224 / 295
第2章
「見てたい」
しおりを挟む「キスしろよ、ソラ」
ニヤリと笑って言うルカに、やっぱり、と少しうんざり。
「……オレまだ完全にさっきの許してないのに」
しかも、するんじゃなくて、しろよと来たし。
「もう今笑ってたろ」
ふ、と笑われて、まっすぐに見つめられる。
「……何でオレからキスすんの?」
「キスすんのに理由がいるか?」
「……要る!」
「……じゃあ――――……」
「――――……」
「……オレを好きなら、キスしろよ」
そんな言い方に、目が点。
……なんなんだー。このオレ様男ー!
皆の前でキスしたり、からかったり、もうほんと、そういうとこは、嫌いなんだからなっ。
……と思うのだけど。
なんだか、期待された瞳で下から、じっと、見つめられていると、言葉になって出てこない。
「――――……ほら。早く」
なんだか、すごく至近距離で見つめられて。
ちょっと優しい声で急かされると。
「――――……」
引き寄せられるみたいに。
唇を重ねてしまった。
重ねるだけのキス。少し触れてから、はっと気づく。
もう、超簡単に、ルカの思うままにキスしちゃったし……!
オレのバカー!
激ちょろー!!
……心の中で散々叫んで、本当に、そう思うんだけど。
――――……なんか、ルカが、めちゃくちゃ優しく笑うから。
なんか、いいような気がしてきてしまうのも、事実。
「……キスしたけど」
「ん?」
「おろしてくんないの?」
「……もう一回」
「――――……」
もう一回も二回も三回も……変わんないし。
という気分で、ルカに、キスする。
ふ、と笑ったルカに、とん、と下におろされる。
「……何がしたかったの?」
「――――……エプロンしてるソラとキスしたかっただけ」
「え。それ本気で言ってたの?」
「それって?」
「エプロン姿良いって」
「……何でオレが、そういうことでお前に嘘つくんだよ?」
「嘘っていうか……冗談なのかなって」
「そんな冗談言ってるほど暇じゃねーし」
「――――……」
……いつも言ってるじゃん、冗談。
と思って、ふと、気づく。
もしかして冗談じゃないの? ルカが言ってること全部。
からかってるだけかと思ってるんだけど……。
「……ルカって、冗談、よく言うよね?」
「――――……言わねえよな?」
「……たまに、アランに、つっかかってるやつは? あれ、冗談みたいなものでしょ?」
「冗談でなんか言ってねーけど」
まじまじと、目の前の整った顔を見てしまう。
確かに今は嘘言ってるっぽくはないけど。
……今まで冗談だと思ってスルーしてきたこと結構あるような。
――――……今の聞かなかったことにしようかな。…………うん。そうしよう。
でもなんかどうしても聞きたくて、ルカを見上げて。
「……ルカって、オレのエプロン姿、好き?なの?」
そう聞いたら、ルカは、二ヤと笑う。
「ん」
「……-本気で?」
「だから、冗談なんか言ってないけど?」
「――――……」
本気なのかぁ……。そうかぁ……。
「えっと……とにかく、オレ……ごはん。続き、作るね?」
「ん」
ルカが微笑んで、オレの頬にキスした。
「また少し、上行ってくる」
「うん。いってらっしゃいー」
ルカが姿を消してから。オレは、ふー、と息をついた。
「……」
――――……ドS設定だもんなぁ。
……意地悪したり、わざと恥ずかしいこと言ったり、そういうのするもんなぁ、ルカ。
……全部が本気とか。絶対嘘だ。うんうん。
「……」
まあその「設定」ってやつが、そもそもよく分かんないんだけど。
ここがあのゲームの世界なら、それってどういうことなんだろう。何度も何度も考えるけど、全くわからない。
ゲームの世界に転移したって、そう捉えれば、いいのだろうか。
……そんな漫画みたいなー……。
いつか。分かる日が来るんだろうか。
オレ、それが分かったその後も――――……。
ルカと居れるのかな……。
って。
……そんなにルカと、居たいのか、オレ。と苦笑い。
オレ様だけど。されること、色々恥ずかしいけど。
……たまに意味わかんなくてむかつくけど。
……ルカがオレを見る瞳と顔は。
なんか、ずっと見てたいなと。思っちゃうのは。どうしてだろ。
そんなことを考えながら、フライパンの蓋を開けて、火を消した。
41
お気に入りに追加
4,580
あなたにおすすめの小説
気付いたら囲われていたという話
空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる!
※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
捕虜のはずなのに 敵国の将軍が溺愛してくる
ユユ
BL
“お前のような出来損ないを
使ってやるのだから有難いと思え!”
“それでも男か!
男なら剣を持て!”
“女みたいに泣くな!気持ち悪い!”
兄王子達からずっと蔑まされて生きてきた。
父王は無関心、母は幼い娘に夢中。
雑用でもやっていろと
戦争に引っ張り出された。
戦乱にのまれて敵国の将軍に拾われた。
捕虜のはずなのに何故
僕を守ってくれるの?
* 作り話です
* 掲載更新は月・木・土曜日
* 短編予定のつもりです
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
みにくい凶王は帝王の鳥籠【ハレム】で溺愛される
志麻友紀
BL
帝国の美しい銀獅子と呼ばれる若き帝王×呪いにより醜く生まれた不死の凶王。
帝国の属国であったウラキュアの凶王ラドゥが叛逆の罪によって、帝国に囚われた。帝都を引き回され、その包帯で顔をおおわれた醜い姿に人々は血濡れの不死の凶王と顔をしかめるのだった。
だが、宮殿の奥の地下牢に幽閉されるはずだった身は、帝国に伝わる呪われたドマの鏡によって、なぜか美姫と見まごうばかりの美しい姿にされ、そのうえハレムにて若き帝王アジーズの唯一の寵愛を受けることになる。
なぜアジーズがこんなことをするのかわからず混乱するラドゥだったが、ときおり見る過去の夢に忘れているなにかがあることに気づく。
そして陰謀うずくまくハレムでは前母后サフィエの魔の手がラドゥへと迫り……。
かな~り殺伐としてますが、主人公達は幸せになりますのでご安心ください。絶対ハッピーエンドです。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる