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第2章

「中身が魔物?」

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 花嫁修業的な感じに、頷くのを躊躇っていると、ルカが笑って。

「まーそんなとこ?」

 そう言った。
 
 えっ。
 ルカの返事に、ぱっと、ルカを見つめる。

 習いたいとか言った記憶が無いんだけど……。
 作ってみたいなーとか、キッチン借りたいなーとかだったよね……違ったっけ??

「分かりました。えー、ソラ、ですね」
「あ、はい……」

「ジークです。料理の修行は多少厳しいですが、王子の為ですし、頑張れないことはないでしょう」
「あ……は、い……??」

 修行……すんの? オレ?

「いつ帰られるんですか?」

 ジークがルカに聞いている。

「まだいつか分かんねえ」

 というルカに、ジークは、分かりました、と頷いた。

「帰られるまでには、色々ソラの為の準備をしておきます」
「おう。頼んだ」
「はい。では王子も皆も、お気をつけて」
「ああ」

 ルカに一礼して、皆の顔も見てから、ジークが部屋を出て行こうとして――――……。

「あ、ちょっと待て、用事が終わってない、ジーク」
「はい?」

 立ち止まって振り返る。

「これから少し船で海に出るんだ。すぐ終わるかもしんねえし、しばらくかかるかも。船でソラに料理できるものはしてもらおうと思ってるから、使いやすそうな調味料とか、こいつに渡してやってほしい」
「なるほど」

「そっちのがメインの用事。食事が終わったら、もう発つから、用意できるものだけでいいから頼む」
「分かりました。すぐに用意します」

 頷いて、足早にジークが出て行った。


 えっと……。
 調味料の事は、良いとして。

 えっと。


「ルカ、オレ、修行、することに――――……なったの??」
「……あの感じだと、ほんとに修行になるかもな。まあ頑張れ」

 ……修行するのか、オレ。料理の。
 …………なんかあの感じだと。

 花嫁修業的な感じで。愛するルカの為だから、みたいな感じで……。

 なんかさっきから、リアとゴウとキースが、ずーっと、クスクス笑ってるし。

「ていうか、ルカ、あの感じってさ…… 花嫁修業的な……」

 そう言った瞬間、ルカ以外の皆が、ぶー、と吹き出した。


「何で笑うんだよっ」

 そう聞くと。

「だって――――……笑うでしょ?」
「ジークなー、良い奴なんだけど、すげーマジメなんだよ」
「……ソラ、頑張れ」

 リア、ゴウ、キース。
 皆めちゃくちゃ楽しそうに笑ってるし。

 ああ、なんかすごいマジメって分かる気がする……。
 キースの「頑張れ」に何か、すごく色々含まれてる気がする。


「もー、何でルカ、そうかも、とか言ってんだよー!! もー!!」

 そう言うと、ルカは、はは、と笑い出して。

「お前の顔が面白ぇからつい」
「ルカー……」

 絶対あの人、超マジメに修行させてくれちゃう人な気がする。

「帰ってきたらちゃんと、言ってやるから。でも少しはこっちの料理覚えるのもいいだろ?」
「……うん。まあそれは」

 頷きかけると、リアたちが、クスクス笑うので、ん?と顔を見ると。


「ほんと素直というのか、なんなのかな……」

 笑われながらのその言葉で、また乗せられそうになってた事に気付いて、ルカを振り返ると。

「ソラ、チョコの実食べるか?」
「食べ……食べない」

 また頷きそうになって、今度は自分で気づいて、ぷい、とルカと反対方向のリアの方を向く。

 もー聞かない。
 もー、チョコの実なんかで騙されない。

 そのまま、食事を続けていると、しばらくして。

「ほら、ソラ。口」

 何なんだー、今まで静かだった間、むいてたのかー。もー!
 開けるもんかー。

「ソラ」

 クスクス笑うルカの呼ぶ声。


「ほら、もう飯終わったろ?」

 腕を掴まれて、ぐいと引かれて、ルカの方を向かされる。

「ほら」

 何やらまた、むかれたチョコの実がこんもり置いてある。

「……ミウにあげてよ」
「――――……食うか?」

 食べるのが悔しくて言ったのに、ルカは、オレの膝のミウに聞いて。
 そっとミウの口元に実を出してる。

 ぱく、とミウが食べて、ほくほく嬉しそうにモグモグしている。
 ……可愛い。


 ……つか、ルカとミウのやり取りが可愛いとか。
 可愛くないよな、可愛いのは、ミウだよな。

 思った瞬間。

「王子――――……」

 レジーが、顎に手をやって、考え込んでいる。


「……中身、魔物か何かに乗っ取られたとか、そんな事はないですか?」

 マジメな顔して、何言ってんだろうと思ったら、ルカが、ものすごい嫌そうに。

「ある訳ねーだろ」

 嫌そうな声に、ああ、ルカらしくないってことなのかと分かった時にはもう、三人が大笑い中で。キースまでが、めちゃくちゃ笑ってる。


 そんなの全く意に介さず、ルカはいくつかミウに食べさせた後、オレを見上げた。


「ほら、食え」
「……ん」

 何だか。ミウとのやりとりが可愛かったので。ついつい、食べてしまった。


 すると、ふ、とルカが目を細めて、笑う。



 ――――……こういう時。
 ほんと優しい顔、する。
 
 
 
  ……普段は、ムカつくけど。ふん。






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