上 下
35 / 273

◇お悩み相談

しおりを挟む

 
 
「あ、じゃあ先輩の秘密――――……」
「え?」

「先輩の秘密、教えてくださいって言ったら?」
「えー……それはちょっと」

 先輩がちょっと困った顔で、眉を寄せた。


「あ、無理にとは言いませんけど」

 すぐ退くあたり、オレ、ほんとに弱いな。
 自分に苦笑いしてしまいつつ。


 なんかちょっと可愛いけど……。
 なんて、頭おかしいような事を思いながら、先輩の、ちょっと困った顔を眺めてると。


「……オレの秘密って、悩み相談みたいになっちゃうし」

 そんな事を言い出した。

 悩んでるってこと? 
 ……その秘密で?


 何だろう。
 ますます、気になる。


「――――……オレ、すっげえ気になるんですけど」
「……そうだよね。ここまで言って話さないのもなあ……でもなあ……」
「やっぱり嫌ですか?」

「嫌っつーか。……聞いた三上が困るかもって思って」


 ……さっぱりわかんねえ。
 こういうのかなっていう予想もつかない。

 でも、何にしても。

「別に先輩が悩んでる事聞いても、オレは困らないと思うんですけど……」
「……返答に困るんじゃないかなーって」

「……もう言っちゃいませんか? イイですよ、相談、乗りますよ」
「えー……うーん……」

 どうしようかなー、なんて言いながら、先輩は苦笑い。

「オレ総長ん時、結構色んな相談乗ってましたし。今も後輩たち、愚痴ってくるし。大概のこと、驚かないと思うんですけど」

 話しやすくなるかな、と思って、そう言うと。
 まあ事実だから、多分、恋愛相談から始まり、家の事やら進路まで、かなり色々話しは聞いてきたし。


「ふーん……そっかー。まあいっか……じゃあ相談、乗って」
「はい」

「――――……オレさ」

 言い出した先輩に、邪魔しないように、声は出さずに頷いた。


「あ。誰にも秘密だぞ?」
「……言わないですよ」

 がく。
 もうくると 思ったのに、再度そこ確認か。 どんだけだ。


「そんなに言いたくなかったら、聞かなくてもいいですよ?」
「ここまで来たら言うって。ごめん」

 先輩、苦笑いしてる。
 ほんとに聞いていいのかなと思ったら。


「なんかさー、オレさ、最近合コンとか行くと、すっげえ、モテるんだけどさ」
「――――……はぁ……」

 モテるのが、悩み??
 ……まあ、モテるだろうけど。


「どうモテるんですか?」
「さっきも言ったけどさ。合コンとかいくとさ、連絡先渡されたり、聞かれたり――――……何日かしてから、全然知らない女の子から、知り合い経由でいきなり連絡が来たりしてさー……一回いくと、後々まで、すごいんだよね……」

 とっても嫌そうなので、自慢ではないらしい。
 それが悩み??

「……まあ、モテるのは分かりますけど。あ、でも」
「ん?」


「誰か特定の1人、持ち帰ったりとかしないんですか? それがあれば、複数から来る事は無いんじゃないですか?」

 オレは大体そうだな。
 ……まあ。ほとんど一夜限りのお楽しみ、て感じだけど。


「――――……こっからが悩みなんだけどさ」
「あ、はい」

 ここからなのか。


「……なんか、迫られ過ぎたせいなのか、なんなのかよく分かんないんだけどさ」
「はい」

「なんか、最近、ほんっとにそーいう気分にならなくてさ」
「――――……」

「……困ってるんだよな」
「――――……えーーっと……?」


「ん?」


「……たたないっつー事ですか?」
「いや? たつよ?」

 あんまりな質問かと思ったけど、けろっとして、普通に答える先輩。

「――――……」

 たつのか。
 ……まあ当たり前か。綺麗でも男たもんな。

 ていうか。
 この人、女と、どういう顔してするんだろ。


「気分だよ、気分。 全然その気になんねーの」
「――――……疲れてるんじゃないですか??」

 それ位しか、浮かばない。


「まあ、そうならいいんだけど」


 先輩、頬杖をついて、ため息。


「でももう3年近くだよ? やばくない?オレ」

 んー。ヤバい。かな。3年って結構長い。


「別にできるんだけどさあ。そうなってからも、何回かはしてるけど。全然盛り上がらないし。終わってからも、疲れたななーてだけでさー」
「――――……」

 こてん、とテーブルに突っ伏してしまった。


 してるのか。まあ。そりゃそうか。
 
 でもなんか。
 先輩と、そういう行為が、なんかあんまり結びつかない。
 あんまりというか、全然。

 さっきから変にドキドキしてたけど。
 それはただオレがやましいだけで。


 ――――……潔癖な、綺麗なイメジで。


「あれ。先輩、寝てます?」
「起きてるよ……」

 むにゃむにゃしてる。
 ……何でこんなに無駄に可愛いのか、
 可愛く見えるオレが頭おかしいのか。





 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

処理中です...