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第2章「振られた翌日の、悪夢みたいな」

13.最初のHR

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 琉生と一緒に、担任する教室に行く。 
 ただでさえ初日、緊張するのに。琉生が一緒に……いやいやだめだ。集中集中。生徒の方に集中しよう。

「おはようございます」
 ドアを開けて中に入る。

「あー中川せんせ―」
 あちこちから名前を呼ばれて騒がしくなる。

「担任、先生で嬉しー」
 女の子達が言ってくれて、男子もなんだかんだ同意してくれてるっぽく。

「はーい、席についてくださいね」

 ドアの所で止まっていた私の後ろにいた琉生を、私が振り返ると。生徒達もその視線を追って振り返って……。

「えっ、めっちゃイケメン!」

 誰か女子がそう言って、皆が、騒ぎだした。

「はい、とりあえず席についてねー」
 私の声に、皆、騒ぎながらも席に着いた。

「では、皆さん。おはようございます」
「おはようございまーす」

 ざっとクラスを見渡す。
 割と皆、ちゃんと前を向いて座る子が多いクラスかも。良かった。

「一年間、皆さんの担任になりました、中川琴葉です。よろしくお願いします」
 そう言うと、お願いしまーす、とバラバラに返って来る。
 
「高校二年生、大切な時期です。受験に繋がる大事な学年ですし。一方では部活などで中心で頑張らないといけないと思います。色々楽しんで、経験して、充実した一年にしてください。困った事や相談事があったら、秘密厳守で聞きますから、いつでもどうぞ。あと、数学の補習は、頼まれなくてもしますけど……頼まれたら喜んでしますので、ほんとにいつでも声かけて下さいね」

 最後、嫌そうな返事と苦笑が返ってきたけれど。

 話してる間、こっちをちゃんと見てくれてるので、割といい雰囲気。
 まあぱっと見、第一印象から問題ありそう、ではないかな。まあそれでも、きっとこの先、色々あるのだろうけど。思春期は、色々難しい。

「それから、副担任の先生にも自己紹介してもらいますね。清水先生、どうぞ」

 私は教壇から降りて、琉生が上がると、生徒達の目が期待にキラキラしてる気がする。

 まあ……分かる。
 こんなカッコいい、若い先生が学校に居たら、楽しいよね。

 女子高だったら、ものすごい、モテるだろうなあ。
 男子が半分以上居るし、そこまでじゃないとは思うけど。

 ……いや。でも。
 女子生徒達のキラキラ顔を見てると、女子高じゃなくても、モテそうな気がする。

 ダントツで、王子様だもんなぁ。気持ちは、分かるよ、女子の皆。
 琉生は、黒板に、自分の名前を書いた。

「清水琉生です。数学を担当します。趣味はサッカー。教師としては新任なので至らないことも多いかもしれませんが、頑張ります。四年前までこの学校の生徒でした」

 そこで皆の顔が、ぱあっと嬉しそう。

「中川先生もですよね? ここの卒業生」
「うん、そうですね」

 生徒たちの言葉に頷くと、皆は琉生に質問を始める。

「部活とか何だったんですか?」
「担任の先生は誰でした?」

 とか質問が飛んできて、少しやり取りが終わった所で、琉生が、よろしく、と締めて挨拶終了。

「琉生先生、最後にしつもーん!」

 一人の男子生徒が手を挙げた。

「先生、モテますか?」

 何その質問。……桜井君だ。
 変な質問。彼女居ますかとかならよくある質問だけど。

 モテますかって……何て答えるんだろう。 
 皆わくわくした顔で琉生を見ている。

「モテそうですか?」
 ふ、と笑って、琉生が言って桜井君を見つめた。

「え――あ、はい」
 飲まれた桜井君が言葉に詰まって、それだけ言うと、クラスがどっと沸いた。

「そんなモテないですよ」

 クスクス笑う琉生に、絶対嘘だーと盛り上がってるのをなだめる。少し静かになってから、琉生にクラスの出席簿のコピーを渡した。

 目を、合わせるのがきつい……。うう。

 挨拶は、思ったよりも普通にできた。
 生徒の前に出れば、なんとか「教師」になれるみたい。

 この調子なら、授業はなんとかできるかも。そう思えた。
 けど、やっぱり、平常心で目を合わせることが、出来ない。早く慣れないと。

「出席をとりますね。名前を呼んでいくので、返事をして、清水先生に顔を見せてあげてください」

 皆がはーい、と言って笑って、琉生を見ている。
 こんな感じで、絡むことは可能かな。
 何とか、うまく、やりとりしないと。避け続ける訳にはいかないんだし。
 頑張れー私―。

 昨日の羽目を外した、過ちを、回収しなければ……。
 ……ていうかほんとに。
 こんな事になるとは。思いもしなかった。

 全然集中はできないけど、出席簿に沿って皆の名前を呼んでいき、なんとか、最初の出席を取り終えた。



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