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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「ため息しか」

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 しばらくの沈黙の後。オレはため息とともに。 

「もーいいや……お前に隠しても、無駄な気がするし」

 そう言ったら、亮也はニヤ、と笑って、「そうそう。全部白状しちゃいな?」と言う。


「……逃げてきた相手が仁だってのは……合ってるんだけど……」
「けど?」

「もう今は違うから、今日、態度が悪かった理由はよく分からない」

 そう言うと、亮也は首を傾げた。

「今は違うって何?」
「……仁も今年入学するんだけど……昔のは勘違いだったって。兄弟でやり直したいって……謝ってきてくれたから、今、一緒に暮らしてて……」

「――――へー……」

 何だか色んな思いが籠ってそうな、意味ありげな声で呟いて、亮也はしばらく黙って。それから、オレを見つめた。

「二年間、会ってなかったの? 連絡は?」
「全然。取らなかった」
「向こうからも?」
「うん」

「……じゃあその間に、オレら一緒に居たのか」

 ふーん、と、亮也が考え深げに頷いてる。

「弟から告られて、か」
「……仁とは血は繋がってないよ。親が再婚したから」
「ああ。なるほど……」

 また、ふーん、と頷いて。

「現実にあるんだなー義理の家族と恋愛とか。……まあ、男同士だからさらにレアだと思うけど」
「――――ん……」

「男の兄弟ってなると、遠慮とかも無さそうだし、よっぽどじゃないと、好きになる事なんか、なさそうだけど……」
「……そーだな」

 亮也は、んーー、と少し唸ってから。

「……なーんか…… 彰のさぁ……よく分かんなかった部分が、今全部はっきりしたような感覚。分かる? オレ今すっごいすっきりしてるんだよね」
「……まあ。何となく分かる……」

 二人で何となく無言。
 ふー、と同時に息をついて、苦笑い。

「……大変だな、なんか……」
「――――高校生の時は大変だったけど……今は別に……」

「何、高校生ん時、何が大変だったんだよ?」
「――――」

 失言……。
 亮也は、じー、とまっすぐオレを見つめてくる。

「何かされたの?」

「――――好きって言われて……キスされた」
「一回?」

「……しばらくの間」
「どれくらいのキス?触れるだけ?」
「……」

 少しだけ首を振って、ため息。

「――――んー……?」
「――――なに?」

 なんか変な事、言いそうだなー……と、警戒しながら、
 亮也を見つめると。

 亮也が、不意に立ち上がって。

「彰」

 頬に触れられて。
 不意に、唇が、重なってきた。

「……りょ――――っ」

 舌が遠慮なく入ってきて――――。
 亮也の胸に手を置いて、ぐい、と押し返した。

 けれど、亮也の様子は少し変で。
 キスしたかったというよりは、何か言いたげなので、黙って、見つめあう。

「何――――?……」
「……んー…… キスってさ」

 ふ、と苦笑いを浮かべる、亮也。

「嫌なら、されっぱなしって、無くない?」
「――――」

「彰はオレとのキスは慣れてるから、突き飛ばすの、少し迷ったんだろ。でもやっぱり、今はしたくないって思ったから、どけたんだよな?」
「――――」

「ディープなキスを、しばらくの間、何回もさせるって、無くないか?」

「……仁の時は……最初は驚いて突き飛ばせなかった。傷つけないように、どう言ったらいいんだろ、て、最初の頃は思ってて――――」
「うん。最初は思ってて?」
「――――その後は…… なんで離せないのか……分かんなくなって……」
「――――」

「……でも、もう、考えちゃだめだと思って…… 絶対無理、て言って。ちょうど受験の時期だったから……家出て、こっちに、出てくる事に決めた」
「……ふーん……。そっか……」

 ふー、と息をついて。
 亮也は、そっと、オレの肩に触れた。

「――――彰、ちょっとじっとしてて」

 そのまま、ぎゅ、と抱き締められる。

「亮也……?」
「なんとなく――――これ以上何もしねえから、ちょっと抱いてていい?」

「……?……ん」

 ……なんだろ亮也。
 ――――こんなの、初めてだな……。

 少しして。
 くしゃくしゃ、と髪の毛を撫でられて、ポンポン、と叩かれた。

「……どーしたの?」
「んー…… 彰ってさ、人が具合悪いとか、元気ないとかは、すぐ気づくのにさ。……自分の気持には、鈍くてさー……」

「……そう?」
「――――まあこれに関しては、鈍いっつーか…… なんかなー……ほんと…… 彰って……」

 言いながら、はー、と何度も、ため息をついてる亮也。

「もー、何だよ……」

 人を胸の中に置いたままため息をついてる亮也を、少し引き離す。



「彰さ、弟の事が好きだったんじゃないの?」

「――――…」


 なんで、こう。
 ――――ずばり、核心をつこうとしてくるのかなあ……。
 ほんとに……。


「……とりあえず、離れて、亮也」
「……はーい」

 苦笑のままふざけたようにそんな風に答えて、
 亮也が向かい側にまた座り直す。


「……そろそろ帰ろうかなオレ」

「は? 帰す訳ないじゃん」
「………はー……」

 即答されて、ため息しか出てこない。




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