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side*陽斗 4
しおりを挟む数分後。
チャイムが鳴って、通話を押すと、三上が映った。
「先輩、openボタン押して下さい」
言われて、エントランスの自動ドアを開けるボタンを押す。
それから、玄関に行って、鍵を開けた。
なんとなく、外に出て迎えるとかは、ちょっと変かなと思って、すこしだけ顔を出してみた。
エレベーターが止まる音が遠くで小さく聞こえて。
そっちの方を見ていると。すごく、早足で歩いてくる三上が見えた。
「――――……」
途中で、ドアを少し開けて覗いてるオレに気付いて、笑顔になる。
「ただいま、陽斗さん」
「うん。おかえり」
ドアが大きく開いて、三上が中に入ってくる。
三上は、玄関の端に鞄を置いて、「シャワー浴びてくるね」と、ろくに話もしないで、バスルームに消えてしまった。
「――――……」
あれ。
もっと、すっごく喜ぶのかと思ってた
まあ、笑顔には、なってたけど。
……なんか、ちょっと拍子抜け?
リビングに戻って、つけていたテレビを、なんとなくぼー、と眺めながら。
とりあえず三上が出てくるのを待っていたら。
がちゃ、とバスルームが開く音がした。
と思ったらリビングにすぐ現れて。
髪の毛の雫をタオルで拭きながら、オレに近付いてきて。
何となく、ソファから立ち上がった瞬間。腕を取られて引き寄せられて。
ぎゅー、と抱き締められた。
「……三上?」
「――――……ただいま、陽斗さん」
なんか、めちゃくちゃ暖かくて、ホコホコしている。
むぎゅむぎゅと、抱き締められて。ちょっと戸惑う。
「――――……?」
少し離されて、見下ろされる。
「なんで、手、回してくんないの? 嫌?」
オレが抱き付けなくて戸惑ってた手にツッコミが入る。
「あ。いや――――……だって」
「だって、何?」
「……なんか。さっき。すぐシャワー行ったし」
「――――……」
三上が、何回か瞬きして。
それから、ふわ、と嬉しそうに笑った。
「ごめんね、なんか、禁煙席空いてなくて、喫煙席の方に座ったらすっげー煙いし、なんか、そんなんで陽斗さん、抱き締めたくなくて」
「――――……」
「だからもう、速攻シャワー浴びたんだけど」
「――――……っ」
「何? ……寂しくなっちゃいました?」
「――――……っっ!」
……っっじゃあ、そう言えよ!
っなんか、あんまり嬉しくなかったのかなと思って、ちょっと、来なきゃよかったかなとか、少し思っちゃったじゃないか!
「――――……あー。もー」
「――――……」
「可愛くて、無理」
三上の手が顎に触れて。まっすぐ見上げらせられて。
「――――……っん……」
深く、重なってきた。
ぎゅ、と抱き締められて。三上の手が、背中を支える。
「――――……ン、……っ」
舌が、唇の間から少しだけ入ってきて、オレの舌先にそっと触れる。
触れるだけ。
絡んでこない。
「――――……?」
瞳を開けると、三上がオレを見てる視線と絡んで。
ふ、と優しく笑まれる。
キスしたまま、そんな風に見つめられると。
かあっと、顔に血が集まってくる。
「……キスしていいなら、舌、ちょうだい」
少しだけ離されて、囁かれて。また、舌先が、触れてくる。
ぞく、とした感覚が体の奥で沸いて、ぴく、と手が、震えた。
その手で、三上の服、握り締めて。
「――――……」
舌を、三上の舌に、そっと触れさせたら。
ふ、と三上が、笑うような吐息。
すぐに、深く、絡められて。
ぎゅ、と瞳を閉じた。
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