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第2章
◇楽しすぎる
しおりを挟む「浴衣の時って、こんなだったけ?」
「……全くおんなじだった気がするよ」
「そうだっけ? あ、でも確かに楽しい店員さんだったような」
顔はぼんやりとしか思い出せないけど楽しかったような気がする。
「多分織田はいつもそんな感じなんだと思うけど」
高瀬はまだなんだか笑ってるけど、でも楽しそうなのでいいかな、と思ったりしながら、一緒に店を通り過ぎていく。
「ピンク着るのは人生初かも」
「モデルの時とかも?」
「着なかった」
「へー。高瀬の初めて奪っちゃうの、楽しい」
わーい、と何も考えずに言ったんだけど。なんか言ってから、あれ、なんか今の発言、恥ずかしかった? と思い当たって、ちょっと口を噤む。
……あ、やっぱりちょっと恥ずかしいかも……。
なんか顔に熱が。
口元押さえて、落ち着け―、と自分に唱えていると。
不思議そうな顔の高瀬が、オレをちょっと覗き込んだ。
「……どした?」
もう、この「どした」は、オレが赤くなってるから、言ってる。だってなんか不思議そう。
……わーん、自分で言った言葉に、勝手に赤くなるとか、めちゃくちゃ恥ずかしすぎる。とかおもうと、余計に顔が熱くなる。
「あーもしかして」
高瀬が、ふと気付いたようにそう言って、オレを少し覗き込む。
「初めて奪った、とか言ったから? 照れてる?」
「…………」
こくこくこくこく。
もう、頷いて、それで許してもらおう。
めちゃくちゃ小さく、何度も頷くと、高瀬は、ふ、と笑いながら、
「そんなので照れちゃうとかさ」
「……?」
「可愛すぎて、困るんだけど」
高瀬の手が背中に触れて、ポンポン、とたたきながら。
高瀬もちょっと照れたみたいな顔をするので。
「……っっ何で高瀬も照れるの?」
「え、だってなんか織田がめちゃくちゃ照れてるし。可愛くてどーしようかなーと」
「……っストップ、ちょっと、黙っててっ?」
もうこれ以上何も言わないでー、顔がー! 熱が引かないからー!
ひーん、と困ってると、高瀬は、ぷっと笑い出して。はいはい、とまた背中をポンポンしてくれる。
しばらくしてやっと顔の熱が引いた頃。
高瀬はクスクス笑いながら言った。
「ここからどうする? 服はもう今日はいいよね?」
「うん。そだね」
「天気いいから、公園でも行く? 駅の反対側に、大きな公園あるからさ」
「うん行く行く!」
「池とかもあって、ボートとかも乗れたような」
「えっそうなの? 乗ろう乗ろう!」
「行ってみてやってたらね」
「うんうん」
わあ、めちゃくちゃ楽しみ。
「あ、じゃあさ、お弁当買って持っていこうよ」
「ああ、いいな。そうしよっか」
「うん、地下にお店あるよね」
地下の食料品や総菜のお店で、つまんでいろいろ食べれそうなものをたくさん買い込む。
百円ショップにも寄って、でっかい敷物も見つけて、完璧。と思ったら、高瀬がふと、立ち止まった。
「何?」
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「うん、する!」
「即答だな」
クスクス笑って、高瀬はボールをいっこ手に取った。
「あ、なんかめちゃくちゃ楽しみになってきた」
嬉しくなってそう言うと、高瀬は、オレも、と笑った。
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