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◇部屋風呂。

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 そのまま、大の字で、倒れていたら。
 思っていたよりもかなり早く、先輩が戻ってきた。

「――――……おーい、三上ー? 疲れちゃった?」

 倒れてるオレを、上からじっと見つめて、先輩はクスクス笑う。


 ――――……だからほんとに。
 そーやって、楽しそうに、笑うのさ……。

 ため息をつきながら、ゆっくり起き上がる。

「アルコールは、冷蔵後の中に結構色々入ってるんだって。だからちょっとつまみになるもの、売店で買ってきた」
「――――……ありがとうございます」
「んー」

 買ってきたものをテーブルに置いてから、先輩は奥へと歩いて行った。

「三上、見にきてー」

 少しして、先輩の声。
 立ち上がって、先輩の元へ行くと。

「うわ、すげー」

 思わず自然と声が漏れた。

 綺麗な、内風呂。露天ではないけれど、完全にガラス張りなので、外の景色が拝める。浴槽につかれば、下の庭園の景色も、空も見えそう。

「大浴場もあるらしいけど、そっちは行かなくてもいい?」
「ですね。こっちで十分でしょ。すげーな。温泉なんだ、ここも」

「オレ部屋に風呂がついてるとこは初めてかも」
「オレ、前に彼女と行きましたけど普通のお湯だったから。……ここ、温泉なの、いいですね。弱アルカリ性のお湯だから、肌ツルツルになるって、書いてありますよ」
「三上、ツルツルになりたいの??」

 先輩がクスクス笑って、オレを振り返る。

 あんたのその肌がもっとキレイになんのかな、とは、ちょっと思ったけど。

 オレはツルツル、興味ねえっつの……。
 そう思いながら。

「いや、オレは別に」

 そう言ったら。

「――――……オレは別にって…何? オレにツルツルをすすめてんの?」

 ぷ、と笑いながら、先輩が言う。

 ……まあ、そうなんだけど。
 思いながら、何となく返事をぼやかしていると。


「確かに、カップルで来たら良さそうだよな。彼女が喜びそう」

 先輩が、浴槽に張られたお湯に指先を入れてる。

「あったかいなー。もう、入っちゃおうぜ、三上」
「――――……え?」

「だって、飲み直してから入るより、飲む前の方がいいだろ?」

 いや、そうなんだけど。
 ――――……飲む前とか後とかの話をしてるんじゃなくて。


 あんたのその言い方って。
 ……入っちゃおうぜ、って。

 
「シャワー、ちゃんと2つついてるし。一緒に入っちゃおうよ。風呂の準備しよーと」


 言いながら、先輩が部屋に戻っていく。


 綺麗な景色が広がる、良い雰囲気の風呂場を、呆然と、見つめてしまう。


 ……嘘でしょ? 
 思ったより広くて、全然2人で入れるだろうけど……。
 いやいや、一緒に入んの?

 いやいや。オレ、無理だな。
 拒否しよう。

 部屋に戻って、風呂の準備をしてる先輩の後ろ姿に向けて。


「先輩、オレ、後で1人でゆっくり入りま」
「オレ先に行って入ってるから、早くなー?」

「――――…………」

 この人、たまに、ほんとに人の話、聞かねえな。


 さっさと楽しそうに風呂に消えた先輩に。
 思わずその場にしゃがみこんで、はー、とため息。



 ――――……これ、断る方が変か…?

 ……意識してなかったら、全然問題なく、入るよな。
 ――――……でも、オレ、絶対入んねえほうがいいと思うんだけど……。


 でもやっぱり、変か……? 意識してるみたい……?



「三上―??」


 先輩の呼ぶ声。



 つか、マジ無理なんだけど……。
 はー、とため息。


 

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