16 / 123
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「夢」
しおりを挟む思い出すのは、強い瞳。
嫌と言うほど、まっすぐに、見つめてくる強い光。
何もかも忘れて。
色んなものを全て忘れて、受け入れて、しまいそうな――――……。
こんなに遠く離れて、
こんなに時が経っても。
――――……思い出す。
忘れてしまえたら、良いのに。
◇ ◇ ◇ ◇
「……彰……」
「――――……ん……」
「彰、起きれる?」
優しく揺すられて、意識が戻る。
「亮也……?」
「大丈夫? 水飲む?」
「……ありがと……」
ペットボトルを受け取って、体を起こす。
「……ごめん。…… オレ、どれくらい寝てた?……」
「んー。一時間位かな。今十九時。泊まってくなら寝ててもいいよ」
「……今日は帰る……」
今、夢で見ていた彼の人を振り払うように、軽く頭を振った。
オレの居るベッドの端に、亮也が腰かける。
下だけ履いて、上半身はまだ裸のまま。
「帰るの? 泊ってけば?」
頬に触れてそう言う亮也に、首を振った。
「……明日朝からバイトだから……今日は帰る」
――――……とてもじゃないけど。
あの夢の後には、そんな気分にはなれない。
「……じゃあ途中まで一緒に行く。飯食お?」
「うん」
ちゅ、とキスされて、頷く。
「シャワー浴びる?」
「……うち帰って浴びる」
「んー……彰の服どこやったかな……あった」
亮也が笑いながら、ベッドの下の方をあさって、服を見つけて、差し出してくれた。 ふ、と笑って受け取った。
オレと亮也のマンションは、徒歩で二十分。
その途中のファミレスで夕飯を食べて、今夜は別れた。
一人、マンションまで歩きながら、ふ、と、ため息をついた。
仁の夢。
仁が出てきて、何か、言ってる、夢。
でも、何を言ってるかは、聞こえない。
……夢は、久しぶりに、見た。
起きてる間は、いつも、仁の事を、思う。
元気にしてるかなとか。
何、してるかな、何考えてるのかな、とか。
……どうしてこんなに、頭から離れないのか。
高校生になってしばらくして、仁がおかしな事を言い出した。
好きだ。 彰しか好きになれない。
本気で、彰が、好きだ。
突然、堰を切ったように仁から溢れだした、そんな言葉たち。
思春期でおかしくなったのかと、余裕を持って様子を見てあげられたのは最初だけだった。
まっすぐに見つめてくる瞳も。掴んでくる手と、キスの熱さも。
言葉以上に、その気持ちを伝えてきて。
――――……それが、もう、どんどんきつくなって。
いくら、血がつながってないとは言っても。
オレが五才、仁が三才のときに両親が再婚して、和己が生まれて。
ずっと、家族五人。三人兄弟として暮らしてきた。
オレが、仁のものになんて、なれる訳、ない。
だから、応えられない、諦めてと伝えたあの日。
最後に、「彰しか好きになれない」と言われて。
もう、離れるしかないと思った。
仁が、オレには何も言わなくなったのを救いに。
受験勉強をひたすら頑張って、成績を上げた。
地元を離れて、東京の大学を選ぶために。
受験校を決める時に、一人暮らしを両親に頼み込んだ。
合格が分かって、一人暮らしが決まってから、それを仁と和己にも伝えた。
「……オレから、逃げるってこと?」
仁の言葉と、哀しそうな瞳が、忘れられない。
オレは、違うと、伝えた。
ただ、その大学に行きたいからだ、と。そう伝えた。
まだ高校二年になるところで、仁が追いかけて来れる筈もなかった。追いかけたいと思ったかどうかも、今となっては、もう分からないけれど。
きっと、物理的に離れたら、色んな誤った思いも、消えるはずと信じて。
仁の、その質問の意味には触れずに。
――――……ちゃんと答えずに、別れてきた。
ちゃんとしないで――――…… 別れてきたから。
こんなに、ずっとずっと、気になるんだろうか。
多分もう、オレの事なんて、綺麗に忘れてるだろうと、思うのに。
何で、オレが、忘れられないのか。
バカみたいだ。
何のために、あんなひどい離れ方で。 仁の前から消えたのか。
こんなはずじゃなかったのに。
20
お気に入りに追加
636
あなたにおすすめの小説
【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-
悠里
BL
「LIKEとLOVEの違い、分かる?」
「オレがお前のこと、好きなのは、LOVEの方だよ」
告白されて。答えが出るまで何年でも待つと言われて。
4か月ずーっと、ふわふわ考え中…。
その快斗が、夏休みにすこしだけ帰ってくる。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
「恋の熱」-義理の弟×兄-
悠里
BL
親の再婚で兄弟になるかもしれない、初顔合わせの日。
兄:楓 弟:響也
お互い目が離せなくなる。
再婚して同居、微妙な距離感で過ごしている中。
両親不在のある夏の日。
響也が楓に、ある提案をする。
弟&年下攻めです(^^。
楓サイドは「#蝉の音書き出し企画」に参加させ頂きました。
セミの鳴き声って、ジリジリした焦燥感がある気がするので。
ジリジリした熱い感じで✨
楽しんでいただけますように。
(表紙のイラストは、ミカスケさまのフリー素材よりお借りしています)
【+月ノ夜+】本編完結 ~大好きな親友に、恋愛感情がある、と言われたら*
悠里
BL
大好きな親友の突然の告白で、キスとかそれ以上とか、意識しまくってしまう。
どう恋愛に転がるかをお楽しみいただけたら♡
本編は完結済み。
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
「水色の宝石」-妹の元婚約者が 尊くて可愛すぎる話-
悠里
BL
騎士 リュシオン・クライド × 後に領主 エリアス・メイソン
アリシアの兄リュシオンと、アリシアの元婚約者のエリアス。
イケメンでモテる騎士と、薬草・薬学に詳しい真面目&無自覚な美人領主の胸キュンなお話を書いていきます♡ 楽しんでいただけたら嬉しいです♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる