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◇可愛すぎなんだけど。

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「とりあえずシャワー浴びてきてください。ごはん、作っておくんで」
「うん」
「バスタオルとか、着替え、置いときますね。今日もう、どこも出ないでしょ?」
「出かけなくていいの?」
「だって、労わる日ですし。オレは後でちょっと買い物は行ってきますけど、すぐ帰ってきます」

 そう言うと、陽斗さんは柔らかく微笑みながら、オレを見上げた。

「買い物くらい行けるけど」
「今日は良いですよ。のんびりしてください」
「うん……まあ……分かった」

 陽斗さんはクスクス笑って頷くと、なんだかとってものんびりで歩いていって、ドアのところで振り返る。

「三上ー」
「はい?」

 いってくるね、と言いながら、バイバイ、と手をヒラヒラさせて、ニコニコ笑顔のまま、視界から消えていった。

「――――……」

 脱力。
 そのまま、しゃがんで、はー、とため息。

「…………」

 何それ。すっげえ、可愛すぎなんだけど。

 ……あの人、会社に居る人と、同じ人だよな……?

 会社で陽斗さんが、他の奴に今のをやったら、全員固まるだろうなあ。……可愛すぎて。
 一回やってみてほしい。……でも、あれやって、ライバルが増えたら困るから、やらせたくないけど。
 ……うろたえるのがオレだけじゃないって、証明したい……。

「……はー……」

 なんだかな。……確かオレ、昔からずっと、クールとかカッコいいとか。言われてなかったっけ。

 出来たら陽斗さんにも、カッコいいと、思われていたいんだけど。
 つかなんでこんなとこで、しゃがみこんでんの。……カッコ悪……。

 はーー。何なの、あれ。
 ちょっと意味不明にムカつくくらい。……可愛すぎ。困る。 

 ぐっと膝に力を入れて、立ち上がる。
 バスタオルと、オレの服でも少し小さめな服を持って、脱衣所に向かう。

「ここ置いときますね」

 少し大きな声で呼びかけたら、シャワーが止まった。

「あ、三上ー」
「はい?」

 バスルームから声がするので、出ようとしていた足を止めて、陽斗さんの言葉を待っていると。

「もうご飯作り始めてる?」
「いや。まだですけど。すぐ出来ますよ、パンなので、卵とかベーコン焼くだけで」
「湯舟につかりたいんだけど、いい?」
「あ、いいですよ。そしたら陽斗さんが出てからやるので、ゆっくりしてきてください」

 そう言うと、んー、と答える陽斗さん。一度止めたシャワーをまた出した音がする。疲れさせたから、ゆっくり入りたいのも分かる気がして、オレもゆっくり待つことにした。
  五分位経った時。バスルームから、呼び出しの音楽が流れたので、様子を見に向かう。

「陽斗さん、呼んだ?」
「うん。呼んだー」
「――――……」

 少し待つけど何も言わない。洗い場に影が見えないので、もう湯舟に居るんだなと思いながら、バスルームのドアを開けて、覗いた。
 もうすっかり湯船につかってて、覗いたオレを見上げてくる。

「どうしました?」
「ん、あの……」
「……?」
 なんだかとっても言い淀んでる感じがして、オレは首を傾げた。

「……あのさ」
「ん?」

「一緒に入るっていうのは……?」
「え」

「も一回脱いで入るの面倒だったら、いいんだけど……」

 言いながら、なんだか、どんどんお湯に沈んでいってしまいそうな感じ。
 オレが突然の誘いにびっくりしつつ「すぐ入るんで待っててください」と言うと。ふ、と照れた感じで嬉しそうに笑う。

「急がなくていいよー」
「急ぎます」

 言うと、陽斗さんはクスクス笑って、ん、と頷く。

 なんでそんなに、可愛いかな。
 ん? ……襲っていい? …………それは、だめかな。
 
 とか、そこまで考えて、ふと固まる。
 ……なんかオレ、ほんと、そういうこと覚えたての高校生とかみてーだな……。

 ちょっとは余裕を見せたいので、すぐ手を出すとかはやめようと、密かに誓う。




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