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◇可愛いしか。

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 何となくずっと、ドキドキしながらの食事を終えて。
 約束した通り薬局に寄った。先輩には外で待っててもらって。
 ゴムのついでに、隣に置いてあるローションに気付く。

 必要……?? 
 思わず、店の隅に行って、男同士で検索してしまう。
 数秒でざっと見て、両方一緒に買う事にした。


 会計を済ませて、店の外で待ってる先輩の元に戻った。


「おまたせ、先輩」
「あ……うん」

 なんか、すごーく、微妙な顔をして、オレを見つめてくる。

「どうかしましたか?」

 聞くと、んー、と首を傾げてる。

「歩きます?」
「……ん」

 何となく2人歩き出しながら、まだ微妙な顔をしている先輩を見てると。


「――――……なんか……」
「ん?」

「……待ってるの、すげえ恥ずかしい」
「え? 何で?」

 恥ずかしい? 何で?? 


「……だって、買ってる物が何か分かってるのに、なんか、それを待ってるって……」

「――――……」



 言ってる途中で、そんなに恥ずかしくなるなら、言わなきゃいいのに。

 ほんと、可愛いなあ、先輩。



「……オレさっき」
「え?」

「先輩惚れさせるとか言ったけど……」
「――――……ああ。うん?」

 話が急に変わったので、先輩はオレを不思議そうに見上げた。
 

「……どんな好きか分かんないとか、オレ、夕方言ってたなーと思って」
「――――……」


「…………惚れさせたい、て思うような好きなんだと、思います」
「――――……」

 先輩は何だか数回パチパチ瞬きをして。


「……っなんかほんと三上ってさ――――……」

 そこまで言って、言葉が出なくなったみたいで、口を噤んで、前を向いてしまう。


「だからね、先輩」
「……」


「……なんかその、薬局待ってるのが恥ずかしいとか、そういう、すげえ可愛いなーて事を、平気でオレに向けて言うの、やめた方が良いと思うんですけど」
「――――……」


 先輩は、オレのその言葉を聞いて、は?という表情で、またオレを見上げてきた。


「……三上の、可愛いとかいう基準が、全く分かんないんだけど」

 本気で分からないんだろうなーという顔でオレを見ながら、先輩がそう言ってくる。

 なんかこの微妙に嚙み合わない会話が、すごい楽しいとか。
 ――――……そこら辺は、自分でもよく、分からないけど。

 でも楽しい事は絶対で。



 男で、普段は、すごくカッコいい人だし。
 ていうか、会社の奴らとか、絶対先輩の事、カッコいいとしか思ってないだろうし。


 こんな、可愛いとか。
 ――――……あんなに乱れてエロいとか。


 …………他の奴は知らないんだろうなと思うと。
 すごく、優越感と。

 他の奴は永遠に知らなくていいやと思う、独占欲とが、
 心を占める。


「先輩」
「ん?」


「――――……先輩の秘密、なんですけど」
「……うん?」


「絶対、他の奴に話さないでくださいね?」
「――――……」

「絶対ですよ、絶対オレが最初で最後で」

 そう言ったら。
 むー、と口を尖らせて。




「……ていうかあれ…… 今悩んでないから」
「――――……」


「……だから、言う訳ないし」

 小さく言って、何か、俯いてる。

 ん? どういうこと ――――……悩んでないの?
 ……あ、そっか。それって。


「……オレとが良かったから?」

 思うままに、聞いたら。

 自分がパスを投げてきたくせに。
 瞬間的に、真っ赤になって、こっちを見ずに、そのままぷい、と逆側を向いてしまう。


 ――――……うわー。耳まで真っ赤。うなじまで、赤いし。
 すっげー可愛いし。


 す、と手を伸ばして、赤いうなじに触ると。
 びくう!と震えて、オレを咄嗟に睨んでくる。

 睨むといっても、真っ赤すぎて。


「――――……っ」

 マジで可愛い。
 くっ、と笑ってしまうと、先輩は、もうほんと困った顔で怒ってて。



 旅館に近付くにつれ、人気がなくなってきていたので。
 先輩の手をぐ、と掴んだ。


「もう、ほんと、早く帰りましょ」
「――――……っ」

 返事はしてくれないし、こっちも見てはくれないけど。
 でも、振りほどきはなしない。



 ――――……もう悩んでないんだ。
 ふーん。……そー、なんだ。




 ――――……ほんとに、すげぇ可愛いな。
 もはや可愛いしか出てこない。……やばいな。これは。









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