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◇バレる?

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「先輩、わらび餅、どれくらい食べます?」
「三上食べちゃって良いよ?」
「いや、大丈夫です」

「だって美味しいって言ってたじゃん」

 きょとん、としてるけど。


「だから、オレ、一口目が一番美味しいんですって。甘いの、続くと……」
「ほんと、変なの、三上。全然意味わかんない」

「分かんないですか?」
「うん。一口め美味しいなら、その後もずっと美味しいじゃん」

「……うえってしてきますけど」

「全然分かんない」

 言いながら、オレを見て笑う。


 ――――……ドキ。


 金曜からこっち、笑顔にもだいぶ慣れたんだけど。
 ――――……楽しそうに、目を細めた笑顔で見つめられたりすると。

 胸が弾む。


 は。
 ――――……好きすぎ。オレ。この人。



「じゃあ後一口食べたら、先輩にあげますね」
「いーの?」

 そんな風に言いながら、嬉しそう。

 もう一口わらび餅を口に入れる。
 まだ美味いけど、やっぱ、これ以上は要らないな。

「はいどーぞ」
「ありがと、三上」

 わらび餅の皿を真ん中に置いて、先輩がきなこスイーツを食べ終わる所を見守る。


 ……こんな甘党とか。
 食べてる時、幸せそうで、なんか幼くなって、ほんと、可愛く見える。

 そんな事を考えながら、先輩を何となく見つめていたら。


「夜には東京だなー……」

 ぽそ、と先輩が呟いた。


「……そうですね」

「明日からまた会社だな」

「……そうですね」


 帰りたくないなー。しばらく先輩とここに居られたらいいのに。
 そんな風に思っていると。


 先輩がいただきまーす、とわらび餅を食べ始めた。


「美味しー」


 あんまりに幸せそうなので。
 ふ、と笑いながらその様子を眺めていると。

 オレをふと見た先輩は、ちょっと眉を顰めた。

 ん?と見つめ返すと。


「……三上さ」
「はい」

「会社で、オレの事、あんま見ないで」
「――――……はい?」


 ……何だって??
  

 先輩は、もう一口、ぱくっと食べてから。


「……そんな優しい顔で見つめてたら、バレる」
「――――……」


 優しい顔って。……してたかな?
 そんな言い方をされると、なんか無性に恥ずかしいけど。

 でもそっちよりも、今気になるのは。

「……バレるって、何がですか?」

 どうしても気になって聞いてみた。
 え、と先輩が顔を上げて、それから、あー……んーと……と首を傾げてる。

「……バレるって――――…… なんか、色々」
「色々って?」

「……キスしたり……」
「バレませんよ」

「……色んな事、したり」
「バレないですよ」

「――――……」

「オレが先輩見てるからって、オレ達がそんな事したなんて、誰も思いませんよ」
「――――……そう?」

「そうですよ」

 そっか、と先輩は一度口を閉じて。
 それからまたわらび餅。

「ほんとこれ溶ける……」

 ほくほくになった先輩が、ほんと可愛い。
 と思ってたら、また、先輩が、眉を顰める。


「……だから、そういう顔だってば、絶対バレるから」


「――――……」




 ……またオレ、そういう顔してたってことか。

 まあ確か、今、ものすごく可愛いなーと思っていた。



 なんかすごく困ったみたいにふくれてるのが、なんか可笑しい。






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