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第2章

◇優越感?*圭

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 まだ食事には早いねってことで、ボートに乗ることになった。
 意外とたくさんボートが出てて、大きな池に、たくさんのボートが浮かんでいる。白鳥の足漕ぎのボートと、普通に手漕ぎのボートがあって、選べるみたいだった。ボート乗り場に並びながら、隣にいる高瀬を見上げる。

「どっちがいい?」
 聞くと、高瀬はオレを見つめて、ぷ、と笑う。
「織田、白鳥乗る気あるの?」
 高瀬のその質問の意味は分かる。
 多分、あれは、手で漕げない女の子たちとか、家族連れが乗ってる気がするから。

「ん……囲われてていいかなーと」
 オレが、ちょっと小声で言うと、高瀬は耳を寄せて聞いてから、不思議そうにオレを見た。

「どういうこと?」
「手漕ぎのボートとか、高瀬が乗ってたら、池の周りの女子達が高瀬を見ちゃいそうだからさ」
「――――」
「なんかあちこちから視線飛びそうじゃない?」
「池のボートの人なんて、見るかなあ」
「んー、オレなら見ちゃうけど」
「え。オレが乗ってたら?」
「うん」
 
 なんて会話をしてたら、高瀬が、無いよと笑ってて。
 まあでも男二人で、白鳥もなんだかなって感じだったので、手漕ぎのボートにした。

 乗り込んで、高瀬がこぎ出したのだけれど。

 ……うわー。めちゃくちゃカッコいいというか、もうなんか、絵みたいというか、もう、このまま、ボートのコマーシャルにできるんじゃないだろうかというか。何だろ、ボードのコマーシャルって? とか思いながら。

 ……とにかく、もうなんていうか、完璧すぎ。

「えーと…… 織田、見すぎ」
「え……あっ」

 確かに、ガン見しすぎていた気がする。
 ぱっと視線を逸らすと、高瀬が面白そうに笑う。

「まあ、さっき、ずっと見ててとは言ったけど……」
 クスクス笑って、高瀬がオレの顔を見つめてくるので、もう一度高瀬に視線を戻すと。

「なんか、そんなキラキラで見つめられると、ちょっと照れる」

 なんかもう、照れるとか。
 高瀬が言うとかちょっと可愛いし。

 ……でも、ああもう、マジで、カッコいい。
 
「結構、力使うんだな、これ」

 そんな風に言って、高瀬が、腕をまくる。
 高瀬の、男っぽい腕。
 ……何なの。もう全部本当にカッコよすぎて、向かい合ってボートに乗るって、目のやり場は、どこなのだろう???
 このままだとまた見すぎてしまうし。

 仕方なく、周囲に視線を向けると。
 池の周りでのんびりしてるたくさんの人。子供が、ボートを指さして何か言ってたりする。

 のどかだなぁ……。
 なんて思っていたら。
 女の子たちの塊が、なんだかこっちを見て、きゃあきゃぁ言ってる雰囲気を見つけた。

 ああ。……高瀬を見つけたな。
 さすが女子。
 目ざとい。
 女の子のイケメン発見のレーダーって、結構すごいなと思うのは、オレだけだろうか。まあオレの、高瀬発見レーダーも、会社では随分役に立っている気もするけど。オレは、高瀬限定のレーダーだけどさ。

 大体どこに行っても、高瀬を見る女子は居る。
 分かるよー、相当カッコいいもんね。ていうか、こんな人見たら、芸能人かなって見ちゃうのも、すごく分かる。まあさすがに会社で働いてる時は、そういう芸能人を見るような視線じゃなくて……いやでも、会社の方は、あわよくば付き合えたらっていう、現実的なものが入ってる気もするけど。

 やっぱり白鳥の中に隠れた方が良かったかなー。
 むむ、と内心思っていると。

「――――……気持ちいいな?」

 そんな声に、高瀬に視線を戻すと。
 高瀬は、ちょっと漕ぐのを休憩して、前髪をかき上げながら、オレを見つめていた。

「風もあるし、意外と、公園の池でも、気持ちよかったりするんだな」
「うん。……そうだね」

 高瀬の笑顔に、嬉しくなって頷く。

 ……誰が高瀬を見てても。
 なんか、ここで、高瀬が見ててくれてるのは、オレだけなんだなぁって。

 ちょっと優越感。とか。
 もうなんかオレ。考えてること、あほだな……。


 でもそんだけ、めちゃくちゃ、好き。
 高瀬。


「戻る時オレも漕いでみるね」
「ん、頑張って」
「うん」

 クスクス笑う高瀬は。


「なんかさ。織田と居なかったら、ボートなんか乗らないし。……こんな気持ちいいとかも、知らなかったなと思ってさ」
「……うん?」

「なんか、織田と居ると、ほんと楽しいなって思う」


 もう。高瀬ってば。
 …………好きすぎて、泣きそうですが。


 
 
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