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side*陽斗 10

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 ……にしても。
 三上って、顔、ほんとにすげー整ってんな。志樹と並んで見た時、迫力あるなーと思ったっけ。

 分かってはいたけど、あんまり見ないようにしてたというか。
 見つめ合わないようにしていたからかな。意識してなかったけど。

 下向いてると、睫毛キレイだな。鼻筋、通ってるし。
 ほんと、イケメンていうんだろうなあ……。

 ……この顔、昨日あまりに、近くで、見すぎて……。

 と、そこでまた、脳裏にやばいシーンが浮かんできて、くらくらしてきそうになった時。また三上が視線を上げた。

 ――――……つか。もう。


「何で、三上、突然こっち向くの」

 何だか目が合うタイミングが嫌すぎて、思わずそんな風に言ってしまった。
 完全に八つ当たりみたいな……。

 当然だけど、は? という顔で、三上に見つめられる。

「視線、感じるから。 何で見てるんですか?」

「いや。なんか……」
「なんか?」

「――――……顔、すげー整ってるなーと思って」
「――――……」

「下むいてると、余計なんかいつもと違う感じでみえるなーと思って、見てただけだよ」

 変に思われたくなくて懸命に言った言葉に。

「先輩、オレの顔好きてこと?」

 なんて聞いてきた。
 瞬間、ものすごい、焦る。

 え、そんなこと思ってなかったけど。
 ん? ……そうなのか、オレ?


「――――……いや、べつ、にそういう……??」

 あれ? 好きってことなの?? オレ。


「……先輩さ。もうちょっと考えて喋ってくれませんか」
「え?」

「――――……先輩は意味なく言ってる言葉でも、こっちは、めちゃくちゃ意識するんですけど。 ていうか、そんなの言われてたら、意識してなくても、意識し始めちゃうというか」
「――――……」

 意識、する。
 …………意識って。


「……そんで。オレの顔、好きなんですか?」
「――――……」

「好きだから言ったんです? それともなーんも考えないで、整ってるなーていう、ただの感想? まあ。整ってるつーのは、嬉しくなくは、ないんですけど……」

 ため息を付かれてしまう。
 そんな事言われても。意識するとか言われて……なんて言ったらいいのか、全然頭が働かない。

 オレ、普段――――…… 色々考えて、最速で最善で、最大限効果の出る仕事をしようとしてるし。多分、それはうまくいってる。評価もされてるし、信頼もされてる、筈。

 なのに何で、ずっと、三上との会話、うまく出来ないんだろう。

 言われてから考えたり。
 言われてもよく分からなくて、何も返せなくなったり。


「整ってるなっていうのは、初めて見た時から思ってたし。 志樹と2人で、迫力あんなーとも思ってたし……」
「……ただの感想ってこと?」


 ただの感想って……何て言えば良いんだよ。
 ただの、感想じゃなかったら、なんなの。

 ていうか……。
 何考えてたんだっけ、オレ……。
 だから……。


「――――……ただ……昨日めちゃくちゃ近くで顔見ちゃったな、とか……」


 …………オレって、今、何言ってんだ。
 近くで見ちゃったって。どこでって聞かれたら、何て言うつもり。


 目の前で固まってた三上は、何も言わずに。
 小さく、息を、短く吐き出すと。


 不意に肘を立てて。
 パンフを顔の前に持って、完全に顔を隠してしまった。


 そのまま。
 パンフだけ、めくってるだけで。
 全然。顔を見せてはくれない。



 ちょっと気まずいけど。
 ――――……ちょうど、良かった。


 もう心臓が、バクバクしてたから。
 ――――……近くで見てたって事に詳しく突っ込まれたら、何て言おうかと、思った。布団で? ……すごい事しながら、見てたって? 言える訳ないし。



 オレほんと。
 ――――……なんでこんなに、アホみたいな会話してんだろ。

 
 三上に、もうちょっと考えて喋ってくれませんかって、言われてしまった。
 …………バカだと思われてるかな。
 うん。思うよな。

 オレも思うもんな……。






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