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◇気合入れ直し

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「蒼紫?」

 ぐい、と腕を引かれて、背中をドアに押し付けられた。頬に触れられて、なんだかやたら、蒼紫が近い。

「――――……学ランが一番好きだろ」
「え?」

「オレの今日の衣装。学ランが一番好き、だよな?」
「――――……っ」

 かあ、と赤くなる。


「――――……さっきもこうされたかった?」

 抱き締められて。ちゅ、と優しくキスされた。
 顔にどんどん熱が上がっていく。


「……うん」

 こんな至近距離で見つめられて、嘘なんかつけない。


 頷くしかなくて、そしたら、蒼紫がふ、と笑って。
 キスした唇から、舌が挿しこまれた。

「……ん……ぅ」

 舌が触れ合って、絡んで。吸われる。


「……待っ……」

 だめだ、オレ、また顔、落ち着かなくなっちゃうから。


「あと少しだけ」
「――――……っ」

 ――――……ファンの女の子達が、セクシーだとかカッコよすぎるって褒める、蒼紫の瞳。超至近距離で、熱っぽく、緩む。


 ……テレビの、蒼紫の、比じゃない…………。


「――――……っ」


 ぞく、と背に震えが走って。
 丁寧に、舐めつくされるみたいにキスされて、離された。


「――――……お前の学ランも、すげえそそるし。なんかやらしい」
「……やらしい?」

 真正面から言われた言葉に、かあっと赤くなりながら、蒼紫を見つめると。


「カチッと着られてると、脱がせたくなるし。襲いたくなるよなー……」


 むぎゅ、と抱き締められる。
 かああああっと、顔にすべての血が集まっていく気がする。

 息、まともに、できない……。


「仕方ない。着替えるか――――……あ。脱がせてやろうか」
「え? え……ちょ」

 学ランのボタン、ぷちぷち外され。中のシャツのボタンも外される。
 蒼紫の手が、する、と胸に這って。心臓が、どきん!と震えた。


「や、やめ……」
「――――……可愛すぎなんだけど、お前……」

 ぷるぷる震えてると、蒼紫はくす、と笑って、頬にキスして、オレを離した。


「だめだこれ以上触ってたら、まずい。――――……着替えるか」

 よしよし、とオレの頭を撫でながら、ハンガーがかかってる方に歩き出す。


 ドキドキが収まらなくて、呆然と、歩いてく蒼紫を見てたけど。
 あ!と大事な事に気付いた。


「あ、蒼紫、ちょっと待って」

「ん?」

「脱がないで待ってて」

 オレは自分の鞄からスマホを取り出すと、蒼紫に向けた。



「カッコいい顔して?」

 ぷっと笑ってから、蒼紫がカメラに向けて、笑ってくれる。
 シャッターを押して、学ラン姿の蒼紫、ゲット。


「それ何すんの」
「見る」

「……何で」

「何でって。学ランの蒼紫、レアだから?」


 ぷ。蒼紫にまた笑われる。


「――――……なんか。お互いこんなにダダ漏れになるのに、よく、ばれないように我慢してたな……」

「……当り前じゃん。バレないことに最大限気を使ってたもん」



「――――……お前、さっき、撮影で最後見つめ合った時、照れたろ」
「あ……」


「ちょうどOKかかって良かったけど」

 言いながら蒼紫が上着を脱いでハンガーにかけてる。


「もいっかい、気合いれろよ。バレるぞ」
「……ていうか、蒼紫が」

「ん?」

「蒼紫が、今までと違う感じで、オレに笑いかけたりするから、だもん」


 そう言ったら、蒼紫は、え、と固まって。

「そうだった?」

 と苦笑い。


「そう言われると、確かに可愛いと思ってたな……」

 オレも蒼紫にボタンを外されたままの上着を脱いで、ハンガーにかけながら、蒼紫を見つめる。


「オレ、見つめ合った時は、大丈夫、耐えれる、て思ったのにさ」

 恨めし気に言うと、蒼紫が苦笑い。


「……お互い、気合、入れるか」
「うん。そだね」


「とりあえず当分はバレないように、行こ。邪魔されたら嫌だし」
「うん。分かってる」


 うんうん、とめっちゃ頷いて。
 ぷ、と笑った蒼紫に、頬に触れられて、ぷに、と摘ままれた。


「2人きりじゃない時は、触んねえから」
「ん」


「寮帰ったらいっぱい触る」
「……うん」

「つか。そろそろ着替えねーとヤバいか」
「うん」


 ぷ、と笑いあって。
 オレ達は、急いで、着替えに入った。


 



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