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◇連れ込まれる

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 もうほんとに。
 やばいくらい。キスしたいし。


 ほんと困る、この人。


「――――……三上、あの」
「……何ですか」

 不意に手を掴まれて、引かれる。
 
 オレが今寄りかかってたのはトイレだったみたいで。裏側にすぐ、トイレへの入り口があった。
 すげー豪華なトイレだな。 なんて的外れな事を思いながら。


「――――……」

 ん? ……何でトイレに連れてこられた?
 トイレは空いてて、今は誰もいなかった。
 
  小用のトイレが並んでいて、奥に個室トイレがずらっと並んでいる。
 

「先輩?」

 奥まった方に連れていかれて。周りに誰も居ない事を確認しながら、一緒に、個室に入らされた。


 ――――……ん? 何?


「先輩?」
「――――……」

 小声で言いながら考えるけれど。
 2人でトイレの個室にこもる理由が全く浮かばない。

 ――――……2人きりの個室とか。
 ……エロい事したくなるのは、オレがいけないんだよな。



「……どうしたんですか?」

 そう言って、先輩の顔を見ようとしたら。
 肩に手が触れて、ぐい、と引かれた。


「せ――――……」


 唇が重なった。
 柔らかく。

「――――……っなに……」

 思わず、ぱ、と離れてしまう。


 ――――……何のつもりだ。


「……キス、したい、三上」

 ――――……ほんとにこの人は。
 意味、わかんねえ。

 言う事もだし、やる、ことも――――……。



 耳まで赤くして、俯こうとした先輩の顎に手をかけて上げさせる。

 
「――――……どういうつもりですか?」

「キスするって、お前、言った」


「煽るならしますよって言っただけで――――……」
「っ……言われたら、したくなって……ごめん」


 目の前で、ますます赤くなって、いく。


「――――……」

 

 体の熱が、一気に燃え上がったみたいな。
 一瞬何も考えられなくなって。


 先輩、抱き寄せて、覆いかぶさるみたいに、口づけた。



「……ン、……っ」


 先輩がした触れるだけのキスとは、全然違うキスをしてしまう。
 深くふさいで。舌を絡める。

 

「――――……っ……」


 ふ、という吐息だけが、漏れる。

 そもそも、トイレの中にも音楽が鳴り響いていて、多少の声なら聞こえないはず。


「――――……ふ、は……っ……」


 潤む瞳。熱い息が、唇の間で零れる。

 ……まためちゃくちゃ、エロくなってるし。



「――――……ン……っ……」

 舌、深く絡めて。それから、吸って、優しく噛むと。
 抱き締めてる背が、素直に反応して、びくびく震える。



「陽斗さん……」

 唇を離して、耳元で、囁くと。

 びく、と大きく震える。




「だめです、オレ、これ以上は――――……」
「――――……」



「止まんなくなるから、ここまでで」


 オレは、先輩をすっぽり抱きしめた。
 顔見えないように。

 涙目とか、見てると、止まらなくなる。



「――――……三上の、熱い」

 うん。まあ。分かってるだろうなとは思ったけど。
 やめて、その言い方も。マジで。襲うよ?


「……うん。そのままほっといて。収まるから」
「――――……三上、オレとキスして、熱くなるんだな……」


「なりますよ。――――……てか、昨日で、分かったでしょ」
「……オレも、熱い。――――……はー。……ヤバいなー……」


「……っ……何がですか」

 ヤバいのは、あんたのその言動全部だけど。

 



「キスしたくて、我慢できなくなるなんて――――……ほんとにヤバい」



 ……だから。
 ほんとに、先輩……。



「……オレと、キスしたくて我慢できなくなったんですか?」


 抱き締めたまま、先輩に聞くと。
 声は出さず、うん、と頷いて、オレに顔を埋めてくる。

 

 あーもう……。


 ………可愛すぎて、ヤバいな。
 




 こんなとこで、これ以上する訳にも行かず。
 早く収まれと祈りつつ。


 ほんの少し、抱き付くみたいに手が回ってくるだけで、
 また意味が分からない位、興奮するとか。

 
 


「……ごめん。こんなとこ連れ込んで」



 しばらくして、落ち着いてきた頃。
 ぽそ、と、先輩がつぶやく。


 確かに連れ込まれた。
 ホテル連れ込みたいとか、思ってたら。トイレに連れ込まれるという。


 ――――……なんか、可笑しくなる。


 連れ込まれた事は、それは別に謝られるような事じゃない。

 いや――――……別に、ていうか、大歓迎というか。




 だってオレは、先輩に触れたいから。







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