだけど。
時たま、距離を感じて。
一線引かれてるような気がして。
……どの程度の距離感を保てばいいのか分からない時もあった気がする。
でも、大学に入ってからは、取る授業もほとんど同じで、サークルも一緒に入ったりして。
おかげで、自然と常に一緒にいる感じで。
そうなってからは、 特別距離を感じる事もなくて。
他の友達も共通してるから、いつでも、涼介にプラスして他の皆がいる、みたいなそんな感じで。
最近、すごく良い感じで、居心地が良くて、
楽しい大学生活を満喫していた。
――――……そして、ここにきて、急な、今日の、あれ。
恋愛対象って……。
……――――……なんだっけ。
オレが、あいつをそういう風に見れたら、どうなんの??
恋愛対象として、涼介を見るのなら。
………そうなった瞬間、から……
もしかして、「恋人同士」になるのだろうか。
「――――……恋人……?」
涼介が、恋人?
……恋人……????
恋人って――――……なんだっけ……。
根本的な所から分からなくなってきて。
クッションにまた、ぐりぐりと顔を押しつけて。
その後、はぁ、と息を付く。
……夢……じゃないよな……?
……あれ? …………さっきの、夢だった……???
夢じゃない、とは思うのだけれど、 内容的に、現実とは思えない
……夢だったような気も、してくる。
いや、でも。
確かにあれは、さっき、起きてる間の出来事で……
「……~~~……っ?……」
近頃無かった位の、大混乱状態の頭。
さっきの涼介を思い出しては、ただただ混乱に陥る。
恋人って何?
恋愛って、何?
どういう事だっけ。
今だって、ずっと一緒にいるから、そこは、変わんない?
それ以上に一緒に居るようになる?
いや、でも今だって、朝迎えに来てくれてそのまま一緒に大学いって、授業もほぼ一緒で、昼も一緒。サークルに顔出すのも一緒、 友達やゼミの集まりとかもほぼかぶるから、帰り道も一緒。
オレ達2人にプラスして、たくさんの人が入れ替わり立ち替わり、周りに居るけど、常にその中にオレ達はお互い居る、ような感じで。
高校時代からそうだった。
唯一離れるのが、 あいつが彼女と帰るとか、出かけるとか、そういう時だけだった。
大学に入ってからは、涼介はまだ、誰とも付き合ってないから、近頃は、それもなかった。
……オレが、もし、恋愛対象であいつを見たら。
その、「彼女」がオレに置き換わるの?
としたら、そこも、オレ達は一緒にする事になる訳だから――――……。
……外で過ごす限りのほぼ全部の時間を、あいつと過ごすのかな。
……つか、こうやって考えると。
……オレ達って、一緒に居すぎだな……。
2人きりで一緒に居るのは、行き帰りくらいで、
あとは誰かしらがいつも、まわりに居るから。
オレ達がいつも2人きりで一緒に居るって思う人は居ないと思うけど……。
常に常に、その存在は、そばにある、気がしてきた。
――――……それが、まったく、嫌じゃない。
なかなかそんな人間には、巡り合えないと思う。
ほとんどの時間を、ずーっと共有しても、嫌じゃない。
むしろ、心地よくて、楽しくて――――……。
すごく貴重で、すごく大事な奴、であることは、もう分かってる。
それは、友達として。
今までは、迷うことなく、
そう思っていた。
「――――……」
ソファに寝転がったまま、伸びると。
カーテンの隙間から、空が見えた。
さっきと同じ、青い、月。
綺麗で、しばらく見とれる。
涼介も、見てるかなあ――――……。
……今、何を、思ってるんだろう。
――――……声を聞きたいけど……。
今日は電話できそうにない。
明日の朝、いったいどうやって、会えばいいのか。
はー、と息を吐き。
ただただ、ぼんやりと、青い月を、 眺めた。
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