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side*陽斗 6

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 何か、今日はもうその話は良いやと思ったのか、志樹の話は、三上の話ではなくなった。もう完全に会社の話や、世間話。いつもの会話。

「もう少し飲むか?」
「うん」

「何飲む?」

 メニューを見ながら、飲むものを決める。
 注文をしてくれた志樹を見ながら、なんだかホッとする。


 志樹と電話で話して、なんか、三上との事は、もうほぼバレてたし。
 ――――……志樹はもう最初から、どっちでもいいみたいな、軽い感じで。全然反対するとか、そういうのもないし、緊張しなくっても良かったのは、何となく分かってはいたんだけど。

 それでも、オレと三上、男同士だし。やっぱり、結構、気は使ったというか。すごく、ドキドキしてたから。

 こうして、とりあえず色々話し終えて。
 でも、今までと変わらない感じで話してくれる志樹に感謝とともに。
 本当に、すごく、ホッとした。

 お酒が運ばれてきて、志樹とまた飲みながらそんな事を考えていたら、ふ、と笑みが零れた。 

「――――……何笑ってる?」

 志樹に、クス、と笑われて、そう聞かれた。

 ああ、なんか。自然に笑っちゃったなあと、思いながら、志樹をまっすぐに見つめた。

「……志樹は、良い奴だなーと思って」
「――――……」

「普通、そんなに物分かり良くないと思うんだよね……。オレにもし弟が居てさ、もし男の恋人がオレのとこに来たら――――……そんな余裕で居られるかなあって思うし」

「まあ――――……オレは、お前を知ってるからな」

 ふ、と笑んで、志樹はオレを見つめる。

「陽斗だから。まあ、蒼生がそーなっても、まあ、何となく分かる」
「――――……オレだから?なの? ふーん。……志樹って、結構、オレの事好きなの?」

「――――……」

 何だか、少し黙って、志樹がオレを見て、苦笑い。

「酔ってるか? 陽斗」
「んー。まあ。軽く……?」

 ちょっとフワフワしてるだけ。

「オレの事好きなの?って――――……蒼生が聞いたら、慌てるぞ」
「……友達としてじゃん」

「蒼生は焦ると思うけど」

 クッと笑いながら。

「まあ。好きじゃなきゃ、オレは飯に誘ったりしないけど」
「そっかー。じゃあ、良かった」

 志樹は、ふ、と笑って、オレを見つめる。

「そういや、陽斗。この後、蒼生は迎えに来るのか?」
「ん? ううん。電話はかけると思うけど」

「――――……今、連絡してみな」
「……でも、友達の店に居るんだろうし。気づかないかも」

「絶対、一秒で出るから」

 ククッと笑って、志樹がそう言う。
 そうかなあ。出るかなあ……?

「――――……」


 とりあえず、三上のスマホを呼び出してみる。
 鳴り始めてすぐに、通話時間の表示が始まった。

 あれ。もう出た?


『もしもし、陽斗さん?』

 ああ。なんか。
 ……三上の声。ちょっと久しぶり。
 咄嗟に、そんな事、思ってしまう。なんだか、ちょっと……嬉しいかも。


「三上? 出るの、早や……」

 オレの言葉に、目の前で志樹が、ふ、と笑ってる。

『そろそろかなと思ってたから』
「……三上は、まだお店?」

『うん。祥太郎の店。陽斗さんは? 兄貴と一緒?』
「うん。まだ一緒」

『ね、オレ、迎えに行こうか?』

 ――――……なんか。そんな言葉に。
 すごく嬉しくなってしまう。

 ふ、と笑んでから。

「――――……いいよ、帰れるから」
『なんか声、ふわふわした感じ。結構酔ってるでしょ?』

「……少し飲んだだけ。そんな酔ってないよ」

 クスクス笑って、返していると。

「陽斗。電話貸して」
「え? あ、うん……」

 スマホを志樹に渡すと、志樹が「蒼生?」と話し始める。

「結構酔ってるみたいだからさ。来れるなら迎えに来い」

 そんな志樹の言葉に、え、と驚く。

「オレ大丈夫だよ、志樹」

 言ってるのに、いいから、と手で制される。

「今ここは――――……」

 この場所の説明まで始めてしまった。
 その後すぐ電話を切って、切れたスマホを返される。


「良いのに、迎えとか」
「あいつ、もしかしたら迎えにいくかもって思って、家帰らずあの店で待ってたらしいから。喜んで来るから」

「――――……ほんと。いいのに」
「……会いたいと思ったろ?」

「え?」

「蒼生が迎えにいこうかって言った時、嬉しそうな顔したのに、何で断るんだよ」
「え。……してた?」

 聞くと。


「してた」

 クスクス笑って、志樹が言う。


「さっき言ってた一ヶ月って奴。――――……更新しながらやってくんでもいいと思うけど。どーせ蒼生は喜んでそれを受け入れてるんだろうし」
「――――……」

「あんま我慢しないで、言いたい事言えよな」

 我慢。なんて してるかな、オレ。


「――――……マジの、アドバイス。マジで聞いとけ?」



 にや、と笑われて。
 ……ん、と頷いた。




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