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◆Stay with me◆「高校生編」
「決意」*彰
しおりを挟む翌日の学校。中休み。
立ち上がる気力もなく、机に伏せていたら。
目の前の席に、誰か座る気配。
「彰」
「――――寛人……」
「……やばそうだな、お前。……昨日進展した?」
「……してない。……オレにしかドキドキしない、とか言われた……」
「――……あ、そ」
寛人は、苦笑い。
「どうしたらいいかわかんない……」
「――――拒否る。しか無くねえ……?」
言われて。考えるけど。
「……拒否ってるよ、オレ」
「いや、本気で拒否ってねえだろ」
「応えられないって、何回も言ってる」
「――――でも、キスさせちまってんだろ?」
「……させてるんじゃないし」
「で、彼女とも、別れちまったし」
「――――」
「仁の立場だったら、期待するよな」
「……期待?……」
「このまま押し切れば、お前が自分のものになるかも、て」
「――――仁てさ」
「ん?」
「……オレに何、求めてんのかな」
「……恋人、じゃねえの?」
「…………いや、無理でしょ……」
「お前の態度、無理って態度じゃなくねえか?」
「……いや、無理だよ」
「気持ち悪い、二度と触んな、そう言った?」
「――――気持ち悪くはないし……」
「それだよ、それ。やっぱり、期待するって」
「――――だって。別に気持ち悪くはないんだよ」
「断固として、拒否するしか、ないんだよ。ずるずるしてる内に、あいつが諦めるとか期待してるなら……無いと思うけどな」
「何で、寛人は、そんなに、仁のこと、分かんだよ?」
「全部分かってる訳じゃねえぞ? しゃべった訳じゃねえし。でも、あの視線が全部、やっぱりそういう意味だったんだと思えば……」
やれやれ。と寛人がため息をついた。
「――――何かオレさ……もう、どうしていいか分かんなくて」
「………まあ……そうだよな。オレが弟にんな事言われても……」
「言われたらどーする?」
「――――あー。いや。叩きのめすかな」
しばらくして出て来た言葉に、嫌そうに寛人を見てしまう。
「無理だよ、無理……」
「何で無理なんだよ? ――――世の中の99パーの兄貴は、弟に迫られたらそーすると思うけど」
「――――」
「だから、そうじゃない彰には、受け入れたいならそーしろって、オレは言ってる訳」
机に突っ伏したオレの頭を、ぐしゃぐしゃと乱しながら。
寛人が、そう言う。
「……どっちも、できない。」
「だから……――――」
不自然な、間。
…………。
「寛人……?」
顔を上げて、寛人のなんとも言えない顔を見て、そのまま、いつの間にかすぐ横に立ってる奴に気付いて、見上げて――――。
「……仁?」
珍しすぎる。
オレのクラスに、仁が立ってるって。
「彰、悪い。英語の辞書借りて良い? 忘れた」
「……あ、辞書?……――――うん。今日はもう使わないから」
なんだか焦る。机から辞書を出して、仁に渡した。
「いつも使ってるのと同じのが良かったから――――ありがと」
それだけ言って、教室を出ていった。
びっくりした。
――――仁が、オレの教室に来るとか、すごく久しぶり。
高校生になってからは、初めてかな……。
変にドキドキしたまま、ふ、と息をつくと。
寛人が、嫌そうに。
「……悪い、彰。絶対お前の頭ぐしゃぐしゃしてんの見られた」
そんな風に言う。
「――――別に。そんなの平気だと思うけど」
「平気じゃねえって……はー失敗……」
寛人がため息をついて、そんな風に言ってる。
「……にしても。久しぶりに近くで見たな。あんな顔してたっけ」
「――――あんなって?」
「イイ顔してんのは知ってたけど。もっと子供っぽい顔してたよな」
「……今も子供っぽいときは、子供っぽいよ」
「だいぶ男っぽくなったな。つか、何であれで、兄貴に行くんだ? ほんとモテるだろうにな」
「……仁に聞いて」
「……多分聞いても理解できないな……」
「だよな……」
その時。中休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「ありがと、寛人…… とりあえず今日……話せたら話す」
「……おう。頑張れ」
「……うん」
その日。
授業がちっとも頭に入らないまま、考えていた。
キスは拒否する。
応えられないって、ちゃんと、言う。
オレ以外の人にしろって、ちゃんと話す。
それしかない。
どう考えたって――――受け入れる事は、無理なんだから。
仁に、伝える事を整理して、そう決めた。
ちゃんと伝えて、分かってもらわないと。
……なんかもう、兄弟でも、居られなくなりそうで。
長いこと、ずっと一緒に居た時間も。足元から崩れそうで、
怖かった。
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