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第2章

◇幸せすぎなのだけど*圭

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「オレも高瀬と居ると、楽しいし……」
「ん」

 ……楽しいし、なんだろう。
 すごく楽しいのだけど。それだけじゃなくて。

「何か毎日、大事にしようって思う」
「……ん、分かる」

 恥ずかしいこと言ってるかなと思いながらも言ってみたら、少し黙ってから、高瀬が、頷いてくれた。
 わぁー、なんか、嬉しいな。

「オレ、ごはん食べるだけでも、嬉しい」
「――――……」

 調子に乗って言っちゃったら、高瀬がちょっとびっくりした顔で、黙ってしまった。あれ、言いすぎた? と思った瞬間。

「……なんか織田ってさ」
「うん?」

「ほんと、可愛すぎだよな……」

 そう言って、なんか困った顔して、ふー、と視線をちょっと周囲に流してしまった。
 え。……照れてる感が。って、だからオレ、高瀬が照れると、ほんと、こっちが死にそうになってしまうのでやめてほしい……。

 熱い。
 手でパタパタ仰ぎながら、二人でちょっとそっぽ向いて、時を過ごす。

「……ちょっと、あっち行ってみようか」

 高瀬が笑み交じりに言って、またボートを漕ぎ始める。

「あ、うん」
 頷いて、また高瀬に視線を戻した。高瀬は、周りを見ながら漕いでるので、視線があわないのをいいことに、高瀬をじっと見つめてると。

 ……うん、やっぱり、死ぬほどカッコいいな。うん。

「オレさっきから思ってたんだけどね」
「ん?」

「高瀬、ボートのコマーシャル、出れると思う」

 オレのセリフに高瀬はクスクス笑って、「ボートのコマーシャルって何?」と、さっきオレが思ってたのと全く同じツッコミを入れてきた。

「オレもそれ思ったんだけど……ボートを漕いでるコマーシャルがあるなら、オレだったら、高瀬を起用する」
「……それはどうも。って、そんなコマーシャル見たことある?」

 少し考えてから、高瀬はクッと笑いながら、そんな風に言う。

「んーあんまり記憶ないけど」

 あはは、と笑いながら。

「でも、ほんと、何しててもカッコいいっていいよね」
「つか、織田もカッコいいけど?」
「んー。高瀬の百分の一くらいかな」
「そんなことないし」
 
 クスクス笑う高瀬。

「絶対カッコいいって言われて生きてきただろ?」
「高瀬の前でそれには頷けない」

 ふふ、と笑いながら言うと、高瀬も苦笑い。

「まあでも……織田は、カッコいいけど、可愛くもあるよな」
「……」
「ていうか、めちゃくちゃ可愛いよな」

 ふ、と笑む高瀬さん。
 その視線の破壊力がすごすぎて、息ができない。

「……いつも思うんだけど。オレ、そんな、可愛いとかじゃ……」

 そんなにキラキラした感じで可愛いって言われるほどじゃないんだけど。と思うけど、なんだか、高瀬は本気でそう思ってるみたいで、なんだかちょっと、反論もしりすぼみに。

 高瀬の目からオレを見てみてたい。どんな目をしてみてるんだろうか。
 不思議。

 そんなことを思いながら、オレは高瀬を見つめた。

「高瀬がそう言ってくれるのは、嬉しいから聞いとくね」
「ん……ていうか、オレは本気で言ってるって思ってて」
「んーと。……はい」

 一応、頷くけど、ちょっとというか、大分、恥ずかしい。
 照れ隠しに、ふ、と池の周りを見回す。

「あ、高瀬、お弁当どこで食べる?」
「どこでもいいよ。シートしけるとこなら」
「なんか、このまま向こうのボート乗り場で降りることもできるみたいだね。あっちにもボート乗り場あるし」
「じゃあこのまま向こう行く?」
「うん」

 高瀬がゆっくりと、ボートを進める。
 で、またそれを見つめるオレ。

 ていうか、もう。
 なにこの休日。
 幸せすぎなのだけど、どうしたら。

 

 
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